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「新しい地球を生きるための物語」です。
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「新しい地球を生きるための物語」
～母が作った春巻きの味～
私は、どうやら5年振りに実家に帰ってきて、
母と再会した様子だった。
それだけ、聞くと、とんだ親不孝者のような
気もしてくるが、それだけ当時の私は本気
だったのかもしれない。
そうして、よくわからないが、今日という日を
選んで帰ってきた。
母は、ただただ歓んでくれているようだった。
それは、母が用意してくれた夕食にも
表現されているように感じた。
そして、私は、母とのお話をしながらも、
あの春巻きを食べようとしている。
小さい頃から大好きだった春巻き。
小さい頃は、熱くて食べられないので、
よく冷ましてから食べたものだった。
私は、久しぶりに母が作ってくれた
春巻きを食べてみた。
なんとも言えない、ざくっというか
かりっというか、いい音がする。
中身も変わっていないようだった。
味は、あの懐かしい春巻きの味だ。
不思議とこうした懐かしいものを食べると
その当時からの時代が流れてゆく。
このマンションの一室で母と暮らした
日々のことを。
私にとって、いつでも明るくいてくれた
母の存在は、とてつもなく大きかったのだ。
だからこそ、私は、5年もの間、畳職人として
集中して、色濃い時間を過ごすことができたのだろう。
母は、こうした私の意向もきっと理解を
してくれるのだから。
そんなことを考えているうちに、私は
春巻きを食べ終わっていた。
目の前の母を見ようとしたが、私の視界は
涙でぼんやりとしていた。
「母さん、美味しいよ」
「ふふふ、ありがとう」
このときの母のうれしそうな表情は、
視界はぼんやりとしていたが、私の
胸にはっきりと焼き付いていった。
【終わり】
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