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「新しい地球を生きるための物語」です。
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「新しい地球を生きるための物語」
～畳屋さんから出てきた人～
私は、畳屋さん「白雲畳店」の前に
いた。
今まで十数軒は、畳屋さんをなんとか
見つけ出し、巡ってきた。
だが、こんなに畳屋さんの前で佇むことは
初めてだった。
頭の隅で、こんなに目の前で佇んでいたら、
悪印象を与えてしまうのではないかと、
考えたが、それよりも見とれてしまう。
そんな不思議な魅力のある畳屋さんだった。
そして、再び、「白雲畳店」と書かれた
看板に視線がいった。
「不思議な名前だな」
私は、口にするわけではなかったが、
呟くように独り言が頭に浮かんだ。
その瞬間だろうか、
「何かご用だろうか？」
そんな声が聞こえてきた。
その声は、決して怪しんでいる
わけでもなく、追い払おうという
切迫したものでもなかった。
ただただ、おそらくは普段の声色
なのだろう。
そして、私は、その声の方に視線を
移した。
そこには、小柄だがどこかふくよかで、
白い髭を生やした男性が立っている。
年齢は70歳に届かないくらいだろうか。
私は、驚いたこともあり、「失礼します」と
言って、立ち去ろうとした。
ところが、「いやいや、いい」
「何か用があったんじゃろ？」
そういって、その男性は、私を呼び止めた。
次の瞬間、私は、その初めて会った男性に
言っていた。
「私は、この畳屋さんで働きたいのです」
男性は、驚くわけでもなく、少しだけ
白い髭をふわりと動かし、笑っている。
【終わり】
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