皆さま
畳職人【和】(なごみ)くんの
物語です。
詳しくは本文をお読みください。
本日もよろしくお願いします。
【自己紹介】
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「畳職人【和】の物語」
~【和】ができること~
い草を編んで畳を仕上げる
畳職人の和(なごみ)という
人物がいました。
和は、生まれつき左眼が見えず、
右眼だけを使って、畳職人になった
逸材でもあります。
片眼で畳を見ると、どうしても立体的に
それを捉えることができません。
平面の畳をどうにか、試行錯誤し、
和は、畳として仕上げてゆくのです。
そのハンデキャップは、自分らしい畳という
作品を創り上げることでカバーしてゆきました。
それから、和には、誰にも言っていない
力があったのです。
それは、見えないはずの左眼で、人の
胸のあたりを見ると・・・
その人の魂の望みを観ることが
できるということ。
だけど、ずっとこの能力は、和自身
隠し通してきました。
それを使うことなく畳職人として
生きてきたのです。
でも、そんなある日、畳職人として
指名を受けて、お客さんから注文を
受けているときのことでした。
見た目は普通の老婆です。
でも、和は、どうしてもこの老婆が
気になりました。
それは、なぜか・・・
和にとってもわかりません。
なんとなく気になる。
それで、和は、今まで封印してきた
左眼でこの老婆のことを観ることにしたのです。
そこで、わかったこと、この老婆は、
和のように身体になにかハンディキャップの
ようなものを背負った人たちのサポートをすること。
でも、どうしても金銭や環境的に
そのことができていないこと。
そんなことが見えてきました。
やっとの想いでこの畳も注文してきて
くれたのです。
もしかしたら、和に会うために
畳を通して縁が結ばれたのかもしれません。
和は、迷いました。
そう、和は、ただただ畳を仕上げる畳職人、
この老婆に何かをしてあげることはできないと
考えました。
でも、何かできることがある。
和は、畳を仕上げる際に、大好きだった
おばあちゃんからもらって
大切に仕舞っていた金の糸、を
一本だけ縫い込んでゆきました。
もちろん和は、老婆にもそのことを
言いません。
和が作り込んだ畳ができあがり、
老婆に渡す日がやってきました。
老婆は、とても畳を気に入っている
様子です。
金の糸の存在にも気がついては
いないようでした。
和は、そのまま礼を言い、畳を設置
してゆきます。
それから、老婆の元には、ちょっとずつですが、
金の流れができたといいます。
そのお陰で、老婆のやりたかったこと
身体にハンディキャップを抱える人たちの
サポートをすること、そのことを行うことが
できるようになりました。
老婆は、和の計らいなど、知る由も
ありません。
でも、どこかで、その畳に座って、
頭を下げて、感謝の気持ちを捧げていました。
和は、そっと右眼を閉じて、
老婆を思い出すのです。