皆さま
私たちには苦手なことって
あるじゃないですか。
もちろん、苦手なものはそのままに
しておくこともひとつの方法です。
でも、上級テクニックとしてその苦手なことを
素直に表現して、その人の魅力に変えることも
できるのです。
そのことを海の写真でよく撮られたり、
水槽の中での主役になるエビが教えてくれました。
詳しくは本文をお読みください。
本日もよろしくお願いします。
【自己紹介】
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「苦手なことを魅力に変えてしまう物語」
~エビが素直に驚いた~
海の中にエビが住んでいました。
エビは、海の中で仕事をしています。
それは、海水魚たちの身体をほぐす
マッサージのお仕事です。
エビはマッサージの仕事にとても
やりがいを感じていました。
エビは、やりがいを感じているし
歓びも感じているので、マッサージの
仕事をすると、どんどんと海水魚の
お客さんが増えていくのです。
エビは、そのことがとてもうれしかったのです。
しかし、エビには実は、その歓びの
裏に隠されている、とても苦手なことが
ありました。
それは、エビにはどうしても克服できない
ものだったのです。
エビはイソギンチャクが怖くて
仕方がありませんでした。
水草をお散歩をするように、泳ぎ回るのは
エビにとって癒しのひとときになりますが、
イソギンチャクがそこにいると、あまりの
恐怖感に、「うわ!」っと悲鳴を上げて
しまうほどなのです。
エビ自身にも理由がわかりませんが、
どうしてもイソギンチャクが怖く感じて
しまいました。
だから、エビが海水魚のマッサージで
伺う家にイソギンチャクも住んでいると、
とても恐怖を感じるのです。
この日は、エビのお客さんである
ウツボから紹介されたアンコウの
家に行くことになっていました。
アンコウのマッサージは初めて
だったので、エビの腕が鳴ります。
そうして、アンコウの家を訪れます。
すると、アンコウの家の天井には
無数のイソギンチャクが住んで
いたのです。
アンコウは、そんなことは当然と
言わんばかりに、
「いい飾りでしょう?」そんな風に
イソギンチャクのことをエビに
自慢してくるのです。
エビは、恐怖で震えあがりながら
「あ、はい」と声を裏返りさせながら
答えました。
エビは、ドキドキしながらアンコウの
マッサージを進めます。
どうにも集中できませんでした。
天井にあるであろうイソギンチャクが
怖くて怖く仕方なかったのです。
もう、仕方がないのでエビはアンコウには
申し訳なく思いながら、目をつぶることに
しました。
目をつぶれば大丈夫だと思い、そのまま
マッサージを続けます。
アンコウは不思議と気持ちよさそうでしたが、
エビはそれでも恐怖感が抜けずにいました。
エビが目をつぶって、心を落ち着かせようと
します。
すると、目をつぶったはずでしたが、
目の裏にある映像が浮かんできました。
それは、マッサージの師匠であるタコです。
タコは、手短にと言いながら、エビに
メッセージを伝えてくれました。
「エビよ、イソギンチャクが怖いんだろう?」
「たしかに怖いものからは逃げたくなるさ」
「でも、君の大切なマッサージのお仕事には」
「海の中の生活では、イソギンチャクの存在は」
「避けては通れないんだよ」
「怖いものは怖くていい」
「でも、怖くて気持ちまで縮こまっては」
「いいマッサージはできないぞ」
エビは、目を閉じながらふむふむと
タコからの言葉を聞いていました。
「そうか、もうお手上げだ」
「素直になろう」
「イソギンチャクが苦手なものは苦手だから」
うつ伏せになっていたアンコウを
ひっくり返ってもらって、仰向けに
なってもらいます。
すると、アンコウのお腹には、なんと
たくさんのイソギンチャクがくっついて
いました。
アンコウのお腹でイソギンチャクが
育ってしまっていたのです。
エビは、もう我慢できませんでした。
「うひゃーー!」
大きく叫び声を上げて、エビ反りに
なったのです。
その声と動きは、真面目そうなエビからは
想像もできず、なんとも滑稽で、アンコウは、
笑ってしまいました。
「エビさん、私のお腹を見て驚いたようだね」
「今までのマッサージ師は、みんなこれを見ても」
「見て見ぬ振りをしたんだ」
「エビさん、君は素直に驚いたし」
「とても奇妙な声を上げて」
「奇妙な動きをしてくれた」
「なんだか、とてもおもしろいものを」
「見せてもらったよ」
エビは、少し恐縮しましたが、
素直に伝えました。
「実は、イソギンチャクがどうしても怖いんです」
「それで、素直になったら、そんな動きになってしまって・・・」
「お気を悪くされたら・・・」
「いや、いいんだ」
「エビさん、それだって君の大切な魅力じゃないか」
「イソギンチャクが苦手なマッサージ師、なんていいじゃないか」
「はっはっは」
エビは、複雑な想いでしたが、素直に
気持ちを表現できて、悪くない気分でした。
そして、不思議と、アンコウは、再び
エビをマッサージ師として指名してくれたのです。
エビにとっては、うれしいような怖いような、
複雑でしたが、それが魅力になったようでした。
「苦手なことをも魅力に変えてみる」
ちょっと上級テクニックですが、エビは
なんとかやってのけたのです。
そのおかげで、エビの仕事の範囲は
とても広がりました。
「イソギンチャクがいてもなんとかなる」
心のどこかでそう思えたからです。
エビは、素直になってさらなる
成長を遂げることができたのかも
しれません。
エビは師匠のタコに感謝の気持ちを
送りました。
「タコ師匠、アドバイスいただき」
「ありがとうございます」
【終わり】
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執筆依頼なども承っております。
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この物語を読んで何か一つでも
感じていただけたら嬉しく思います。
想いを乗せて書いています。
皆さまよろしくお願いいたします。