皆さま

 

この物語を読んでくださっている

人たちの中には、様々な状況に

いる人がいるかと思います。

 

もしかしたら、辛かったり、孤独を

感じている人もいるかもしれません。

 

でもですね、必ずあなたを応援してくれている

存在がいます。

 

そんなことをこの物語が教えてくれました。

 

詳しくは本文をお読みください。

 

本日もよろしくお願いします。

 

【自己紹介】

幸せな人生に転換できた僕の物語

 

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「あなたを応援している人が必ずいると信じる物語」

~父が最後に伝えたこと~

 

私には父がいました。

 

父は、とても厳しくて、滅多に

息子である私を褒めることはありませんでした。

 

そんな父がある日、病気を患っていると

知ります。

 

それも大きな病気でした。

 

父は、医師から余命宣告をされたと、

そう私に言います。

 

でも、私は諦めがつきませんでした。

 

もしかしたら、父を救える生きることができる

病院があるかもしれない、そう思い

いろいろな病院を調べたりしたのです。

 

そうして、私は血相を変えて毎日仕事を

しながらも父を救える病院を探していました。

 

私にも家族がいて、そのサポートが

大きな支えにもなっているのです。

 

父の入院する病院にも毎日通っています。

 

私が血相を変えて病院探していようが、

父は、どこか覚悟を決めているような気がしました。

 

そのことが、なんだかとても悲しくも感じましたが、

その父の痛みに耐えつつも、時折訪れる穏やかな様子を見ると、

父との別れを確定させるものだと思い、私はその

現実を受け入れたくなくなるのです。

 

それから数か月は経ったかと思います。

 

父は、弱っていくというより、日に日に

穏やかになっていく、そんな気さえしました。

 

こんなに穏やかそうな父の表情を上から

見つめると、あんなに厳しかったのが嘘の

ようです。

 

声は大きいし、怒ったら手が付けられませんし、

人一番マナーや行儀には厳しい人でした。

 

そんな父が、穏やかになってしまっているのです。

 

その後、父がどうなっていくのか、信じたくなかった

私でしたが、否が応でもその時はやってきます。

 

病院から電話がかかってきました。

私が長年働く会社で仕事をしている

時のことです。

 

「わかりました」

 

そう言って、会社を早退して

病院に向かいました。

 

電車で病院に向かいながら、なぜだか

父のことを思い返すのではなく、

「あー、あの件、引き継ぐの忘れたなあ」

「しばらく会社を休むのかな」

なんていう、あまりどうでもいいことを

思っていました。

 

少しでも父のことを考えようとすると、

電車の中で、今にも泣きだしてしまいそう

だったからです。

 

「最後の最後まで褒めてくれなかったなあ」

 

一瞬、そんなことを思い返してみると、

涙が溢れてきてしまいました。

 

涙を拭きながら改札口を出て、父の入院する

病院まで速足で歩いていきます。

 

「あー、できることなら引き返したい」

 

なぜだか、そんなことを思いながら

病院に着くのです。

 

父の病室だって、忘れるわけもありません。

この数か月毎日のように通っています。

 

どこか遠回りだってしたくもなりましたが、

そんなことできないくらい、その道は

身体が覚えているのです。

 

父の名前が書いてある病室に着きます。

 

珍しくノックをしないで入ってみると、

父が静かにいつものように横たわって

いました。

 

母が父の手を握っているのが見えます。

 

そこには、いつもならいてくれた

看護師や父の介護をしてくれた

介護者の方はいなかったように思います。

 

そのまま私は、父の元へ駆け寄りました。

 

母が握っているのとは逆側の父の手を

握ってみます。

 

そこには確かな人間の暖かさが残って

いました。

 

でも、もう握り返す力は残っていないようです。

 

父は、微かに笑顔になったように思います。

 

もう父に話すことはできないようでした。

 

でも、父の手が微かに動くのです。

 

何かを指さしているように私は感じました。

 

その指の先を追ってみてみると、

父が愛用していたラジオがありました。

 

私がラジオを手に取ると、父がこれまた

微かにうなずいたような気がします。

 

ラジオには、メモが貼ってありました。

「再生してみろ」

いつもの元気だった父の力強い話し方を

思い出します。

 

このラジオにはボイスレコーダーの機能が

備わっているのです。

 

私は、とにかく録音されているであろう

何かを再生して聞いてみることにしました。

 

「ジーーー」という少し長い間の後に、

ゆっくりと話す父の声がこの機械から

聞こえてきます。

 

母も父の手を握りながら、その声に

耳を傾けているようでした。

 

最初は、母への感謝の気持ちを

表現した言葉が聞こえてきます。

 

母にも厳しかった父が、そんなことを

言うのだろうか、なんだか現実味が

なかったような気もしました。

 

でも、確かに母はその言葉を聞き

泣いているのです。

 

その後は、私への言葉でした。

 

「お前にはずいぶんと厳しくしてしまったな」

「お父さんは少し後悔しているんだ」

「・・・」

「でもな、お前は本当に立派に成長してくれた」

「それは、お父さんにとっても誇りなんだ」

「お前も父として家族を大切にして、仕事もがんばっているな」

「そして、毎日見舞いに来てくれてありがとうな」

「お父さん、これからも応援しているからな」

 

その後、しばらくの間、再び「ジーー」という

無音の音が聞こえてきました。

 

私は、もうたまりませんでした。

 

最後の最後に父は僕を

褒めてくれたのです。

 

父らしくない、とても弱弱しい声でした。

あんなに、力強い声だったのに。

 

そうして、なんで直接言ってくれないんだと

思いそうでしたが、意外と思いませんでした。

 

その後、父は、静かにそのまま

亡くなっていったのです。

 

「最後に、父からこの言葉を聞けて本当に良かった」

 

私は、心からそう思いました。

 

そうして、ふと父のラジオのディスプレイを

見ると、この言葉を吹き込んだ日時が

表示されているのです。

 

それは、父が亡くなる日の早朝でした。

 

もしかしたら、父は、最後の日だと

いうことを自分で感じ取っていたのかもしれません。

 

「お父さん、今までありがとう」

 

いつ撮ったのか忘れてしまった家族写真を

見ながら、私はそう呟かずにはいられませんでした。

 

【終わり】

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この物語を読んで何か一つでも

感じていただけたら嬉しく思います。

 

想いを乗せて書いています。

 

皆さまよろしくお願いいたします。