皆さま
当たり前ですが、人間生きていれば
何かあると頭で考えようとします。
それは、もちろん間違っているわけでも
なんでもありません。
でも、頭では計り知れないことが、
心の方では正解を知っていることが
あったりします。
そのことをワイングラスが
教えてくれました。
芸術学部の学園祭に昔行ったとき、
ワインやらお酒をたくさん飲んだことを
急に思い出す・・・・
詳しくは本文をお読みください。
本日もよろしくお願いします。
【自己紹介】
-----------------------------------------------------------------------------
「頭で考えることだけが正解とは言えない物語」
~ワイングラスの葛藤~
とあるお宅にしまわれている
ワイングラスがありました。
ワイングラスは、少し古かったので
新しいワイングラスにレギュラーの
座を奪われてしまっています。
なので、家族がワインを飲むときに、
このワイングラスが使われることが
なくなってしまいました。
ワイングラスは、そのことをとても
残念に思っていましたし、悲しく感じても
います。
「あんなに、使ってくれたのに」
でも、そう思ってもワイングラスは
ワイングラスの役割を果たすことが
できず、日々悶々としていました。
そうして、ワイングラスは今の現状、
そして、どうなっていくのかを頭を
フル回転して考えるようになります。
「新しいワイングラスがうっかり割れてくれれば・・・」
「もしかして赤と白で色分けして使うつもりなのかも」
「僕はきっとワインを入れてもらってこそ、生きる意味があるんだ」
「家族は僕のことを嫌いになったのかも」
「もしかして、とてつもなく飲みにくいのかな」
「あれ、どこかに傷でもついていて、ワインが漏れてしまうのかも」
「いっそのこと居酒屋で使ってもらおうかな」
色々とワイングラスは頭で、ひっきりなしに
考えました。
でも、どれもしっくりこなくて、
堂々巡りになってしまいます。
そんな日だって、レギュラーワイングラスは、
家族に使われているのです。
「ワインを入れてもらえないワイングラスなんて、生きている意味なんてないさ」
ワイングラスの葛藤も限界がきたのか、
なんだか、とてもネガティブにもなりました。
でも、ワイングラスの心はどこかで
知っていたのです。
「必ず僕は、また使われて、価値、魅力を全開にして生きると」
その日は、ワイングラスがある意味
頭で考えることを諦めて、しばらくして
やってきました。
急に家族がこのワイングラスを
手に取ったのです。
ワイングラスは一瞬思いました。
「あ、とうとう捨てられる」
でも、なんだかそんな雰囲気でも
なさそうです。
ワイングラスは、覚悟を決めました。
そうすると、ワイングラスは、何かを
注がれる感覚を覚えます。
それは、ワイングラスが初めて感じる
感覚でした。
「あれ、ワインじゃない」
ワイングラスは、意識を集中します。
「なんだこれは?」
すると、家族たちから色々な声が
聞こえてきます。
「あ、美味しい」
「器を変えると味も香りも変わるね」
なんと、ワイングラスにはよく冷えた
日本酒が注がれていたのです。
そうです、ワイングラスは、ずっと
ワインを入れてもらえなくて、葛藤して
苦しんでいましたが、きちんと自分の
役割を果たすときがやってきました。
それが、日本酒を注がれることだったのです。
日本酒は、器が変わると飲み口や
香りなども随分変わるなんて言われています。
そこに着目した家族は、日本酒を
残っていたワイングラスに注いだのです。
ワイングラスに新しい役割が
生まれました。
ワイングラスは、頭で考えると
そんなことは思いも付きません。
でも、心では、そのどこかで、
「いつか絶対に自分の役割が見つかる」
そう信じていたのです。
だからこそ、葛藤しても苦しんでも
決してあきらめることがありませんでした。
心は知っています。
「自分たちが、とても価値ある存在であることを」
使われなくなったワイングラスは、
それから再び活き活きと過ごし始めます。
そして、しっかりと生き抜いた自分自身を
労い、称えました。
「よくがんばったね」
「そして、ありがとう」
今宵もワイングラスは、冷えた日本酒を
注がれて、幸せを感じています。
【終わり】
-------------------------------------------------------------------
執筆依頼なども承っております。
-------------------------------------------------------------------
この物語を読んで何か一つでも
感じていただけたら嬉しく思います。
想いを乗せて書いています。
皆さまよろしくお願いいたします。