皆さま
私たちが何か行動をするとき、
どうしても世間体から決断をしたり
してしまいがちです。
それもその人の選択なので、
自分で決めればいいのですが、
やっぱり、自分の想いを大切にして
決断をすると、後悔がないような気がします。
そんなことを、釣り堀でもおなじみ、
釣り竿で釣られることも多い、あの
鯉が教えてくれました。
詳しくは本文をお読みください。
本日もよろしくお願いします。
【自己紹介】
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「世間体より自分の想いを大切にする物語」
~池の鯉が引っ越す~
ある山奥の茂みの中に
小さな池がありました。
その池には主のように住み続ける
立派な鯉がいるのです。
鯉は、そこでの生活に満足を
していました。
鯉には毎日の楽しみがあったのです。
それは、散歩で訪れる老夫婦と
会話することでした。
老夫婦は決まって、朝日が昇った
早朝にその池を訪れます。
そうして、優しい声で、鯉に話しかけるのです。
「おはよう」
「調子はどう?」
「ご飯食べてる?」
そんな風に鯉は優しく話しかけれて、
とても気分が良かったのです。
もちろん、鯉が会話を返して、それが
老夫婦に届いているのかは、わかりません。
鯉にとっては、この池が、どんなに小さくて
あまり人が訪れなくても関係ありませんでした。
こうして、日が昇り、老夫婦が訪れ、
何気ない会話をすることが、鯉にとっては
かけがえのない幸せだったのです。
そんなある日、たまたまこの池のことが、
何かで写真付きで紹介されました。
そのことがきっかけで、この池には
とても立派な鯉がいる、と話題に
なったのです。
すぐさま、多くの人がこの池に
やってくるようになりました。
そうして、この立派な鯉を都心の
大きな池に引っ越しをさせるという
計画が出たのです。
観賞魚でもある、鯉にとってはこれは
ある意味、うれしいことでもありました。
それは、自分の立派な姿をより多くの人に
見てもらうことができるからです。
だから、立派な鯉は、この池に残ることを
諦めていました。
それは、世間的にみたら喜ばしいこと
だからです。
でも、もうそうなるとあの毎朝会いに来てくれた
老夫婦とは会えなくなります。
鯉は、静まり返った夜中に静かに
小さな池の中で考えました。
都心の池に引っ越すか、このまま
小さな池に住み続けて老夫婦との
生活を送るのか・・・。
考えましたが、鯉に答えは
出ません。
それは、鯉は頭では都心への引っ越し、
心の中ではこのまま住み続けるという、
ことだったからです。
だから、鯉には答えが出なかったのです。
すると、もう日が昇る時間になっていました。
いつものように、老夫婦が鯉のもとを
訪れます。
「あんた、引っ越すことになるんだってね」
「私たちは、とても寂しくなるけど、仕方ないね」
「多くの人に見てもらう機会なんて、なかなかないものね」
「だからね、私たちは、あなたを応援するわよ」
老夫婦は、そんな風に、鯉に
優しく、しっかける届くように
伝えてくれました。
鯉は、なんだかヒレがキュンとなる
ような気がします。
そうして、もう一度、自分がどうしたいのか
感じることにしました。
ヒレをそっと自分の胸のあたりに
当てます。
「僕は、これからどうしたいんだろう?」
鯉が目を閉じるとそこには、
老夫婦の笑顔が浮かんできました。
「やっぱり、僕はこの池に残る!」
そう、鯉は、心で、自分の想いを
大切にして、その決断をしたのです。
鯉は、そんな想いもあってか、いつもより
ぐっと池から顔を出して、老夫婦の姿を
見つめています。
老夫婦も、
「なんだか、いつもよりなつっこいわね」と
言いながら、ふたりで鯉の姿を
見ていました。
そうして、不思議なことに、
この立派な鯉の都心への引っ越しは、
いろいろな問題が起きて、中止と
なったのです。
鯉は、この小さな山奥の、茂みに隠れた
池に住み続けることになりました。
少しだけ、有名な鯉になりたかったところも
悔やまれるけど、鯉は、それも含めて
満足気です。
今日も朝日が昇り、いつもと同じように
優しい老夫婦が、鯉に会いに池を
訪れます。
「残ってくれてありがとう」
「また、毎日来るからね」
鯉は、感謝を込めて、身体を
ユラユラと揺らして見せました。
「この池に残るという、自分の想いを大切にした決断ができてよかった」
「ありがとう」
【終わり】
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執筆依頼なども承っております。
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この物語を読んで何か一つでも
感じていただけたら嬉しく思います。
想いを乗せて書いています。
皆さまよろしくお願いいたします。