皆さま
皆で手を取り合い生きていくなんて、
きれいごとの様に聞こえてしまうかも
しれません。
でも、そんなことはないと思います。
そろそろそうやって生きていくことが、
私たちには大切なのかもしれないと
感じます。
そんなことを、山に住む鹿の親子が
教えてくれました。
詳しくは本文をお読みください。
本日もよろしくお願いします。
【自己紹介】
-----------------------------------------------------------------------------
「皆で手を取り合い生きていく物語」
~鹿の親子が紡ぐ~
登山客でも賑わうとある山に
鹿の親子が住んでいました。
子どもの鹿はまだ小さくて、
これからこの自然の中で生きるため
様々なことを親の鹿から学んでいる
最中です。
親の鹿は子どもの鹿を思うがあまり、
とても厳しく生きる方法を教えました。
時には、自慢の角で子どもの鹿を
叩くことだってあります。
子どもの鹿は、そんな風に厳しくされて
とても悲しくて、辛い思いをしていましたが、
「この自然の中で生き抜くため」と思い、
その厳しさに耐えてゆくのです。
でも、そうは思っても、子どもの鹿には
痛いとか、我慢とか、苦しいとか辛いとか
そんな思いが小さな身体に蓄積されて
ゆきました。
親の鹿もそうやって、厳しいさらなる親から
生きる術を教えられてきたのです。
だからこそ、ここまで生き抜くことができたと
信じていました。
そうして、子どもの鹿は身体も心も
傷だらけになりながら、自然の中で
生き抜く術を身に着けてゆきます。
それから数年が経ったのです。
子どもだった鹿が大きくなりました。
少し前に親の鹿は、茂みで
その命を全うしています。
子どもだった鹿は、自分の子どもを
持つことになったのです。
親の鹿になりました。
親になることは、鹿も初めての
ことです。
「さて、どうやって子どもに生きる術を教えていこう」
そうやって、親になった鹿は迷いました。
それは、なぜかと言えば、自分が
親から厳しくされて、生きるか死ぬかの
瀬戸際で傷だらけになったからです。
心も身体もです。
だから、どうしたって、そのやり方には
親になった鹿にとって、違和感が残りました。
でも、そのおかげてこの大自然を生き抜き、
新たな生命を育てることができるように
なったことも事実だったのです。
だから、親になった鹿にとって、
自分の子どもにも同じように、
とても厳しく生きる術を教えることが、
確実だということもありました。
その選択をすることが、ある意味では
自然でもあったわけです。
親になった鹿は、残された傷を見る度に
思うこともありました。
「もう、二度とこんな思いをさせたくない」
まだあどけない自分の子どもを見ると、
とてもじゃないけど、叩いたり、厳しい言葉で
生きる術を教えることなどできません。
親になった鹿は、周囲からどう言われるか
わからないながら、子どもと手を取り合いながら
優しく、ときには真剣に生きる術を教えて
ゆきました。
最初は、その子育てのやり方に他の
鹿の家族たちは、疑問の目を向けてきます。
「そんなやり方じゃ、甘ちゃんしか育たない」
「この大自然を生き抜けるはずがない」
それでも、親になった鹿は、そのやり方を
変えませんでした。
親になった鹿に、迷いが少しもなかった
わけではありません。
やっぱり、新しいこと、時代が変化していくような
ことをすることは、不安や恐怖がついて
まわるものです。
迷いながらも親になった鹿は、自分が
されてきた教育とは異なる方法で、
自分の子どもを育てました。
その結果、子どもは自由で、心豊かで
優しい、他の鹿を思いやる、鹿に
育ったのです。
そのことは、他の鹿の家族たちも
感じ取るようになりました。
なんと、他の鹿の家族たちが、その
教育方法、手を取り合いながら育てる
方法を取り入れ始めたのです。
もう、この鹿の世界には、厳しくとか
叩くとか、競争させるとか、辛い言葉を
かけるとか、そんなことが必要なくなって
いきました。
それは、多くの鹿がそのことに気が付いたからに
他なりません。
親になった鹿は、そのことをとても
うれしく思っていました。
でも、そう思えたのは厳しく教育してくれた
親があってこそだということも理解していたのです。
それをされたからこそ、親になった鹿は、
自分は同じような教育方法を子どもに
しないようにしようと思えたからです。
だから、そんな厳しく生きる術を教えてくれた
自分の親の鹿にも感謝をしていました。
「ありがとう」
この鹿の世界には、手を取り合いながら
生きていくことが、少しずつ根付いていったのです。
【終わり】
-------------------------------------------------------------------
執筆依頼なども承っております。
-------------------------------------------------------------------
この物語を読んで何か一つでも
感じていただけたら嬉しく思います。
想いを乗せて書いています。
皆さまよろしくお願いいたします。