皆さま
ここまで生きてきた人には、
これまでの過去があります。
その過去と今の自分って実は
巧妙にリンクしています。
過去にこだわらずに生きたい!と
思いながらも無意識的に影響を
受けていたりするわけですね。
今回はトラが魅せてくれました。
詳しくは本文をお読みください。
本日もよろしくお願いします。
【自己紹介】
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「なぜ過去を癒す必要があるのか理解する物語」
~トラの子が大きくなった~
一頭の大人のトラがいました。
トラは家族も作ることもなく、
一頭である意味気ままに
過ごしているように見えます。
でも、トラには、とても生きにくくする
何かがありました。
それは、トラの特技でもあり、生きる術でも
ある「狩り」が苦手なのです。
トラは肉食動物としても有名です。
他の動物を狩りすることで、食事をして
生き抜いてきました。
その「狩り」が苦手なのです。
だから、トラは食事をすることに
とても困難な思いをしています。
お腹は空くけど、狩りが苦手なので、
どうしてもそれを満たしにくいのです。
だから、トラとは言われていますが、
このトラは、他の肉食動物が残した
食事を食べたりすることで、生きて
いました。
トラは、そのことに対して
「とても生きにくなあ」
「僕も他のトラと同じように狩りをして、生きていけたらいいのに」
そんなことを心底感じているのです。
でも、どうしても狩りをすることが、怖いのです。
このトラ自身は、なぜそうなったのか
気が付いてもいませんでした。
実は、このトラが子どものトラ、
子トラだったころのことに原因が
あったかもしれないのです。
子トラが親トラと一緒に楽しく
仲睦まじく暮らしていたときの
ことです。
子トラは、親トラに狩りの方法を
教えてもらい、自分でもできるように
なり、生きていける術を身につけようと
していました。
その日も子トラが、狩りの練習のため
深い森の中で、先頭に立って獲物を
探しています。
後ろから親トラはその様子を微笑ましい
気持ちで見守りながら、ついていって
いました。
少しずつ深い森を進んで行くと、親トラには
ある異変を感じることになります。
「危ない!」
親トラは一瞬のうちに、危険を察知しました。
その瞬間に、先頭を行く子トラの前に
立ちはだかります。
子トラは何が起きたか、わからずに
茫然としていました。
大きな音がしたのです。
それは、森で聞こえるはずのない
音でした。
子トラは、親トラのさらに前方に
何者かがいることを理解します。
トラや他の動物たちとは異なる
立ち居振る舞いをする生き物でした。
どうやら手に持っているものが、
先ほどの大きな音を立てたのかも
しれないと、子トラも徐々にわかったようです。
子トラとその得体のしれない生き物の
間くらいに、親トラは、音もたてずに
横たわっていました。
親トラからは信じられないくらいの
血が流れ出ていました。
子トラは、その様子を見ながら、
何もできずに、ただただ親トラの
呼吸が止まるのを待つしかなかったのです。
そうして、親トラはその得体のしれない
生き物たちに連れて行かれてしまいました。
子トラと親トラの中が引き裂かれた
時間でした。
子トラはそのときのことが、本当に
ショックだったのです。
だから、子トラは大切な親トラが死んでいく瞬間、
それも得体のしれないなにかで殺されていくという
経験を受け止めきれずにいました。
子トラは、そのことで他の生き物を
狩ることができなくなったのです。
それから子トラは、できるだけそのことを
思い出したくないということからも、
狩りをせず、残り物を探して食べるという
生き方をしていきます。
そうして子トラは大人になっていきました。
大きくなった子トラは、狩りが
できません。
とても生きにくいのです。
食べる量も少なくなるので、
他のトラと比べても小さく見えます。
トラはついには、狩りをするくらいなら、
このまま痩せて弱っていく方がマシだとも
思うようになっていたのです。
ある日、トラがいつものように
残り物を探して森の中を歩いていました。
すると、目の前の奥の方から、大きなトラが
歩いてきます。
トラ同士で目が合うと、大きくなったトラは
「なんだか自分を育ててくれた親トラに似ている」と
思いました。
でも、親トラのはずはありません。
親トラに似ているトラは、一方的に
話し始めました。
「お前が狩りができなくて痩せていく姿を見るのは辛いよ」
「私が殺されたのを見て、お前は、狩りができなくなっているんだろう?」
「いいかい?」
「私が殺されることで、お前が狩りができなくなるなんて、私は望んでいないんだよ」
「そのことから、学んで欲しかったのは、命の大切さ、尊さ、そういうことなんだよ」
「過去の出来事に意味をつけるのは、他でもないお前自身でやることなんだ」
「そう、過去の出来事を変えていくといいのよ」
「それには、今を充実して生きること」
「そうしたら、きっとこのように変わっていくからね」
「自分の親が突然殺されて、血だらけになったのを見たから狩りができなくなった」
→「自分の親が突然殺されて、命の大切さを学んだ」
大きくなった子トラは、このことが
現実なのか、夢の世界なのか理解が
できなくなっていました。
大きくなった子トラは、この言葉を
目を閉じて聞いています。
でも、確かに大きくなった子トラの
心の深いところに浸透していっている
ようです。
次に大きくなった子トラが目を開けると、
親トラにそっくりのトラの姿は、音もなく
消えていました。
大きくなった子トラは、その時から
今現在への充実感を持つように心がけます。
「残り物をいただいて、ご飯が食べられて幸せだな」
そうして、生き続けました。
すると、段々と他の肉食動物が狩りをしている
ところを目撃しても、以前の様に慌てふためく
こともなくなったのです。
「みんな尊い命をいただいているのだな」
「僕の親もそれを過去に教えてくれていたんだな」
こうして、大きくなった子トラの過去も
姿形を変えてゆきました。
大きくなった子トラは、少しずつではありましたが、
狩りをすることができるようになったのです。
大きくなった子トラは、体格も良くなって
いきます。
そうして、大きくなった子トラは、あのとき
教えてくれた親トラにそっくりのトラに、
心の中で感謝の気持ちを送りました。
「大切なことを教えてくれてありがとう」
「僕は幸せに生きています」
【終わり】
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執筆依頼なども承っております。
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この物語を読んで何か一つでも
感じていただけたら嬉しく思います。
想いを乗せて書いています。
皆さまよろしくお願いいたします。