皆さま

 

今回の物語は・・・

ちょっと言葉が出てきません。

 

ご興味ある方は、本文を

読んでみてください。

 

本日もよろしくお願いします。

 

【自己紹介】

幸せな人生に転換できた僕の物語

 

-----------------------------------------------------------------------------

 

「今という一瞬一瞬を大切に生きる物語」

~元気になったら会おうね~

 

高校生の男の子が二人いました。

二人は同じ年齢で、近所に

住んでいます。

 

兄弟などではないので、いわゆる

幼馴染という関係です。

 

だから、小さい頃からずっと

一緒に過ごしてきました。

 

物心つくまえから一緒の

二人なのです。

 

家の裏山で秘密基地を

作ったり、野球をしたり、

お正月には凧揚げを

しました。

 

夏はプールにいって遊んだり、

天気の良くない日は家で

ずっとゲームをして盛り上がったりも

しています。

 

公園で訳もなく取っ組み合いを

したこともあります。

 

もちろん近所に住んでいるから

通っている学校だって同じです。

 

そのことだって二人にすると

とてもうれしいことだったのです。

 

二人のお母さんたちから見ると

「そんなに一緒にしてよく飽きないわね」

と言われるくらい、二人はずっと

一緒にいたのです。

 

どれだけ一緒にいても飽きなかった

のです。

 

「どうしてそんなに気が合うの?」

これも二人の周囲から言われた

言葉でした。

 

そのことにどんな意味があるのか、

そんなことは誰しも考えたことは

ありませんでした。

 

でも、高校生になって、ある日、

片方の男の子が自分のお母さんから

言われたことがあります。

 

「しばらくの間、会えなくなるみたい」

 

「え?」

 

男の子は、何を言われたのか

わからなくなりました。

 

「会えなくなるってどういうこと?」

「え、だからね、会えなくなるって」

「いや、だからなんで!」

男の子は少し苛立ちを隠せなく

なっています。

 

お母さんは、仕方なさそうに

そして言いにくそうに我が息子に

伝えました。

 

「あのね、あちらのお母さんから言われたのよ」

「しばらくの間、会えなくなるって、それだけ伝えて欲しいって」

男の子は、なんだか深刻そうな

気がしてきて、黙って聞いています。

 

「これはね、伝えないで欲しいって言われたんだけどね」

「病気がわかったんだって・・・」

「え・・・」

「入院するんだって・・・」

お母さんは、そう言うと、耐えられなくなり

その場で涙を流しました。

 

その様子を静かに男の子は

見ています。

 

とても長い時間に感じられます。

 

その後に口を開いたのは、男の子でした。

 

「病気って、戻ってこられるんだよね!」

男の子は自分でも強い口調になっていることに、

気が付きもしていませんでした。

 

「そんなこと私はわからないわよ」

お母さんは正直に言いました。

本当は言わないでくれと言われていたけど、

嘘をつくことなどできませんでした。

 

お母さんは、一言ずつ

ゆっくりと男の子に話しました。

 

「少し重い病気みたい」

「え・・・」

「それでね、あなたにはね」

「あいつとは元気になったら会いたい」

「そうとだけあちらのお母さんに言ったんだって」

 

男の子は、思春期であることを

忘れているかのように、目に涙を

いっぱいに溜めてお母さんの

話しを聞いていました。

 

「元気になったら・・・」

 

男の子は、いつも一緒だった男の子の

ことを思い出しました。

 

毎日毎日朝から晩まで、来る日も来る日も

一緒にいたのです。

 

ふたりはいつも元気でした。

このあたりをずっと駆け回っていたのです。

 

そんな男の子のひとりが、大きな

病気になってしまいました。

 

「あんなに元気だったのに・・・」

 

それから、男の子は少し元気が

なくなっています。

 

でも、ひとりで学校に行って、

毎日行って、家に帰りました。

 

ここで、学校を休んだり、友だちと

遊ばなくなったら、

「あいつが病気で弱っていくことを認める」

ことになるとどこかで感じていたのです。

 

だから、男の子は心底寂しかったし、

心配していましたが、いつもの日常を

平然な振りをして生き続けました。

 

本当は、病院にお見舞いに行きたかったですが、

それでも「約束だから」と思い、お見舞いにも

行かなかったのです。

 

でも、男の子の本音は、

「弱っているあいつを見たくない」

「そんなの耐えられない」

そう、思っていました。

 

入院している男の子の病状は、

良くなりませんでした。

 

お母さんから入ってくる情報は、

男の子にとっては、耳を塞ぎたくなる

ものばかりでした。

 

それは、徐々に入院している男の子が、

確実に弱っていっていることに他ならなかった

からです。

 

「元気になったら会おう」

 

この言葉だけで、この局面を

乗り切ることは、もう男の子にとっても

入院している男の子にとっても

困難を極めているようでした。

 

ある日、男の子のお母さんが

言いました。

「お見舞いにいってあげて」

お母さんは、すでに泣いています。

 

男の子は大きく首を振りました。

「元気になったら会うんだ。約束だから」

 

お母さんは、もっと泣きました。

「もうね、そんなこと言っている時間がないかもしれないから」

 

その一言は、男の子をどうしても

知りたくない現実のお知らせの

ようでした。

 

男の子は、ガックリと肩を

落として、言いました。

「わかった、明日行くよ」

 

そして次の日、

 

入院していた男の子は

お空に旅立ちました。

 

その知らせはすぐに男の子の

家にもありました。

 

男の子が、これからお見舞いに

向かおうとしていたときです。

 

男の子はガックリと膝から

崩れ落ちました。

 

床には大粒の涙が、

落ち続けています。

 

「会いにいけなくてごめんな」

 

男の子と入院していた男の子が、

通っていた高校を卒業しようと

していた空気が澄み渡る

冬のことでした。

 

それから男の子はとても寂しい

思いをしました。

 

いろいろと後悔もしました。

 

でも、生まれてから間もなく

ずっと大切な人と多くの時間を

過ごすことができたことは、

男の子にとっては、大きな宝物と

なりました。

 

男の子は大人になってから

そのことが少しずつ理解することが

できたのです。

 

「だから、僕たちはずっと一緒だったんだな」

 

「僕は、これからも今という一瞬一瞬を大切にして生きていこう」

 

大人になった男の子は、空気が澄み渡る

夜空を見上げて、そう決意しました。

 

【終わり】

------------------------------------------------------------------- 

執筆依頼なども承っております。

お問い合わせ・ご質問はこちらからどうぞ

------------------------------------------------------------------- 

この物語を読んで何か一つでも

感じていただけたら嬉しく思います。

 

想いを乗せて書いています。

 

皆さまよろしくお願いいたします。