皆さま
今日までお休みモードという
人も多いのではないでしょうか。
せっかくの機会です。
ゆっくりと過ごしてみるのも
いいですよ。
今回はそんな物語です。
詳しくは本文をお読みください。
本日もよろしくお願いします。
【自己紹介】
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「たまにはゆっくり過ごしてみる物語」
~お正月用の日本酒を空けてみた~
広い家でひとりで暮らす
おばあちゃんがいました。
おばあちゃんは、お正月が
やってくるのをいつも楽しみにしています。
それは、自分の子どもたち、孫たちが
集まってくれるからです。
なので、おばあちゃんは、お正月に
向けてたくさんの料理や飲み物、
そして自身も大好きな日本酒を用意
しておきます。
でも、今回のお正月はいろいろな
理由があって、誰も集まることが
できなかったのです。
この理由は、仕方のないことでした。
おばあちゃんが悪いわけでも、
子どもたちや孫たちの都合でも
ありません。
本当は子どもたちも孫たちも
おばあちゃんの家に行くことを
楽しみにしていたのです。
おばあちゃんは、そのことを知って
とても残念に思いました。
料理は、自分で少しずつ食べたり、
近所でひとりで暮らす人たちにでも
おすそ分けしようかと考えています。
大好きな日本酒だけは、台所に
置いておくことにしました。
おばあちゃんは、働き者でいつもの
お正月も子どもたちや孫たちが
来ているので、ずっと動き続けて
いたのです。
急にやることのなくなった今回の
お正月、おばあちゃんは、あれ、
どうしようかしらとやることがないことに
戸惑い気味でした。
仕方がないので、おばあちゃんは
孤独感を感じないように、おじいちゃんの
写真が飾ってある部屋で、ゆっくりと
過ごすことにしたのです。
こんなお正月は今まで生きてきて
初めてのことでした。
大好きな日本酒は、あまり飲む気にも
ならず、おじいちゃんの写真の近くに
置いておくことにしたのです。
おばあちゃんが、ゆっくりと過ごしていると
なんだかおじいちゃんの写真の方が
気になりました。
「あなたは今まで一生懸命生きてきた」
「いつも忙しく、時間を無駄にせず生きてきた」
「本当にがんばって生きてきた」
「こうしてお正月を迎えることができたあなたは幸せだ」
「たまには自分のためにゆっくりと過ごして欲しい」
「あなたは人のためにとても力を注いで生きてきた」
「それは、本当に徳を積む大切な経験だよ」
「でも、もう自分をゆっくり大切に扱ってあげて」
おばあちゃんは、驚く暇もなく、
自分の心を見透かされたかのように、
心が暖かく、そして震えていたのです。
気が付くとおばあちゃんの目からは
じんわりと涙が出てきているようでした。
おじいちゃんの写真なのか、日本酒が
それを伝えてくれたのかは、わかりませんが、
おばあちゃんの心には深く深く刺さった
のです。
おばあちゃんは、涙を拭いて、
ゆっくりと腰を上げました。
そうして、台所からコップを二つ
持ってきて、日本酒を注ぎます。
ひとつはおじいちゃんの写真の下、
もうひとつは自分で飲むことにしました。
こうして、ゆっくりと大好きな日本酒を
飲むことなど初めてのことです。
おばあちゃんは、大好きな日本酒を
じっくりと楽しむことができました。
子どもたちや孫たちが来ることができず、
最初は寂しいと思っていたおばあちゃんでしたが、
こうして、自分に必要なゆっくりとした
時間を過ごすことができたのです。
おばあちゃんは、少し顔を赤らめて
「ありがとう」とその場で
呟きました。
【終わり】
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執筆依頼なども承っております。
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この物語を読んで何か一つでも
感じていただけたら嬉しく思います。
想いを乗せて書いています。
皆さまよろしくお願いいたします。