皆さま
僕は、お酒を楽しむことが
好きなのですが、中でも
冬の寒い日に日本酒を人肌に
温めて飲むのが、たまりません。
今回は、日本酒が主役の物語です。
人生に不要な体験はないと教えて
くれています。
詳しくは本文をお読みください。
本日もよろしくお願いします。
【自己紹介】
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「人は必要なことを体験しているだけだと知る物語」
~熟成されゆく日本酒~
次々と人々によってたくさんの
日本酒が仕込まれていっています。
多くの日本酒は、その後無事に
瓶に詰められれて、出荷されて
いったのです。
でも、なぜだか出荷されずに、
その仲間の日本酒たちを見送る
ことになった日本酒がいました。
「え、なんで僕だけ出荷されないんだろう?」
残された日本酒は疑問に感じています。
同じように管理されて、同じように
造られていったはずです。
それなのに、僕だけ不良品だったの
だろうか?
そんな風に、日本酒は自分のできに
ついてまで疑っていました。
でも、心のどこかでは、
「きっと、すぐに出荷されるか、杜氏たちに飲んでもらえる」
そう、高を括っています。
その予想に反して、残された日本酒は、
どこかへ連れていかれたまま、しばらくの
時を過ごすことになったのです。
そのときの日本酒の圧倒的な孤独感、
劣等感、虚無感、不安感、恐怖感、
様々なネガティブな感情に苦しみは、
想像を絶するものでした。
「もう、自分は日の目を見ることはないのだ」
それくらいにまで、自分を追い込んで
しまったのです。
でも、そのネガティブな感情が
あまりにも振り切ったとき、どこかで
日本酒も開き直ったのです。
このまま腐っていても、本当に
腐った日本酒となって、一生を
終えるだけだと感じました。
それで、日本酒は、多くの時間があると
感じて、孤独な中、十二分に自分は
何者なのか?など、徹底的に自分と
向き合うことになるのです。
それは、そのある意味無の世界に
連れていかれたからこそ、経験できた
ものでした。
ネガティブな感情で一杯のころは、
日本酒自体も、とんでもなく渋みの
ある状態に変化していたのです。
とても人が飲めるような代物では
ありません。
ところが、多くの年月をかけて、
日本酒自身が自分と向き合い、
これまでのネガティブな感情を
認め許していくことで、そのことは、
劣化から熟成へと変化を遂げたのです。
その状態に入ってから、日本酒は
渋みで飲むことの状態から、塾生が
進んだことで、旨味が増していきました。
そうなったとき、残された日本酒は、
「まあ、これはこれでいい人生だった」
そんな風に人生を振り返り、そんな
想いにふけるようになったのです。
すると、突然、日本酒は人間に
掴まれたような気がします。
そう、熟成が進んだ日本酒は、
「古酒」となって、味わい深い
日本酒として、出荷されることに
なったのです。
古酒となった日本酒は、あまりの
突然の出来事に驚きを隠せずに
いました。
もう自分は日本酒として、誰かに
飲まれ、歓ばれることはないと
半ば諦めていたからです。
ところが、突然の出荷です。
しかも、通常の日本酒よりもずっと
高価な「古酒」として売られていくのです。
驚くなと言われても無理があります。
だから、日本酒はしばらくの間は
驚いたままでしたが、少しずつ、
「あー、生きていて良かったな」と
自分が生きてきたその過程を
振り返っていました。
そう、そのとき、日本酒は大きなことに
気が付いたのです。
あの孤独感や恐怖感、不安感、ネガティブな感情、
その後の長い時間自分自身と向き合った経験、
その全てが自分にとっては必要な体験だったのだと。
「自分は、必要な体験をひとつひとつ味わっていただけなんだ」
そんな大きな気付きが、日本酒は
心の底から腑に落ちたのです。
熟成された古酒として、生きるために
必要な体験をしていただけなのです。
逆に言えば、その体験があったからこそ
古酒としての深い味わいを発揮することが
できるわけです。
古酒となった日本酒は、その後、
料亭でお客さんに飲まれて、その
一生を終えてゆきました。
そのときに、日本酒は、様々なことに
感謝が湧いていたのです。
「今まで生きてこられて本当に幸せです」
日本酒はお客さんの身体の中で、
さらに熟成を進めたのでした。
【終わり】
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執筆依頼なども承っております。
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この物語を読んで何か一つでも
感じていただけたら嬉しく思います。
想いを乗せて書いています。
皆さまよろしくお願いいたします。