皆さま

 

白飯についたお焦げって、

美味しいですよね。

 

好き嫌いはあるかと思いますが・・・。

 

今回の物語は、完璧を求め過ぎていると

時間は有限なので、大きな後悔がやって

きてしまうよ、そんなお話しです。

 

詳しくは本文をお読みください。

 

本日もよろしくお願いします。

 

【自己紹介】

幸せな人生に転換できた僕の物語

 

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「完璧を目指す必要はないと感じる物語」

~お焦げのある白飯が魅せてくれた~

 

今日も食卓には、少し焦げて

茶色い部分が目立つ白飯が

並べられています。

 

そこには、白髪が目立ち始めた夫と

その妻のふたりがいました。

 

夫も妻もずいぶんと長らくの年月を

生きてきたようで、多くを

語らずも意思疎通が図れている

ように感じます。

 

お焦げのついた白飯をまじまじと

夫が見ると、それがどうしても

気に入らなかったのか、少し

不満そうにしているのです。

 

妻は、とてもよくできているようで、

その夫に対して、「ごめんなさいね」

「私が炊くとどうしてもお焦げがついてしまうみたいなのよ」

 

夫は、「白飯は白くあるべきだ」

まるで、そう言いたいところを

グッと飲み込んで、お焦げのついた

ご飯を口に入れていくのです。

 

夫は、どうしても完璧主義のような

ところがあり、ちょっとしたこのお焦げが

許せなく感じてしまうようでした。

 

それから2年か、3年が経ちました。

 

あのときと同じ、食卓には、あのときよりも

白髪の増えた夫がひとり座っています。

 

あのとき一緒に食卓を囲んでいた

妻はというと、同じようには存在していませんでした。

 

妻は、様々なお役目を終えて、もう

大きな写真へと姿を変えていたのです。

 

夫は、そんな写真を目の前にして、

食卓にひとり、まさにポツンと座っていました。

 

そこには、まさに「後悔」というべき

念のようなものが彷徨っているようです。

 

夫は、妻が炊くご飯にお焦げがつくこと、

白い飯の中に茶色いその焦げが許せずに

いました。

 

妻が時間の感覚に緩いこと、掃除が

あまり行き届いていないこと、夫は、

そんなことも許せずにいたのです。

 

でも、長年連れ添った、妻が写真へと

姿を変えてしまったことで、ようやく

そうやって連れ添ってくれたこと、

出会ってくれたこと、文句も言わずに

一緒に過ごしてくれたこと、そんな

ことが当たり前ではなかったことを

思い知らされたのです。

 

夫は、「俺は、どうでもいいことで、妻を傷つけてしまった」

そんな風に、自らを悔いました。

 

でも、もうどうにもならないのです。

そんな、白飯にお焦げがつこうが

つくまいが、どうでもよかったと、

そんなことで、不満を露わにしている

自分がどれだけ愚かだったかと、

どれだけ悔いても、もうあのときの

時間は戻ってきません。

 

夫は、妻が写真へと姿を変えてから、

自分でご飯を炊くことができませんでした。

 

それは、やっぱり、妻のことを思い出して

しまうからです。

 

でも、写真の妻を見ていると、もう

そろそろ自分でご飯を炊いてみた方が

いいのではないかと思ったようです。

 

恐らく妻と結婚してから、初めて、

夫はご飯を炊くことにしました。

 

ご飯が炊けるまでの、とても長い時間、

夫は、写真の妻を見ながら、お酒を

飲んで待ちました。

 

そうして、ご飯の炊ける良きにおいが

あたりを包んでいきます。

 

夫は、手探りしながら、ご飯を

長年使っている茶碗によそってみました。

 

「あ」

 

夫から思わず出た言葉は

これだけでした。

 

やっぱり、その白飯には立派に

お焦げがついていたのです。

 

妻が、まだその姿をこの世の中に

残していたとき、「俺ならもっとうまく炊ける」

そう言っていたことが、とても恥ずかしくなりました。

 

そのお焦げに気が付いて、

思わず、写真の妻を見ると

なぜだかさっきよりも笑っているような

気さえします。

 

そう、妻は夫に対して言いたかったのです。

 

「人間は決して完璧でなくて良いのよ」

「白飯にお焦げがついているくらいが丁度良いのよ」

 

夫もそのメッセージともいえるような、

そのお焦げが発している事柄を、

どうやら理解しているようでした。

 

そう、人間は完璧でなくて良いのです。

 

どんなに完璧だと思う人にだって

お焦げはついています。

 

むしろ、それがその人の魅力でも

あるのです。

 

白飯についたお焦げは、味わい深くて

ある意味、白飯の魅力を増しているとも

言えるのです。

 

こうして、夫は、人生の大きな気づきを

得ました。

 

でも、心の中で夫は思います。

 

「もっと、もっと早く気が付けばよかった」

「ごめんな」

「そして、ありがとう」

 

夫は、それから人にも自分にも

完璧を求めることはなくなっていったのです。

 

【終わり】

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この物語を読んで何か一つでも

感じていただけたら嬉しく思います。

 

想いを乗せて書いています。

 

皆さまよろしくお願いいたします。