皆さま
人間の思考は驚くほど自由です。
過去や未来など、いろいろな場所へ
自由に行き来します。
でも、過去や未来に意識を向けると
なかなか苦しいこともあります。
そんなときは、意識を今に戻して
みましょう。
詳しくは本文をお読みください。
本日もよろしくお願いします。
【自己紹介】
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「とにかく今を生きるを連続させる物語」
~妻に先立たれた老人男性が感ずる~
古くなった一軒家に、背中が
緩やかに曲がった老人男性が
佇んでいました。
老人男性の前には、長年連れ添った
人生のほとんどを共に過ごした
妻の写真が飾ってあります。
男性は、誰もいないひとりの姿で、
思う存分涙を流していました。
男性にとって長年過ごした妻を
亡くすということは、大きな悲しみを
残したのです。
来る日も来る日も何もする気が起きず、
何かをしようとすると、涙がこみ上げました。
男性は、いっそのこと自分も
連れて行ってくれないかと、
写真の妻へお願いをしたりもしています。
それだけの悲しみ、そんな生活を
続けていたからか、確かなことは
わかりませんが、男性は病気になっていました。
病気に苦しみながら、亡き妻を思い
涙する日々、どんどんと男性は弱って
いったのです。
男性は誰とも会わなくなったので、
このことに気が付く人も少ないのです。
でも、写真になってしまった妻は、
そのことを心から心配していました。
なんとか何かを伝えたいと思っているのです。
写真の妻は、知恵を振り絞りました。
今日も男性は弱った身体を、ゆっくりと
起こして、肩を落としています。
そうして、やる気もせずに、昔の写真を
振り返っていました。
そうして、妻がいなくなったことを
改めて確認をしているかのようでした。
その写真には、若かりし男性と
元気だったその妻が映っています。
そう、二人のとっても大切な思い出です。
もちろん大切なものです。
でも、もうそれは過去でした。
過去を中心に生きることは難しいのです。
そして、それは苦しいのも事実です。
だから、そこに映る昔の妻は、がんばって
ここだ!と思って、写真が光るように
願いました。
すると、写真が光りました。
光ったため、男性の目には昔の
写真の二人は見えなくなり、今の
自分の姿が映ります。
そう、まさに「今の自分」です。
男性の妻は、それを男性に見せたかったのです。
男性は、久しぶりに自分の姿を
見た気がしました。
「ずいぶんと弱弱しくなっちまったなあ」
今の自分を見て、自分を客観的に
見ることができたのかもしれません。
「母ちゃん、亡くして、悲しくて、そのうちに病気になって・・・」
「気が付けば、悲しい自分、妻を亡くした自分、
病気になった自分、そんな自分で生きてきちまったなあ」
ポツリポツリと男性はひとりで
話し始めました。
そう、男性の妻は夫でもある男性に、
自分がいなくなって悲しんでくれるのは、
もうわかったから、自分の人生、今の人生を
生きて欲しいと願っているのです。
男性は、いつの間にか、今を見ることが
できなくなっていました。
人生は今の連続です。
過去が積み上げてきたものは、
誰にだってありますが、今の自分が
最高潮です。
だから、妻は男性にそれを取り戻して
欲しかったのです。
妻を亡くした自分、病気になった自分、
それは自分の一部でしかありません。
その前に自分は自分でしかありません。
男性は、少しずつですが、前を向くという
無理をすることなく、今を見ていくように
なりました。
もちろん、忘れることができるわけではないですし、
そうする必要があるわけではありません。
過去を生きようとするのではなく、
悲しい自分を生きようとするのではなく、
今ここにいる自分を生きるのです。
それが、男性にとって今よりも幸せになるためにも
妻が伝えたいことでもあったのです。
【終わり】
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執筆依頼なども承っております。
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この物語を読んで何か一つでも
感じていただけたら嬉しく思います。
想いを乗せて書いています。
皆さまよろしくお願いいたします。