皆さま
人生には色々あります。
色々あるからこそ、人生を
楽しむことができるのだと思います。
色々あってしんどいときもあります。
そんなとき無理やり前を向こうなんて
言えません。
でも、きっと色々あってよかったなあと
思える日がくるはずです。
詳しくは本文をお読みください。
本日もよろしくお願いします。
【自己紹介】
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「色々あったからこそ良き人生だったと思う物語」
~人生の最期を迎えようとしている紳士~
ひとりの紳士がベッドの上に
横たわっていました。
目を閉じて、真っすぐに天井を
見上げています。
鳥のさえずりが聞こえてきたり、
風が葉を揺らす音が室内にも
流れてきているようです。
そこは、自然に囲まれた
病院のようなところでした。
紳士はその個室にいるのです。
目を閉じて、体力が落ちている身体を
休ませながら、自分の心や記憶を
振り返っています。
もう、それくらいしかやることは、
残っていないと感じていたのかもしれません。
紳士は、年齢はきっと80歳を超えていて、
90歳には届かないくらいに見えました。
紳士には紳士の人生があります。
紳士は戦争にも行きました。
自分の命が危険にさらされるという
究極的な体験もしました。
人を傷つけなくてはいけないという、
人生でも最大の葛藤を抱えました。
簡単に浄化されるものではないとも
紳士は知ったのです。
紳士は家族を持ったことも思い出しました。
若くして妻と出会い、子を2人持ったのです。
そのころの紳士は、日本を復興させて
経済的にも成長していくその流れに
乗って、仕事に没頭していました。
妻に厳しくしてしまったり、2人の子にも
「恥ずかしくない大人」にするためにも
かなり厳しく育てました。
「妻にも子どもたちにも本当に厳しい言葉、態度を取ってしまった」
「いつも怒ってばかりの夫で、父であったな」
「もっと優しくしてやれれば良かったな」
紳士は静かに自分の人生を省みて
いたのです。
それから紳士には、2人の子どもに
できた子どもたち、紳士からすると
孫ができました。
そのころには、紳士も定年退職を
迎えて、孫をかわいがったのです。
本当は、まずは自分の妻、そして
大切な子どもたちを思い切り
かわいがってやりたかったなと
思いながらも、孫をその代わりに
心底かわいがりました。
いつも怒ってばかりいた、当時の
紳士でしたが、孫には一度も
怒ることはなかったのです。
孫たちが、どれだけふざけようと、
紳士は怒りませんでした。
目を閉じながら、紳士は、そのことは、
とっても良かったなあと思っています。
でも、やっぱり、人生いろいろ
ありました。
そんなことを思い返していると、
やっぱり、長年連れ添ってきた
妻のことを思い出します。
怒ってばかりでも、厳しくしても、
妻は自分が最期を迎えようと
している、今の今までついてきて
くれたのです。
そんな妻に、一度たりとも
「ありがとう」と言ったことが
なかったなあ、と紳士は思い返しました。
そして、そのことは、この人生では
もう叶いそうにないのです。
子どもたち2人にも、厳しくし過ぎて
「ごめんな」と謝ってあげたいと
思いましたが、それもやっぱり
叶いそうにありません。
孫たちにも、
「あなたたちが生まれてきてくれて、おじいちゃんの後半の人生が楽しくなったよ。ありがとう」と
長々と伝えたくなりましたが、
それだって叶いそうにありません。
でも、もう本人たちに伝えることは
できませんが、紳士は、もう悔いては
いません。
こうして、最期の最期にこう思えたこと、
それこそが、自分にとっては本当に
良かったのだと思えたのです。
こうした想いで最期を迎えられることに、
紳士は感無量だったのです。
紳士は静かに、自分の人生を振り返り、
自分の人生をまとめることができました。
そうして、ここまで生きてきて
本当に良かった、そう思えたのです。
そのうちに、紳士の周囲が騒がしく
なっていきました。
どうやら、紳士が最期を迎えようと
しているようでした。
紳士と同じくらいに年老いた妻、
若いころの紳士にそっくりになってきた
子どもたち、紳士にかわいがられた
記憶しかない孫たち、皆がそれぞれに
悲しんでいます。
紳士の最期の想いが通じたのか、
それは確かではありませんでしたが、
紳士を責めている人は、その中には
ひとりもいませんでした。
【終わり】
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執筆依頼なども承っております。
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この物語を読んで何か一つでも
感じていただけたら嬉しく思います。
想いを乗せて書いています。
皆さまよろしくお願いいたします。