皆さま
生きていれば誰かを羨むことも
あると思います。
でも、他人の人生を生きることは
できないのですね。
ふむふむ、詳しくは本文をお読みください。
本日もよろしくお願いします。
【自己紹介】
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「他人になろうとすることが難しいと気づく物語」
~象が人間になろうとした~
いつも人間のことを見ている
一頭の子象がいました。
子象は、自分が象であることが
とても嫌いだったのです。
灰色の身体も、長い鼻も、大きな
垂れ下がった耳も、ザラザラする
皮膚も嫌いだったのです。
いつかは、自分も人間のように
2足歩行で歩いたり、走ったり、
笑ったり、怒ったり、言葉で話したり、
そんな風になりたいと心の底から
思っていました。
だから、人間を見かける度に、どうにか
人間の真似をしようと、子象は無理ばかり
しているのです。
この前は2足で歩こうと、立ち上がり、
足を怪我してしまいました。
人間が食べているものに憧れて、
いつもの餌を食べるのをやめてみたり
したのです。
でも、人間の食べ物を食べる機会に
めぐり合うこともありませんでした。
話しをしようとしても、象ならではの
鳴き声しかできません。
そんな自分を子象は、「ダメな自分」と
言って、厳しくし続けるのです。
そうして、象であることしかできない
自分を責めました。
自分で自分を責めた子象の心は、
とっても疲れていったのです。
「人間らしくしろ!」
「象であることを忘れろ!」
心が折れそうになるたびに、
子象は、そうやって自分を
奮い立たせて毎日を過ごしました。
でも、人間は子象を子象として
扱いますし、子象も子象のまんま
だったのです。
いつしか子象の心は疲れ切って、
身体も動きにくくなって、なんだか
子象らしくもなくなっていきました。
自分で自分が何者かもわからなく
なっていったのです。
疲れ切ってしまった子象の目の前に
あるとき、人間の子どもがやってきました。
その子は、子象を小さな手のひらで
やさしく撫でてくれます。
「どうして、人間になりたいの?」
人間の子どもは、なぜだか子象が
人間になりたがっていることを
知っていました。
「僕は、象さんの長い鼻や大きな耳がとても羨ましいよ」
「人を乗せて歩いている姿だって、とても格好いいしね」
弱り切っていた子象は、少し驚きました。
「僕のことが羨ましい?格好いい?」
子象は、疑問に感じています。
「うん、象さんは象さんだからいいんだよ」
「象さんはそのまんまでいいんだよ」
「え!」
子象は、大きく鳴きました。
そうして大きく泣きました。
それから、人間の子どもは弱っていた
子象のもとに毎日遊びに来たのです。
そうしているうちに、子象は、
「僕は僕のままでいいんだ、象は象のまんまでいいんだ」
そのことが、少しずつ腑に落ちて
いったようなのです。
そうすると、子象は元気になっていきました。
人間の子どもにお礼がしたいと思ったのです。
人間の子どももそれを知って嬉しそうでした。
それから、
子象は、その人間の子どもを
背中に乗せて、象らしく長い鼻を
揺らしながら、悠々と歩いて
いるのです。
それが、子象の人間の子どもへの
お礼だったのです。
「教えてくれてありがとう」
子象は優しく小さく鳴きました。
【終わり】
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執筆依頼なども承っております。
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この物語を読んで何か一つでも
感じていただけたら嬉しく思います。
世の中が今よりも幸せな場所になっていきますよう
想いを乗せて書いています。
皆さまよろしくお願いいたします。