皆さま
生きているといろいろ考えますよね。
人間だから考えるわけですけど、
少し疲れることもあります。
そんなときは、自然に触れてみると
不思議と落ち着いてきたりしますよね。
今回はそんな自然を題材に、「本当の自分で生きる」
ということについて書いてみました。
詳しくは本文をお読みください。
本日もよろしくお願いします。
この写真の植物、なんと3メートルくらい
ありました。いやあ、びっくりです。
【自己紹介】
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「本当の自分で生きるってなんなのかを感じてみる物語」
~少女の成長を見守る一本の木~
広場になぜだか一本だけ木が
生えていました。
その木はお空に向かって、真っすぐに
生えています。
その木のもとへは、ひとりの少女が
よくやって来たのです。
少女はきっと、幼稚園か小学校の
低学年のように見えました。
少女は、いつもいつも同じ
疑問を持っていたのです。
「どうして人間は生きているの?」
少女は、純粋にそんな漠然とした
疑問を持ち続けていました。
この日の少女は、友達に
意地悪をされて、悲しい気持ちに
なっていたのです。
「どうして、意地悪をするんだろう?」
少女は、そうして悲しい気持ちになったとき、
「どうして人間は生きているの?と疑問を持ったとき、
決まって、広場に生える木の所へやってきました。
少女はまだ短い腕を精一杯伸ばして、
木に抱きつきます。
木は、あの子が来たんだなあ、と
静かに感じています。
そうして、少女は木に話しかけます。
「なんで、あの子は私に意地悪をするの?」
「私、なにも悪いことしてないのに」
そう言って、少女は泣いていました。
少女に抱きつかれた木は、その疑問には
答えずに、黙って語りかけるのです。
「あなたは、何も悪くないよ」
「僕と一緒になって、感じてごらん」
「ただただ、あなたはそのままいればいいんだよ」
少女に何かが聞こえてきたわけでは
ありませんが、不思議と少女は泣きやみます。
少しずつ、少女の気持ちが落ち着いて
きたのです。
それを感じ取った木は、自分の葉を
一枚ユラユラと落として、少女に
プレゼントしました。
ユラユラと落ちていく葉は、少女の
頭上を漂っています。
少女は、なぜだかお空のほうが
気になって、上を見ていたのです。
すると、ユラユラと落ちてくる葉に
気が付きました。
ユラユラと葉が落ちていき、
やがてその葉は、少女の
おでこのあたりに優しく
着地するのです。
少女はその葉をまだ小さな両手で、
そっと掴みました。
少女は、なぜだか木に「ありがとう」と
言いたくなっています。
そうして、もう一度、木に抱きつくのです。
抱きつかれた木は、本当は少し
照れくさかったですが、また黙ったまま
少女に語りかけました。
今度は、少女にも聞こえたようです。
「あなたは、そのままでいいんだよ」
「あなたは、生きているだけで素晴らしいんだよ」
その木は、それからも少女を見守り続けました。
風の強い日も、凍えるように寒い日も、
台風のような嵐の日も、大雪の日もありました。
それでも木は、何も変わらず
そのままで居続けました。
その場に生え続けていました。
木はずいぶんと大きくもなりました。
それと同じようにあの少女も
大人になっていきました。
大人になった少女は、木のところに
来ることもずいぶんと減ったのです。
木も少しだけ大人になった少女が
来ることを待っていましたが、来ないということは
きっと悲しくないのだろうと、木は安心していました。
ある日のこと、木は、今日は大人になった少女が
来る気がしてなりませんでした。
木にもなぜだかわかりません。
すると、木の周囲に人間が何人かいて、
取り囲んでいました。
大きな音がし始めます。
全てが壊されていくような、繋いできたものを
バッサリと断ち切るような音でした。
その音がしばらくすると、やがて、
別な大きな音がします。
しばらく人間たちが、音を立てながら
何かをしていました。
そのうちに、人間たちもその場から
去っていきます。
すると、駆け足のような足音が
聞こえてきました。
なんと、あの大人になった少女が
木のもとに久しぶりにやってきたのです。
でも、大人になった少女の表情はとっても
悲しそうでした。
そうして、木のある場所へたどり着きます。
大人になった少女はその場に、
膝をつくように崩れ落ちました。
大人になった少女は、大きく
大きく泣いています。
大人になった少女は長くなった腕で、
木に抱きつこうとしました。
でも、そこには、もう木の根元しか
残っていなかったのです。
大人になった少女からは、ポロポロと
命の水が目からしたたり落ちて、
それが木の根元を濡らしていきました。
根元だけになった木も、大人になった
少女がやってきたことに、薄れゆく意識の中、
本当になんとなくですが気が付いています。
根元だけになった木は、それでも
そこにそのままの姿であり続けるだけでした。
【終わり】
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執筆依頼なども承っております。
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この物語を読んで何か一つでも
感じていただけたら嬉しく思います。
世の中が今よりも幸せな場所になっていきますよう
想いを乗せて書いています。
皆さまよろしくお願いいたします。