皆さま
散歩を毎日の日課としているのですが、
途中で飲むコーヒーがおいしいのです。
空を見上げて雲の動きを見ている、
ちょっと怪しいですが、幸せを感じられる瞬間です。
では「道端で起きている幸せを綴る物語」の
第74作目を書いていきたいと思います。
「不安でご飯が食べられなくなった雅美さんが道案内をしてもらった物語」
雅美さんは会社で働く30歳代の女性です。
雅美さんには人には言えない秘密がありました。
人よりとても敏感なのか、不安な気持ちを抱くことが多いのです。
朝起きたとき、雨が降っているとき、会社で忙しいとき、
社内で怒られている人がいるとき、段々と暗くなっていく外をみているとき
数え上げたらきりがないくらいに不安は訪れます。
雅美さんはその不安が日に日に大きくなっていることに
気が付きます。
しかし、それを人に言うことはできませんでした。
会社でもいつもランチに行く仲間がいます。
今日もランチに誘われましたが、
雅美さんのおなかは空いていませんでした。
その代わりに雅美さんの心の中は
不安でいっぱいになっていたのです。
「断ったら不安に負ける」
「食べられないなんてまるで病人じゃない」
「断ったら仲間じゃなくなるかも」
雅美さんは様々な思いに支配されます。
そうして、平然を装って会社の仲間と
ランチへ出かけました。
雅美さんは注文をしたものの
食べられるかどうか不安でした。
仲間たちはどんどんと食べていきます。
雅美さんは食べようとしますが、
胸の中がつまっているかのように
食事が喉を通りません。
仲間の独りが雅美さんの異変に気が付きます。
「雅美さん、大丈夫ですか?食欲ない?」
雅美さんはドキッとしました。
「私が不安であることがバレちゃう・・・」と
心の中で叫びました。
「大丈夫よ。なんでもないわ」とみんなに言って
食事を続けました。
身体は受けつけようとしていませんが、
雅美さんは食事を体内に押し込みました。
雅美さんは根性でがんばりで、
その日を乗り切りました。
しかし、雅美さんの心と身体は
随分と疲弊してしまったのです。
そうして、しばらくの間は
我慢を続けて会社に通い続けましたが
ある日、とうとう朝起きることができなくなりました。
雅美さんは会社へどう連絡するか迷いました。
最初は「家族の具合が悪いからしばらく休ませてください」とだけ
上司に伝えました。
そうして、雅美さんは家の中で過ごしました。
雅美さんの頭と心の中は不安でいっぱいでした。
「ずっと一生不安なこのままなのか・・・」と
考えるだけで、とてつもない不安に襲われていました。
それでも雅美さんの奥の奥にある何かは、
前向きに生きようとしているのでした。
不安にまみれた雅美さんでしたが、
一瞬一瞬ですが前向きになる瞬間があったのです。
「少し外でも歩いてみたら」
「ゆっくり休んだら、好きなことでもしてみたら」
「不安って誰かに言ってもいいんだよ」
そんなことを雅美さんは感じるようになったのです。
しばらく会社を休んでいましたが、
雅美さんは少し散歩にでも出かけることにしました。
平日の昼間にこうしてゆっくり歩くことは
雅美さんにとっては久しぶりでした。
しかし、雅美さんに街中の景色を楽しむ余裕は
ありませんでした。
すると、交差点で雅美さんのお母さんより
少し年上くらいの女性に出会いました。
その女性は雅美さんに話しかけました。
「このあたりにスーパーはありますか?」
雅美さんはいつも行っていたスーパーを
教えました。
話しを聞くとその女性は喫茶店で働いていると
言うことでした。
女性は雅美さんを喫茶店に来ないかと
誘いました。
雅美さんは不安な気持ちになりましたが、
行ってみることにしました。
女性が雅美さんを道案内します。
その喫茶店に入ると雅美さんは
女性からある事実を聞きます。
この喫茶店は障がいのある人たちが
働いているのだと。
そうして、一生懸命に働く店員さんを
雅美さんは注意深く見ていました。
雅美さんはしばらくその様子を見て、
なにやら腑に落ちたような顔をしています。
「障がいがあっても、できることを活かして楽しんでいる」
「私も不安でできないことだらけだと思っていたけど、できることはいっぱいあるんだな」
雅美さんの奥の奥のほうにあった小さな光が
少しだけ大きくなった気がしました。
雅美さんはその女性にお礼を言いました。
そうして、雅美さんは散歩に出かけて
喫茶店を教えてくれた女性との出会いという
偶然に感謝しました。
【終わり】
現在、不自由や不安を感じる人生を送っている人が
このブログを読んで少しでも新たな一歩を踏み出してくれる
きっかけになったら嬉しく思っています。
世の中には親切な人は意外といます。
そんな願いを込めて書いています。
何か生きる上でのヒントになりましたら幸いです。
皆さまよろしくお願いいたします。