皆さま
ここのところゲリラ的に雨が降ることが
多いですね。
雨が降り出してから最高潮にいくまでの
時間が短いので対処が大変なものです。
では「道端で起きている幸せを綴る物語」の
第39作目を書いていきたいと思います。
「不自由な気持ちを抱えた司さんが道案内をしてもらった物語」
司さんは最近まで会社員として勤めていた30歳代の男性です。
司さんは不自由な気持ちをどうすることもできませんでした。
会社で働いていても誰かが見張っている気持ちになってしまっていました。
上司の人たちが司さんの頑張りを見守っているつもりでしたが、
司さんにはなぜだかそれが見張られている気持ちになってしまうのです。
「僕が失敗しそうだから、あんなに声をかけてくるんだ」
「僕が悪い人間だから、心配そうにしているんだ」
「僕の進みが遅いからしょっちゅう状況を確認されるんだ」
「お昼休みから戻ったら上司と目が合ったけど、きっと
仕事が進んでないのにお昼休み取りやがってと思っているんだ」
司さんはどんどんと見張られている気持ちを強固にしていきました。
だから、司さんは自分の実力を発揮できずに
中々会社でも評判をあげることはできませんでした。
司さんはその後、大きなミスをきっかけに
会社を辞めることにしたのです。
その時、司さんは会社が悪いと思っていました。
こんな不自由な会社にいたから、
僕は不自由な気持ちになったのだと感じています。
会社を辞めて司さんは少し自由な時間を作ることにしました。
司さんは時間的には自由になりましたが、
今度は近所の人たちにも見張られている気持ちになりました。
平日に近所に出かけることも増えた司さんでしたが、
「平日なのに出歩いているから、会社クビになったと思われているのではないか」
「きっと仕事できない人だと思われているのではないか」
「仕事もしてないから結婚だってできっこないと思われているのではないか」
と会社から近所へとその場所を変えただけで
またまた自分の気持ちを不自由にしているのです。
そうして、しばらくの間を司さんは過ごしていました。
ある時、司さんは平日の昼間に出かけようと玄関を出ました。
すると、小さいころから知っている近所のおばちゃんと
久しぶりに会ったのです。
おばちゃんは笑顔で司さんを見ていました。
司さんはこの時も、
「あ、おばちゃんも無職の僕を笑っているのだな」と
勝手に思っていました。
「司くんね」おばちゃんが笑顔で司さんに話しかけます。
司さんはその優しい声を聞いて、様々な想いが
湧きあがってきたのです。
司さんは小学校の頃、いじめられていました。
司さんはそのことを誰にも言わなかったのです。
実はいじめられたきっかけが、
司さんは歌が好きでクラスで歌って
目立っていたのです。
それを良く思わない人間たちにいじめられたのです。
不思議なもので司さんの歌を楽しんでいた
友達だと思っていた人間からもいじめられることになりました。
それで、司さんは空に誓ったのです。
「もう二度と歌わない。目立つことはしない」
それをきっかけに社会人として働いていても、
目立たないように生きてきました。
それはそれは不自由だったに違いありません。
そして、司さんは小さい頃いじめられて
帰る道でもおばちゃんに優しく声をかけてもらってことを
思い出していたのです。
司さんはいじめられて帰る時、泣いていたようです。
おばちゃんはそれに気が付いていました。
おばちゃんは司さんに理由を聞きましたが、
司さんは頑なに答えません。
おばちゃんは司さんをどこかの喫茶店のような
ところへ連れて行ってくれたのです。
司さんはその喫茶店でフルーツがたくさん
入ったパフェをおばちゃんにご馳走してもらいました。
司さんはそのことを久しぶりに思い出しています。
すると、司さんの胸のあたりが少し暖かくなりました。
「おばちゃん、フルーツパフェのこと・・・」
「覚えているわよ」
司さんの唐突な人ことにもおばちゃんは当たり前のように答えました。
「どこに・・・」
「久しぶりに一緒に行こうか」
おばちゃんは司さんの気持ちを読んだように、
そう言いました。
おばちゃんは司さんをフルーツパフェを食べた
喫茶店に案内しました。
司さんは数十年ぶりにフルーツパフェを食べました。
小さい頃に食べたものと何も変わっていないと
司さんは感じました。
司さんはフルーツパフェを食べながら
涙が流れてくるのを抑えることはできませんでした。
おばちゃんはそれを優しく見ています。
「司くん、泣いていいんだよ」
司さんは涙もそうですし、湧きあがる想いを
これ以上自分で持っていることができなくなりました。
小さい頃いじめられていたこと、
会社も辞めてしまったこと、
ずっと不自由な気持ちを持っていること
湧きあがる想い全てをおばちゃんに話しました。
おばちゃんは優しい表情のまま「うんうん」と聞いてくれています。
話し終わると司さんは少し心の中がすっきりしたこと感じます。
少し間が合って、おばちゃんは司さんに一言だけ言いました。
「司くん、また歌ってみたらいいわよ」
司さんはびくっとしました。
小さなころはおばちゃんの前で歌ったこともあります。
「歌うことは目立つことでいじめられること」と
司さんは思い込んでいます。
でも、歌うことを考えると司さんの胸の中に小さな
炎がユラユラと燃えている気がします。
司さんはおばちゃんにお礼を言いました。
司さんは自由になった時間を使って、
まずはこっそりと歌を練習することにしたのです。
司さんは玄関を出た時におばちゃんと出会えた
偶然に感謝しました。
【終わり】
皆さまいかがでしたでしょうか。
司さんは小さい頃いじめられたことが
きっかけで不自由な気持ちを抱えて人生を送っていました。
好きなことがきっかけで不自由になって、
好きなことをきっかけに自由になろうとしているのですね。
現在、不自由や不安を感じる人生を送っている人が
このブログを読んで少しでも新たな一歩を踏み出してくれる
きっかけになったら嬉しく思っています。
世の中には親切な人は意外といます。
そんな願いを込めて書いています。
何か生きる上でのヒントになりましたら幸いです。
皆さまよろしくお願いいたします。