皆さま

 

朝の散歩をしていると少し涼しさを感じました。

 

秋の気配がやってきていますね。

 

ビールのコーナーも秋商品が増えています。

 

そんなところでも季節を感じることができます。

 

では「道端で起きている幸せを綴る物語」の

第36作目を書いていきたいと思います。

 

「怒りっぽい隆司さんが道案内をしてもらった物語」

 

隆司さんは30歳代のバリバリ働く男性です。

 

今の勤め先である会社に入社して十数年、

 

部下や後輩も増えてきました。

 

隆司さんは何に対してかはわかりませんが、

 

ある違和感を覚えるようになっています。

 

隆司さんは部下や後輩に対してすぐに怒ります。

 

部下や後輩たちも隆司さんに接する時は

 

とても気を付けているようでした。

 

それでも、何かあると隆司さんは怒ってしまいます。

 

もちろん会社ですので怒ることも必要だと

 

隆司さんも部下や後輩たちは感じています。

 

隆司さんはこの日も後輩を怒りながら、

 

違和感を感じていました。

 

「今自分は一体何に怒っているのだろう?」

 

一通り怒った後、隆司さんはその浮かんできた

 

違和感と疑問を考えました。

 

隆司さんは一日に何度も怒ります。

 

なので、怒るたびに考えるようにしたのです。

 

すると、隆司さんは自分が怒る時の

 

法則を発見しました。

 

「部下や後輩の態度が気に入らなかった時」

 

隆司さんは怒っていたのです。

 

隆司さんは少し落ち込みましたが、

 

それでも怒ることはやめられませんでした。

 

隆司さんは自分でどうにかできそうもなかったので、

 

アンガーマネジメントなるセミナーに参加することにしました。

 

その日は珍しく有給休暇を取って、とある街へ出かけていきます。

 

隆司さんは駅の近くの喫茶店で一服して、

 

店から出ると目的地と反対方向に歩いてしましました。

 

しばらく歩いても会場へ着くことができず、

 

隆司さんはイライラしています。

 

すると、少し先におばあちゃんと10歳前後の少年が

 

いました。

 

良く見るとおばあちゃんが膝をついて座っているようです。

 

少年は「おばあちゃん、大丈夫?」と声をかけています。

 

「あいたたた」とおばあちゃんは痛がっている様子です。

 

そこへ隆司さんは近づいていき、

 

「大丈夫ですか?」とおばあちゃんに声をかけました。

 

「あらあ」とおばあちゃんは笑顔になり、ゆっくりと立ち上がります。

 

「おばあちゃん、早く行こうよ。テレビ始まっちゃうよ」

 

少年はやれやれと言わんばかりにおばあちゃんに言います。

 

「あれ、大丈夫ですか?」隆司さんは拍子抜けして聞き直します。

 

「大丈夫ですよ。いつものことだから。ほら、この通り」と言って

 

おばあちゃんは背筋をピンと張ります。

 

おばあちゃんは隆司さんのことをじっと見つめます。

 

「あなた、失礼ですが何かに困っていませんか?」

 

おばあちゃんは隆司さんの心を読むかのように聞きます。

 

隆司さんは少し驚きましたが、道に迷っていることを伝えました。

 

「そこなら私が連れてってやる」とおばあちゃんは隆司さんに言います。

 

「えー、おばあちゃん早く家に帰ろうよー」

 

少年はおばあちゃんに不満を口にします。

 

「困った時はお互い様だろ」おばあちゃんは少年に言います。

 

隆司さんはとまどいましたが、その様子を見て何かを感じているようです。

 

おばあちゃんはゆっくりと進み始めます。

 

少年もそのペースに合わせて一緒に歩いています。

 

隆司さんはその後をついていきます。

 

「おばあちゃん、荷物を持つよ」と少年がおばあちゃんを気遣います。

 

おばあちゃんと少年のゆっくりとしたペースで歩を進めていきます。

 

その中で隆司さんはおばあちゃんと少年と家族のことや

 

習い事のことやら色々な話しを聞かせてもらいました。

 

目的の会場に到着する頃、隆司さんはなんとも言えない感情が

 

湧きあがってきていました。

 

おばあちゃんと少年にお礼を言うと、2人は元来た道をまた

 

ゆっくりと歩いていきます。

 

「優しいなあ」隆司さんは2人の後ろ姿を見ながら

 

ぽつりと呟きました。

 

すると、それから隆司さんは自分の少年時代が

 

思いだされてきたのです。

 

隆司さんは少年の頃、「優しかった」のです。

 

少年の隆司さんに沢山の友達が近寄ってきます。

 

隆司さんはそれに笑顔で応えています。

 

「何で隆司君はそんなに優しいの?」と

 

純粋な眼差しで聞いてくる少女もいました。

 

それほど隆司さんは「優しかった」のです。

 

少し時が流れて隆司さんが中学生くらいになると、

 

隆司さんを攻撃する人も近寄ってくる中に

 

現れるようになりました。

 

隆司さんはそのことで深く心が傷ついたのです。

 

隆司さんはその時思いました。

 

「僕が優しいから攻撃する人がいるのだ」

 

それから隆司さんは「優しさ」を封じ込めるようになったのです。

 

その「優しさ」の代わりに「怒ること」で、隆司さんは自分を守ろうと

 

していたのでした。

 

隆司さんはそこまで想いを馳せたところで、

 

ハッと我に返りました。

 

様々なことが腑に落ちたようです。

 

その場でアンガーマネジメントセミナーは

 

キャンセルすることにしました。

 

「優しい自分で良いのだ」

 

「優しい自分こそ本来の自分なんだ」

 

それから会社に行って、隆司さんはもちろん怒ることはありますが、

 

以前のように「部下や後輩の態度」で怒ることはなくなりました。

 

徐々に自然と隆司さんは優しくなっていったのです。

 

そんな風に会社でも過ごすようになると

 

色々なことがうまくいくようになりました。

 

隆司さんは知らぬ街で会って「優しさ」を

 

見せてくれたおばあちゃんと少年との

 

出会いという偶然に感謝しました。

 

【終わり】

 

皆さまいかがでしたでしょうか。

 

隆司さんは大人になって怒りっぽい自分に

 

違和感を感じ始めていました。

 

回りの人たちも隆司さんに接することを

 

躊躇していたようです。

 

しかし、道案内をされることで

 

自分が本来は優しい人間だったことを

 

思いだすことができました。

 

現在、不自由や不安を感じる人生を送っている人が

このブログを読んで少しでも新たな一歩を踏み出してくれる

きっかけになったら嬉しく思っています。

世の中には親切な人は意外といます。

そんな願いを込めて書いています。

 

何か生きる上でのヒントになりましたら幸いです。

 

皆さまよろしくお願いいたします。