皆さま
私は小学校の頃から土曜日という曜日が好きでした。
それは次の日は学校が休みだからです。
だから日曜日は好きではありませんでした。
でも、日曜日があるからこそ
土曜日を好きになれるんですね。
うーん、これからは日曜日に感謝します。
では「道端で起きている幸せを綴る物語」の
第35作目を書いていきたいと思います。
「趣味の登山で裏道を悠羽実さんが道案内をしてもらった物語」
悠羽実さんは40歳代になったばかりの女性です。
悠羽実は普段会社員として働いていますが、
趣味があります。
それは登山です。
週末に独りで登山に行くのが好きでした。
この日も悠羽実さんは良く登る山へ出かけています。
登山口で登山の準備のため体操をしていると、
父親と同じくらいの年齢の男性に声をかけられました。
「お姉さん、良く見る顔だね」
「あ、そうなんです。良く登っていますよ」
「お姉さん、この山を裏道から登ったことある?」
「え、裏道ですか?いえ、ないです」
「裏道から登るとアップダウンは激しくて
疲れるけど、その後にね、急に視界が開けて
最高の景色を見ることができるよ」
悠羽実さんはそれを聞いて目が輝きました。
「絶対登ってみたい」悠羽実さんはそう思ったのです。
その男性に裏道のありかを聞きます。
男性は慣れた様子で悠羽実さんに道を案内してくれました。
男性は今日は「慣らしだから」と言って通常ルートを
歩くそうです。
悠羽実さんはその山の裏道を歩き始めます。
最初は「そんなにたいしたことないわね」と
思いながら歩いていましたが、
ある時から急に木々に覆われて
太陽の光が随分と遮断され
暗くなってきたのです。
そのうちにアップダウンも激しくなり、
悠羽実さんの息は上がり始めます。
「こんなことなら裏道に来るんじゃなかった」
悠羽実さんは早くも後悔し始めてしまいました。
「引き返そうかしら、景色も暗くて良く見えないし
アップダウンも激しいし・・・」と思いましたが、
このまま登山口に戻ると今日の登山は時間的に
できなくなります。
悠羽実さんは父親と同じくらいの年齢の男性が言った
「視界が開けて最高の景色が待っている」という言葉を
思いだして、再び登り始めました。
「はぁ、はぁ、はぁ」あたりはとても静かで
悠羽実さんの深い息遣いだけが聞こえてきます。
どれくらい登ったでしょうか、しばらくすると
悠羽実さんの視線の奥の方に明るい光が
見えてきました。
「いよいよ、あの絶景なのね」
少しの光が見えたことで悠羽実さんは安堵しました。
そして登るペースが少し速まりました。
その小さな光は悠羽実さんが歩を進めるたびに
少しずつ大きくなっていきます。
そうして、とうとうその光の中に悠羽実さんは
たどり着きます。
「はぁ、はぁ、はぁ」悠羽実さんは息を整えながら
ゆっくりと顔を上げて光の大元を眺めます。
そこには男性が言った通り、絶景が待っていました。
この山には何度も登っていますが、こんな景色は
悠羽実さんは見たことがありませんでした。
悠羽実さんはその絶景を見ながら、
なぜだか心の中に色々な言葉がシーンと一緒に
浮かんできました。
「いつも一般的な山道を登ってきたけど裏道もいいな」
「思えば会社で登山に誘われていて本当は行きたいけど
苦手な人が独りいるからって断っていたなあ。でも、
苦手っていいつつちゃんと話したことないよね」
「人と深く付き合うとその後が悲しかったり
大変そうだから避けていたけど、
この裏道からの絶景のように
違った景色を見ることができるかもしれないなあ、
実は私結婚したかったのかしら」
悠羽実さんは絶景を眺めながら様々な
感情を味わっています。
悠羽実さんはこれからは物事の
側面だけを見るのではなく
他の角度からも見ていこうと
登山を通じて腑に落ちました。
「闇があって光がわかる。
闇の中にも必ず光がある。
いつも闇だけを探す必要はない。
光を選んでも良い」
悠羽実さんはいつもの登山口で
裏道を教えてくれた父親と同じくらいの
年齢の男性との出会いという
偶然に感謝しました。
【終わり】
皆さまいかがでしたでしょうか。
悠羽実さんは独りで登山をするのが好きでしたが、
今回一般的なルートではなく、過酷な裏道を選択して
闇のルートを進みました。
それでも最後には光の中絶景にたどり着き
大きな感動を得ました。
それによって、今の生き方を変えるきっかけにも
なったようです。
現在、不自由や不安を感じる人生を送っている人が
このブログを読んで少しでも新たな一歩を踏み出してくれる
きっかけになったら嬉しく思っています。
世の中には親切な人は意外といます。
そんな願いを込めて書いています。
何か生きる上でのヒントになりましたら幸いです。
皆さまよろしくお願いいたします。