皆さま

 

散歩をしていると歩いている人が

 

少なくなっていることに気が付きます。

 

世間がお盆に向かっていっていますね。

 

涼しく過ごすことを心がけることにしました。

 

では「道端で起きている幸せを綴る物語」の

第27作目を書いていきたいと思います。

 

「仕事を休んだ彩音さんが道案内をしてもらった物語」

 

彩音さんは30歳前後のバリバリ働いている女性です。

 

彩音さんは出版社で雑誌の編集者として働いています。

 

毎日終電は当たり前で、雑誌の納期に合わせて

 

夜通し働くこともたびたびありました。

 

それでも彩音さんはその仕事をすることで、

 

自分が自立をして雑誌を作ることに誇りを感じていました。

 

しかし、彩音さんも30歳前後となりこのまま

 

忙しい仕事をやり抜く人生でいいのかを

 

うっすらと考え始めていました。

 

しばらくすると彩音さんは残業をしていると

 

胸のあたりが締め付けられる感覚を覚えました。

 

それでも我慢強い彩音さんは、そんなことは

 

気のせいだと思い込んで仕事を休まずに続けたのです。

 

段々と休みの日でも胸のあたりが締め付けられる感覚が

 

出てくるようになりました。

 

彩音さんはその胸の締め付けを

 

さらに仕事をすることで

 

感じないようにするようになります。

 

すると、ある日目が覚めると

 

胸の締め付けだけだったものが、

 

全身を締め付けるような感覚がありました。

 

動きたくても動けない、考えたくても考えられなくなりました。

 

この日は会社では雑誌の最終的な校了作業があります。

 

これを終えないと雑誌は印刷することができません。

 

彩音さんはもう残されていない気力で起き上がろうとします。

 

しかし、彩音さんは動くことができません。

 

彩音さんにできることは、上司に

 

「今日は体調が悪いのでお休みします」と

 

メールを送ることだけでした。

 

そうして、そのまま意識を失うように

 

ベッドで眠っています。

 

夕方くらいに意識が戻るように目が覚めると

 

身体を動かすことはできました。

 

彩音さんは今朝の出来事を思い出し不安になります。

 

しばらくの間、彩音さんは天井を見上げていました。

 

時間が経つと彩音さんはなぜだか外に出たくなります。

 

胸の締め付けはあるものの、外を歩くことにしました。

 

とにかく目的地を決めずに彩音さんはひたすら歩きました。

 

歩いている途中、彩音さんの脳内なのか胸の中なのか

 

色々な思いが浮かび上がって来ました。

 

「幸せってなんなんだろう」

 

「仕事ってこんなに大変なものなの」

 

「誰も助けてはくれないよね」

 

「このまま生きているのって辛いな」

 

彩音さんにとってはポジティブに考えることしか

 

今までの人生でありえなかったのです。

 

ネガティヴな思いは無いものとして生きてきました。

 

彩音さんは自分に湧きあがるネガティブな思いに

 

自分でも驚いていますし、

 

どうしたらよいのかわからなくなります。

 

それでも歩き続けていると、知らない街まで来てしまったようです。

 

ネガティヴな思いに埋もれていることもあり、さらに不安になります。

 

そんな状況でしたが、彩音さんははっきりとこう思いました。

 

「これからは誰かの役に立つ生き方を目指したい」

 

この時の彩音さんは自分でもなぜこんな思いが

 

出てきたのかはわかりませんでした。

 

本音では今、自分が辛くてそんなことを考えられる

 

状況ではなかったからです。

 

それでも彩音さんの締め付けられる胸の中に

 

小さな種を植えたような気がしました。

 

道に迷ってしまった彩音さんが

 

キョロキョロとしながら歩いていると、

 

目の前から車いすを押す彩音さんより

 

10歳近く若いポロシャツ姿の女性が

 

歩いてきました。

 

「何かお困りですか?」ポロシャツ姿の女性が彩音さんに声をかけます。

 

「あ、いえ、その散歩していたら知らない場所まで来てしまって・・・」

 

ポロシャツ姿の女性は彩音さんに道を教えてくれます。

 

彩音さんは自分より10歳近く若いポロシャツ姿の女性が

 

とても輝いて見えました。

 

彩音さんはその女性と話したくなり、少しの間話したのです。

 

その女性はやはり介護の仕事をしていました。

 

そのやりがいを尋ねると女性は

 

「人の役に立てると実感できる仕事だから」と

 

真っ直ぐな瞳で彩音さんに答えました。

 

彩音さんは心のどこかで介護の仕事をしている人を

 

少し下に見ていた自分を恥じました。

 

「この女性は自分の心に従って働いているだけなんだ」と

 

彩音さんは腑に落ちたのです。

 

そうして、彩音さんは自分も先ほどふと感じた

 

「これからは誰かの役に立つ生き方を目指したい」という

 

想いを大事にして生きていこうと

 

締めつけられていた胸をさすりながら

 

決意しました。

 

本当に実現できるかその時の彩音さんには

 

自身はありませんでしたが、確かな一歩になったように

 

自分でも感じています。

 

彩音さんは介護の仕事をしている

 

10歳近くは若いであろうポロシャツ姿の

 

女性との出会いという偶然に感謝しました。

 

【終わり】

 

皆さまいかがでしたでしょうか。

 

彩音さんはバリバリ働きながらも

 

どこかで違和感を感じていたのですね。

 

もともとの我慢強さもあってか

 

心身に症状が出始めました。

 

それでもポロシャツ姿の女性との出会いで

 

時間はかかるかもしれませんが、

 

自分らしく生きられる方角に

 

方向転換をすることができたように思います。

 

意外と道端には良い人もいますし、幸せを

見つけることができるものなんですね。

 

現在、不自由や不安を感じる人生を送っている人が

このブログを読んで少しでも新たな一歩を踏み出してくれる

きっかけになったら嬉しく思っています。

世の中には親切な人は意外といます。

そんな願いを込めて書いています。

 

何か生きる上でのヒントになりましたら幸いです。

 

皆さまよろしくお願いいたします。