皆さま
ここのところの都内の天気の良さには
驚きであります。
なんだかどこか旅行にでも
出かけたくなりますね。
では「道端で起きている幸せを綴る物語」の
第25作目を書いていきたいと思います。
「美術館に行きたい凛子さんが道案内をしてもらった物語」
凛子さんは20歳代の女性です。
普段はスーツを着てオフィス街を
背筋を伸ばして綺麗に歩いています。
凛子さんは仕事を頑張っていました。
上司からの評価も良かったし、
周囲の同級生より給料にも恵まれています。
そんな凛子さんですが、実は週末のお休みになると
疲れきっていて遅くまで眠って過ごしていました。
そして、数か月に一度心身の疲れがピークに達する、
そんな生活を繰り返していました。
この日も数か月に一度の心身の疲れのピークの日でした。
そんな日は決まって、凛子さんは美術館に出かけます。
凛子さんは絵を描くのも観るのも好きなのです。
どうしても観たい絵があり、少し遠いですが
電車を乗り継いで美術館に向かいます。
駅に着いたものの土地勘のない凛子さんは、
どちらに進んでいいかわかりませんでした。
誰かに聞こうとあたりを見回しますが、
オフィス街と違って人の数はまばらです。
そうしながら歩いていると座っている男性を
凛子さんは見つけます。
近づいてみるとその男性は絵を描いていました。
凛子さんはそっとその絵を覗き見ます。
すると、その絵はそこから見える風景ではなく、
凛子さんには「優しさ」や「自由」といったものを
感じ取ることのできる、心打つ作品に見えました。
そう思った途端に、凛子さんはその絵描きの男性に
声をかけます。
「絵を描いているところすみません」
絵描きの男性は筆を止めて、凛子さんに向き直ります。
絵描きの男性は嬉しいのか笑顔でした。
「このあたりに美術館があると聞いたのですが、
どこにあるか教えてもらえませんか?」
すると絵描きの男性は何かを伝えたそうに凛子さんに眼差しを送ります。
凛子さんはしばらくの間、待ちます。
絵描きの男性は置いていた鞄をゴソゴソと探っています。
そうして、手帳のようなものを凛子さんに見せました。
凛子さんは大きくうなずいています。
その手帳は障害者手帳でした。
凛子さんは申し訳ない気持ちになりました。
「すみませんでした」と言って、立ち去ろうとすると
「まあまあ待て待て」と言わんばかりに、
絵描きの男性は描いていた絵を大きな鞄にしまい始めます。
絵描きの男性はさらなる笑顔で凛子さんを見ていました。
「一緒に行ってくれるんですか?」凛子さんはそう理解したのです。
絵描きの男性は美術館まで迷うことなく凛子さんを連れていってくれました。
凛子さんには絵描きの男性がとても輝いて見えます。
美術館に着くと絵描きの男性は美術館の人たちとも
知り合いのようでした。
美術館の館長から
「初めてならこの人と一緒に観て回ると面白いですよ。
教えるのがとっても上手なんです」と
凛子さんは言われて、せっかくなので一緒に観て回りました。
絵描きの男性は独特の表現で絵のことを教えてくれました。
絵描きの男性はさらに輝いて見えます。
教えてくれたことは、凛子さんの心に深く残りました。
凛子さんは深くお礼の気持ちを絵描きの男性に伝えます。
それと同時に世の中にはこの絵描きの男性のように
才能あふれる障害者手帳を持っている人がたくさん
いるのではないかと凛子さんは思いました。
そうして数日後、いつものオフィス街に戻ると
凛子さんは一つの決意をするのです。
「障害者と言われる人たちが活躍できる
絵を描く学校を作ろう。あの街で会った
教えるのが上手な絵描きの男性に
まずは講師になってもらおう」
それからの凛子さんはオフィス街で
無理して背筋を伸ばして歩くことを
やめました。
仕事も必要以上に頑張りすぎることも
やめました。
すると週末も活き活きと生活することが
できるようになったのです。
その時間を利用して、絵の学校を作るための
情報を集めていきました。
そうして、凛子さんは空を見上げて感じます。
少し遠いけど行った美術館、
その駅前で会った絵描きの男性との出会い、
様々な偶然に感謝したのです。
【終わり】
皆さまいかがでしたでしょうか。
凛子さんは好きだった絵をきっかけに
自分の夢をみつけたようです。
それは偶然行った街で会った
絵描きの男性が道案内してくれたから
かもしれません。
意外なところから自分の夢は
見つかるのですね。
意外と道端には良い人もいますし、幸せを
見つけることができるものなんですね。
現在、不自由や不安を感じる人生を送っている人が
このブログを読んで少しでも新たな一歩を踏み出してくれる
きっかけになったら嬉しく思っています。
世の中には親切な人は意外といます。
そんな願いを込めて書いています。
何か生きる上でのヒントになりましたら幸いです。
皆さまよろしくお願いいたします。