製造業では、人手が余っている工程と、人手が足りない工程が混在していることがよくあります。余っている工程では従業員が“手待ち”状態となり、ただ時間を過ごしているケースも珍しくありません。これは単なる生産上のムダであるだけでなく、従業員にとって大切な人生の時間を奪ってしまうものです。にもかかわらず、この状態を放置している企業は意外と多いのです。

実際にあった事例

ある金属加工の企業を支援した際のことです。この会社では営業活動が不得意な人が多く、製造部門に人員が偏っていました。そこで起きていたのは、次のような現象です。

  • **設計部門(CAD)**は多忙を極めていた。

  • 製造ラインは受注が少なく、従業員が一日中ネットサーフィンをして過ごしていた。

  • 営業部は納入業務に追われ、マーケティング活動は皆無。

つまり「受注がないのに製造部門が人員過剰」「営業が動かない」「課長も放置」という悪循環でした。

最終的に、社長は営業課長を会社都合で退職させ、製造部門の人員削減も実施。そのうえで、設計できる人材を育成し、専任制をやめて複数の工程を担当できる体制を整えた結果、生産効率は大きく改善しました。

工程ごとの偏りが招くムダ

これは一例にすぎませんが、忙しい工程ほど不具合が多発し、「戻り作業」(修理や作り直し)が頻発する傾向があります。その一方で、暇すぎる工程は“手待ち時間”が発生し、コストを無駄にしています。要するに「超多忙なライン」と「暇すぎるライン」が同居しているのです。これこそが大きな経費のムダなのです。

改善のポイント

企業規模によって最適解は異なりますが、基本はシンプルです。

  • 工程スケジュールを全ラインで共有する

  • 余裕のある人員を繁忙工程へ柔軟に振り分ける

これだけで大きな改善につながります。

そのためには工程管理が不可欠です。月次・週次・日次で計画表を作り、注文量の増減に応じて稼働を調整する仕組みをつくりましょう。実際には、この基本すらできていない企業が非常に多いのが現実です。

まずはExcelで構いません。シンプルな工程表を作り、誰でも見られる状態にすることから始めてください。それだけでも生産ラインの効率は格段に向上します。

 

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