事業承継はなぜ難しいのか?後継者が知るべき心理戦の真実
事業承継は、コンサルティング現場で最も依頼が多いテーマのひとつです。
中小企業庁の調査によれば、60歳以上の経営者の半数以上が「後継者未定」と回答しています。つまり、日本の中小企業にとって事業承継は社会全体の課題とも言えるのです。
しかし——。
「事業承継したい」と口では言う社長ほど、実際にはまだ自分が一番できると思っており、なかなか手放せないのが現実です。
典型的な失敗事例
ある製造業のA社では、社長が「来年には息子に社長を譲る」と宣言していました。ところが、いざ後継者が意思決定をすると、必ず横から口を出してしまう。社員たちも「誰の指示を優先すべきか」迷ってしまい、社内が二分されてしまいました。
表向きはバトンを渡したように見えても、実質的には権限が二重化してしまう——これは決して珍しいケースではありません。
本当の問題は「心理」にある
事業承継が難しい最大の理由は、経営の技術論ではなく心理的な葛藤です。
現社長の心理は常に揺れ動きます。
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「後を任せたい」という思い
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「まだ仕事に関わっていたい」という気持ち
この相反する感情のせいで、発言や行動がブレ続けるのです。
一方で、後継者であるあなたは「任されているのに自由に動けない」という板挟み状態になります。ここにこそ最大のストレスが生じます。
コンサルタントを“2名体制”で入れる意味
では、どうすれば事業承継をスムーズに進められるのでしょうか?
私が提案するのは 「コンサルタントを2名体制で入れる」 ことです。
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年長のコンサルタント → 現社長につき、権限移譲プランを提示して合意を取り付ける。
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若手のコンサルタント → 後継者につき、スキルを冷静に分析し、不足があれば補強する。
こうすることで、双方に「自分の味方がいる」という安心感が生まれ、不信感が減ります。
また、両者だけで話す場を極力減らすことも重要です。現社長が感情的になり、後継者が委縮してしまうリスクを避けるためです。
成功に導くプロセス
事業承継を成功させるためには、次の流れが有効です。
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権限移譲プランの提示
現社長に「計画通りに進める」ことを約束してもらう。 -
後継者のスキル分析と補強
現社長が「自分しかできない」と思い込みがちな部分を客観的に検証し、後継者ができることを明確化する。 -
退任セレモニーの実施
社内外に「後継者へ承継した」ことを宣言し、現社長が堂々とバトンを渡す。 -
以降は現場に関与しない仕組み
退任後は原則としてオフィスに来ない流れをつくり、後継者のリーダーシップを確立する。
この「けじめ」をつけることで、後継者が初めて本当の意味で社長になれるのです。
後継者へのメッセージ
事業承継は、社長の問題であると同時に 「後継者の挑戦」 でもあります。
あなたが正しい準備をすれば、社長の影響力を乗り越え、新しい経営を始められます。
「後継者は孤独になりやすい」とよく言われますが、必要なのは正しいサポート体制と味方を得ることです。
本日も読んでいただきありがとうございました。
二代目・後継者の方は、ぜひフォローしてこの学びを一緒に深めていきましょう。