現在支援している企業が、ついに「倒産」という言葉を現実的に検討する段階に入りました。
この会社は、昨年後半に飛び込みで相談してきた中小企業で、自動車関連の部品を製造しています。今期はなんとか黒字で終えることができたものの、トランプ関税の影響により注文がぴたりと止まり、キャッシュフローが急激に悪化してしまいました。
銀行への返済については、メインバンクには一時的な猶予をお願いしたものの、他の支払いは継続し続けるという中途半端な対応をしてしまい、結果として自転車操業の悪化を招いています。
さらに、新規案件獲得のための営業も、営業課長がいるにもかかわらず消極的。
売上の90%以上を依存していた取引先からの発注がなくなり、追い打ちをかけられる形となりました。
社長はもともと技術畑の方で、営業は苦手なのかもしれません。ただ、こちらからの助言をあまり実行に移さなかったことも、大きな要因だと感じています。
さて、本題はここからです。
今回は、この「売上高の90%以上を依存していた取引先」の対応についてお話しします。
資金繰りが限界を迎えた社長に、私は「この主要取引先に、支払いサイトの短縮や追加発注を相談してください」と伝えました。
社長は勇気を出して交渉し、手形60日払いを“現金払い”に変更してもらえることになりました。加えて、直近2ヶ月分の注文も確保。
さらに「この先半年間のオーダー計画を記したレター」も取引先から受け取りました。
しかし、ここで問題が発生します。
このレターは「銀行からのつなぎ融資が前提で、融資が得られない場合は発注しない」という条件付きのものだったんです。
銀行の依頼により取引先に確認したところ、まさにその通りの返答。これにより、社長の心は折れてしまいました。
今以上に借金を増やして自転車操業を続けても、取引先から発注がなければ意味がない。
ただ借金が増えるだけで、いずれ破綻する──そう社長は判断したのです。
ここで思いました。
中堅企業がこうした”保身ファースト”の姿勢をとる限り、中小企業は支えられず、静かに死んでいく。
でも、取引先である中堅企業にとっても、これは決して他人事ではないはずです。
この中小企業は、長年にわたり独自の設計思想を部品に組み込んできました。
倒産すれば、それを理解して製造できる会社が日本から消える。
人手不足の今、代替企業がすぐに見つかるとは思えません。
さらに、設計図も社長は渡さない方針なので、最初から設計し直す必要があり、それは事実上不可能でしょう。
私は思うのです。
経済成長とは誰かを搾取する「Win-Lose」ではなく、双方が得をする「Win-Win」でなければ、持続的に回らない。
それなのに、いまだに“手形払い”を続けている時点で、日本企業は構造的に時代遅れなのではないかと、強く感じざるを得ません。
本日もありがとうございました。