製造業の企業を支援していると、よく「新規事業に向けた設備投資」の相談を受けます。
その中で特に気になるのは、次の2点が曖昧なまま話が進んでいることが多いということです。
■ 投資前に確認すべき2つのこと
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新規事業に明確なマーケットやターゲットが存在するか?
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その設備は、万一新規事業が失敗しても、既存事業で活用できるか?
新しいデジタル機器は非常に魅力的に見えます。メーカーや商社からの提案も華やかで、未来が開けそうな気がしてきますよね。
しかし、その機能が既存事業で全く活かせないケースが意外と多いのです。
■ 実際にあった相談例:高機能印刷機の導入
先日、印刷業を営む企業の社長から、オンデマンド印刷機の導入についてご相談を受けました。
この印刷機は「インビジブル印刷(透かし)」「金箔塗布」など、高付加価値な機能を備えたすぐれもの。
ですが、それだけに月々のメンテナンス費も高額です。
私が社長に質問したのは以下の2点です。
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「その機能は、既存の印刷事業に活かせますか?」
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「新規事業は、成長性のある分野 or 差別化できる市場ですか?」
返ってきた答えはこうでした。
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既存事業では活かせない。
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新規事業の構想は漠然としており、市場も未調査。
■ 投資すべきは“今ある事業の改善”では?
この企業の財務は黒字ですが、原価や人件費の高騰で利益率は3期連続で下落していました。
このような状況下で優先すべきは、「新規事業」ではなく「既存事業の効率化投資」です。
たとえば、生産現場の負荷軽減につながる設備導入を行えば、現場の作業が楽になり、余剰時間が生まれます。
この時間を使って、新規事業のリサーチやアイデア出しができるようになります。
つまり、
既存事業を効率化することで、新規事業の土台ができる。
これが最も着実な成長ステップです。
■ 無用の長物になった“高機能機器”の末路
「えっ」と思われるかもしれませんが、工場の片隅に使われない機械が放置されている現場、本当に多いんです。
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高額で導入したが、使い道がなく放置
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廃棄コストが高くて処分できず、場所だけとっている
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導入した人も既に退職していて、使い方が分からない
こうした“無用の長物”が会社の重荷になっているケース、数えきれません。
■ 投資は企業の未来を左右する“刃”である
投資は企業にとって「未来へのチャンス」であると同時に、「誤れば致命傷」となるリスクもはらんでいます。
計画のない投資は、成長を止めるブレーキになりかねません。
慎重に、そして戦略的に取り組んでいきましょう。
本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。