企業支援をしていると、よく耳にする悩みがあります。
それは「社員が育たない」「熟練工に頼り切りで、先が不安」という声です。
これは中小企業に限った話ではなく、大手企業でも同じです。
多くの経営者が口にするのは、
「最近の若手は未熟で、何も任せられない」
というセリフです。
でも、私はその言葉を聞くと、すかさずこう尋ねます。
「本当に、若手に“仕事を任せた”と言えますか?」
「熟練工は、本気で技術を教えようとしているでしょうか?」
人材育成の基本は、経験を積ませることです。
ところが、日本企業はこの「経験を積ませること」が、驚くほどできていません。
なぜか?
それは、日本社会全体に根強く残る「減点主義」が原因です。
失敗を許さない文化の中では、人は挑戦しなくなります。
挑戦がなければ経験もなく、結果として、人材が育たないのです。
さらに、熟練工が自分のスキルを囲い込み、技術を若手に渡そうとしない構図も見られます。
こうして業務は属人化し、「あの人がいないと回らない」状態ができあがってしまいます。
経営陣が「技術承継が進まない」と嘆いているだけでは、何も変わりません。
もしも熟練工が教えないのなら、若手にサンプル品を作らせて、試行錯誤させてみてください。
熟練工が作る製品を参考にしつつ、あえて同じものを作らせる――
それだけでも、若手は自ら学び、考える力が身につきます。
最初は失敗するかもしれません。でも、それでいいんです。
失敗を重ねることで、若手の中に「考える力」や「工夫する力」が育っていきます。
そして、「失敗してもいい風土」が職場に根づいていくのです。
そもそも、若手に能力がないわけではありません。
「最近の若者は…」という言葉は、しばしば自己承認欲求の裏返しです。
若手に技術や知見を惜しみなく渡す――
その意識を持つだけで、会社は確実に強くなっていきます。
私個人としては、今の若手のほうが、昔より能力が高いと感じています。
ただ、それを伸ばす「機会」や「環境」が圧倒的に不足しているだけなのです。
人が育つ企業は、挑戦を許し、失敗を許す企業です。
そんな企業が増えることで、日本の経済ももっと強くなるはずです。
本日もお読みいただき、ありがとうございました!