「うちの強みは熟練工です」
そんな声を、私はこれまで数多くの企業から聞いてきました。
長年の経験に裏打ちされた技術を持つ職人さんたち。彼らをリスペクトする文化は本当に素晴らしいものです。ですが、その“技術”、きちんと次の世代に引き継げていますか?
承継が進まない、意外な理由
現場ではよくこうした課題を目にします。
「技術を継承したい」と言いながら、実際には属人化されたままになっている。
その背景には、熟練工自身が技術を“囲い込んでしまう”という構造的な問題もあるのです。
「教える時間がない」
「感覚の問題だから説明できない」
そんな言葉を理由に、結局は誰にも教えられないまま退職していく…。
そんな事例、少なくないのではないでしょうか。
技術は本当に“引き継げない”ものなのか?
確かに、日本の伝統工芸のような一部の技術は、継承に時間も手間もかかるかもしれません。
でも、すべての技術がそうでしょうか?
いまは、デジタル機器やAIが驚くほど進化しています。
人の感覚に頼っていた技術も、今なら“見える化”し、データとして再現できる時代です。
たとえば印刷業界では、長年、熟練工の「色合わせ」の技術に頼ってきた企業がありました。
ところが今では、その色調合の感覚を数値化し、デジタル機器で誰でも同じ色が出せるようにしたのです。
あの「獺祭」も、技術のデジタル化で生き残った
有名な事例があります。
それは、日本酒『獺祭』を造る獺祭社さん。
杜氏(酒造りの責任者)が全員いなくなり、会社は大きな危機に直面しました。
しかし彼らは、「人に頼らず、機械で最高の酒を造る」決断をしました。
発酵管理を徹底的に数値化し、機械で微細な調整ができるようにしたことで、
いまの高品質な獺祭が生まれたのです。
これはまさに、熟練の技をデジタルで承継し、企業が生き残った好例です。
「敬意」と「未来」は両立できる
熟練工の技術は、もちろん大切です。
でも、その技術を次世代につなぐ責任も、私たちにはあります。
「すごい技術だ」と口だけのリスペクトをするのではなく、
その技術を“誰でも使える資産”に変えていく。
それが、これからの企業に求められる在り方だと、私は考えています。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
皆さんの会社では、どんな技術が次に継承されるべきでしょうか?
それでは、また次の投稿でお会いしましょう!