「利他主義」といえば、伝説の経営者・稲盛和夫さんの言葉として多くの経営書や講演で語られていますよね。
他人のために尽くすこと、それ自体はとても大切な価値観です。私もその精神そのものを否定するつもりはありません。
ですが、最近強く感じるのは――
多くの中小企業経営者が「利他」を履き違えているのではないかということです。
たとえば、取引先から値下げ要求があった際に、何の交渉もせずにすぐ応じてしまう。
その結果、自社の利益が削られ、従業員に還元もできず、苦しい経営を続けている…。
そして、その利益は取引先やその先の企業だけが享受している――そんな構造が、あちこちで見られます。
これは、本当の意味で「利他」と言えるのでしょうか?
自分を犠牲にする「利他」は、もはや美徳ではない
「利他」は確かに美しい精神です。しかし、自分を犠牲にして成り立つビジネスは、持続可能ではありません。
私はボランティア活動を否定しているわけではありません。
けれども、ビジネスの世界であれば、ボランティア精神よりも「自社の利益」を最優先に考える姿勢が必要だと考えています。
むしろ、利己的に自社の利益を追求することが、結果として他者のためになる。
この「巡り巡って利他になる利己こそ、真のビジネス」だと、私は思います。
価格を守ることは、社会全体の成長にもつながる
たとえば、取引先に安く製品を提供すれば、一見「貢献」しているように見えます。
しかし、それは自社や従業員のビジネス機会を削っている自己犠牲にほかなりません。
適正な価格で販売すれば、取引先もその価格を反映せざるを得ません。
その結果、最終製品の価値が上がり、それが売れれば経済全体が成長します。
自社も潤い、取引先も潤い、そして社会も活性化する――まさに「三方良し」の経営ですよね。
もちろん、値下げを受け入れる場面があっても良いと思います。
ただしそれは、「別のビジネスで必ず返してもらえる」という確かな戦略がある場合に限るべきです。
利他とは、利己があってこそ成立する
利他主義という言葉は確かに美しく、耳障りも良いです。
しかし、その土台に「健全な利己」がなければ、単なる自己犠牲に陥ってしまいます。
中小企業こそ、「まず自分たちがしっかり潤う」ことを最優先に考えるべきです。
それが結果的に取引先や顧客、社会全体に還元される。
利己から始まり、利他につながる経営こそ、これからの時代に求められる姿勢だと、私は信じています。
本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
この記事が少しでも「経営の軸」を見つめ直すきっかけになれば嬉しいです。
それでは、またお会いしましょう!