見積もりの「原価明細を出せ」にどう対応するか?
みなさんは、例えば製造業などで取引先に見積もりを提出した際に、原価の内訳――材料費、外注費、販管費など――を開示するよう求められたことはありませんか?
私もサラリーマン時代、大手メーカーの購買担当者から何度もこうした依頼を受けた経験があります。最初に言われたときは、「何を言ってるんだろう?」と思いました。そんな詳細な原価を開示すれば、こちらの利益率が丸裸になってしまい、もはやビジネスではなくなってしまいます。
なぜ大手メーカーは原価明細を求めるのか?
しかし、後になって調べてみると、大手メーカー側にも苦労があることがわかりました。特に、国の機関や地方自治体に見積もりを提出する際には、こうした原価の詳細が求められるケースがあるようです。
以前、私が関わった案件では、国の機関と直接交渉する機会がありました。当時、国の機関のトップファイブにいた方々と話す機会があり、なぜこのような慣習が続いているのかを聞いてみました。結論としては、「昔からの慣習が根強く残っており、急には変えられない」というのが実情でした。
とはいえ、原価をそのまま詳細に開示するのは現実的ではありません。そのため、当時の私は、それぞれの項目に自社独自の計算レートをかけ、社内基準に基づいた金額でまとめたうえで、「これは参考値であり、社内レートを適用している」という旨の説明を添えて対応した記憶があります。
原価の開示は本当に必要なのか?
最近、私が支援している企業でも、取引先の大手メーカーから「原価の詳細を開示してほしい」という依頼がありました。担当者に話を聞くと、社内で「なぜ見積額が上がったのか」を説明するために必要だということでした。
しかし、私はその支援先に対して、「この依頼には応じる必要はない」とアドバイスしました。鉄や銅などの素材価格、人件費や光熱費の上昇率は公表されているデータがあるため、それを元に説明すれば十分だからです。自社の原価情報を細かく出す必要はなく、むしろ取引関係を見直す機会にすべきです。
「正直者がバカを見る」時代を終わらせよう
日本の企業には、まだまだ「昔からの慣習」が色濃く残っています。その結果、正直に対応すると損をしてしまうケースも少なくありません。しかし、見積もりは原価の積み上げで決まるものではなく、市場価格や提供する価値によって決まるものです。
「見積の原価を明確にしろ!」といった横柄な要求には、毅然とした態度で対応しましょう。こうした慣習を変えることが、企業の意識改革の第一歩になるかもしれません。取引先との関係性を見直し、公正なビジネスを築いていくことが、長期的な成長につながるのではないでしょうか?
本日も最後まで読んでいただきありがとうございました!ではまた会いましょう!