ビジョンなき経営は迷走する

「経営にビジョンがない。社長や本部長がビジョンを示すべきだ!」
かつて、こんなセリフを偉そうに口にしていた同僚や後輩を思い出します。当時は「何を偉そうに」と内心思っていましたが、今、様々な企業を支援する中で気づきました。この言葉、意外と的を射ていたのです。


創業の情熱が失われるとき

経営ビジョンとは、「将来どのような企業を目指すのか」という情熱的な計画のことです。創業者にはこの情熱が宿っているものですが、2代目、3代目と代を重ねるごとに薄れていくケースが少なくありません。ただ前代のやり方を踏襲するだけ、あるいは惰性で経営を続けている場合も見受けられます。

さらに、雇われ社長の場合、その情熱は一層希薄です。改革と称して表面的な施策を打ち出すものの、組織が混乱するだけで終わるケースを数多く見てきました。


ビジョンの重要性を再認識する

しかし、経営ビジョンはやはり社長自身が決めるべきものです。そして、そのビジョンが情熱的で明確であればあるほど、従業員がその熱意に感化され、企業全体が一つの方向に進みやすくなります。

例えば、ある金属製品加工会社の例です。この企業は「日本の金属製品に高い加工力で付加価値を与え、製造業界を牽引する」というビジョンを掲げていました。ある時、旅行業の需要が高まったため、旅行商品を手がける提案が社内から出ました。しかし、最終的にその案は却下されました。その理由は明快です。「旅行業は、当社のビジョンには含まれない」。こうした判断ができるのは、経営ビジョンが明確に定められているからこそです。


かっこよさよりも明確さを

繰り返しになりますが、ビジョンはトップである社長が定めるべきものです。そして、「かっこよさ」は必要ありません。どのような方向に進むのか、どのような情熱を持っているのかを、明確に表現すれば十分です。それが、企業全体を強くする第一歩となります。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。また次回の記事でお会いしましょう!