中小企業を支援していると、よく聞くのが「人材が集まらない」という声です。確かに、現在は多くの企業が人材不足に悩んでいます。しかし、本当に「人を採用すること」が最優先なのでしょうか?


私が考える「人材」とは、「人財」になり得る人のことです。ただ単に環境を整えたり、無理にアピールをしても、本当に必要な人材は集まりません。むしろ、適切でない人を採用する方が、企業にとってリスクが大きいと支援先にもお話ししています。

 

現在のメディアは「人手不足」を大きく取り上げていますが、その影響を受け、多くの企業が焦って人材確保に動いている印象を受けます。その結果、ミスマッチな採用が増えているようです。私が以前勤めていた大手企業でも、人事制度の改革を大手コンサル会社に依頼したものの、その影響で優秀な社員が次々と辞め、残ったのは成果をあげにくい人材ばかりという状況に陥っていました。

人材採用は確かに難しい課題です。しかし、採用自体が目的化してしまうのは本末転倒です。特に中小企業では、不適切な人材を採用してしまうと、解雇の難しさやその後の対応が経営に重くのしかかります。そのため、まずは「成長志向の社風」を醸成することが重要です。健全な社風が整えば、人材は自然と集まるものです。焦って人を雇うよりも、デジタル化や既存の生産・サービスの質の向上に注力すべきです。

 

優秀な人材は実はすでに「在野」に埋もれていることも多いです。例えば、ある支援先の企業では、パートとして採用した人が非常に優秀で驚いたという話がありました。ただ、その方がパート勤務を希望しており、社員登用が難しいという相談を受けたこともあります。この企業は、すでに良好な社風ができているため、次のステップとして「人事制度改革」を進めることをお勧めしました。特に女性が働きやすい環境を整備すれば、大きな成長が見込めるはずです。女性の視点や感覚は、企業の発展にとって欠かせない要素ですが、子育てなどの事情を抱える女性が多い現状では、それを支える制度づくりが必要です。

 

中小企業こそ、人材採用には慎重であるべきです。まずは自社の社風を見直し、改革に取り組むことが第一歩です。また、一般的なコンサルティングが勧める人事制度をそのまま導入するだけでは、かえって逆効果になることもあります。「働きやすい環境」を整えることこそが、採用活動の成功への近道です。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。また次回お会いしましょう。