フォトリーディング――一時期、速読の手法の一つとして講座が非常に人気を集めていましたよね。実は私も管理職で迷走していた時期に、「何か行動を起こさなければ」と思い立ちました。そして、読書スピードを上げて他人より多くの情報を得られれば、自分も「勝ち組」になれるのではないかと考え、有名講師の講座に10万円を支払って受講しました。

 

フォトリーディングは「本をペラペラめくることで、ページを頭に写真のように記憶し、本の内容が映像としてそのまま残る」といった表現がされることもあります。しかし、実際に講座を受けてみると、そんな能力は簡単には身に付きませんでした。イギリスに留学していた際、料理をしながら教科書をパラパラめくるだけで内容を記憶できる天才が数人いて驚いたことがあります。彼らは、文章を声に出さず、画像として見る習慣があるようで、「こういう人たちにはフォトリーディングの技術が備わっているのかもしれないな」と思ったものです。

 

講座ではまず、本の目次などを読んで、この本を読む目的を明確にすることから始めます。その後、全ページをぼんやりと文字が読めない程度に俯瞰して眺めます。ここでは内容を覚える必要はなく、「とりあえず全体をざっと見る」という工程です。その後、改めて本をパラパラとめくり、気になる箇所に線を引きます。最後にマインドマップを作成して内容を整理します。このプロセスを経ることで、本を速読する仕組みが完成するというものでした。

 

特に重要だと言われていたのが、最初の「ぼんやりと文字を見る工程」です。先生曰く、「自動車を運転していて、何気なく見た道を『どこかで見たことがある』と感じることがありますよね。それは、景色が無意識のうちに取り込まれているからなんです。この最初の工程では、それを本で行うのです」と説明していたのが印象的でした。

では、フォトリーディングは本の内容を写真のように記憶し、後から自在に引き出せるスキルなのでしょうか?私の結論としては、それはできませんでした。そのため、講座を受けただけでこの技術をマスターできる人は相当少ないのではないかと考えています。ただし、訓練を重ねれば習得できる可能性もあるのかもしれません。

 

私がこの講座で得られた最大の成果は、読書スピードと理解力の向上でした。フォトリーディングのプロセスを丁寧に実践することで、本の内容を写真のように記憶することはできませんでしたが、たとえば「この本を10分で読んで要約してください」というタスクには対応できるスピード感が身につきました。もちろん、完全に理解するためには何度か読み直す必要があるので、1冊をしっかり理解するには1時間ほどかかります。それでも、読書スピードが飛躍的に向上したため、フォトリーディングそのものをマスターしていないにもかかわらず、講座の効果は高かったと今でも信じています。

もう一つ、講座の中で先生が印象的なことをおっしゃっていました。「本の細部をすべて覚える必要はありません。なぜなら、本のすべてが重要というわけではなく、大切なのは本の中のキーポイントだからです」と。確かに、本から得たい情報は、途中のつなぎの話ではなく核心部分です。時間のない人にとって、このアプローチは非常に役立つものだと感じました。

本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。それでは、またお会いしましょう。