映画「エイリアン ロムルス」…正統派の「1」と「2」の隙間作品. | チャコティの副長日誌

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原題:Alien : Romulus 製作年:2024年
制作国:アメリカ 上映時間:119分



エイリアンと名が付けばB級含め全て観ないと気が済まない(笑).
本作はリドリー・スコットが製作をも務め、1979年の「エイリアン」
その後を描く“正統派”の後継作として位置付けされるという前提
で興味深い.自宅近所のシネコンで本年度累積189本目の鑑賞.
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リドリー・スコット監督による1979年の傑作「エイリアン」の
“その後”を舞台に、エイリアンの恐怖に遭遇した若者たちの
運命を描くSFサバイバルスリラー.
「ドント・ブリーズ」のフェデ・アルバレスがメガホンをとり、
リドリー・スコットは製作を手がけた.

人生の行き場を失った6人の若者たちは、廃墟と化した宇宙
ステーション「ロムルス」を発見し、生きる希望を求めて探索を
開始する.しかしそこで彼らを待ち受けていたのは、人間に寄生
して異常な速さで進化する恐怖の生命体・エイリアンだった.

その血液はすべての物質を溶かすほど強力な酸性であるため、
攻撃することはできない。逃げ場のない宇宙空間で、次々と
襲い来るエイリアンに翻弄され極限状態に追い詰められていく
6人だったが…….

出演は「プリシラ」のケイリー・スピーニー、「ライ・レーン」の
デビッド・ジョンソン、「もうひとりのゾーイ」のアーチー・ルノー、
「マダム・ウェブ」のイザベラ・メルセドら.

以上は《映画.COM》から転載.
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「エイリアン」は1979年に初作が公開されたSFホラーシリーズ.
近未来世界を舞台に商業用宇宙船ノストロモ号が遭遇した
地球外生命体「ゼノモーフ」とそれに襲われ無惨に殺されていく
人間たちを巡るサバイバルホラー.

1986年の「2」はジェームズ・キャメロン監督にスイッチし巧みな
撮影技術を駆使しゼノモーフ達の生態により踏み込み哲学的な
仕上がりになり、ヒロイン・リプリー:シガニー・ウィーバーが戦った.

スピンオフや前日譚を含めると9作?も作られているシリーズ.
本家リドリー・スコット監督による前日譚「プロメテウス」2012年
と2017年公開の「エイリアン コヴェナント」は正統派?かも.

本作ではリドリー・スコットは制作にまわり、「ドント・ブリーズ」の
実績を買われてフェデ・アルバレス監督の採用.同監督は
オリジナルの「エイリアン」ファンだそうで、至る所にその
リスペクトが現れていた.
 

 

物語の時代背景は第1作目から約20年後、若きレイン:ケイリー・
スピーニーは親の代から引き続き、移住した惑星での過酷な
採掘作業を背負って生きている.労働環境は最悪.

企業は彼らの命を何とも思ってはいない.この希望の持てない
暮らしの中、彼女はいつかアンドロイドの弟アンディ:デビッド・
ジョンソンと憧れの惑星ユヴァーガを目指すことだけを夢見ている.

そんな矢先に仲間から、頭上に浮かぶ廃墟化した宇宙ステーション
(ロムルスとレムスという2つのブロックから成る)で装置や船を
奪取して、一緒にユヴァーガへ旅立とうと提案される.
そのロムルスで待ち受け居たものは….

宇宙船の内部が第一作目の「ノストロモ号」のそれを思わせるもの
で、リスペクト感が十二分に伝わってくる(笑).コールド・スリープの
技術があるにも関わらず、モニターがブラウン管スタイルであり、
計器類も古めかしい物だったのまで、79年当時の状況が再現
されている.「マザー」が起動したときの音には感動の涙が…(笑).

ロムルス内には「エイリアン」でリプリーが宇宙に放出したエイリアン
の死体がウェイランド社により回収されて(ノストロモ号の廃船も映る)
フェイスハガーが36体も生体標本化されており、エキスも抽出
されている.そして、ロムルスの乗員はエイリアンにより全滅していた.

ロムルスに乗り込んだ6人にフェイスハガーの群れが、そして
エイリアンが襲いかかる.
本作は原点に立ち返った様に、SFホラー映画として確実に再現
されている.未知の場所で未知の物と出会うという基本ストーリーは
同じだが、新たな基軸みたいなものも追加されている.

体温を感知して襲い来るフェイスハガーに気付かれぬ様に室温と
体温を均一にし、「少しでも体温が上がれば殺られる」という中で
進むシーン等は監督の「ドント・ブリーズ」そのものの再現を感じた.

この時の焦燥感や緊張感はホラーそのもの.鳥肌が立ち、汗が
垂れるという体温に明らかな変化が生じ、誰もがまずいと思う
このシーン、この辺の描写はやはり上手い.

間欠的にロムルス内で発生する無重力の中を漂う強酸性の
血液の中を潜り抜けたりと、「そうきたか!」と思わせるような
新たな見せ場もまた楽しめる仕組みになっている.

ヒロイン、レイン:ケイリー・スピーニーは小柄ながらもその
存在感は確実で魅せる演技で大活躍だ.前出演作「プリシラ」
を観落としたのがくれぐれも残念な感がある.

「1」と「2」に出演したリプリー:シガニー・ウィーバーもそうで
あったが、女性キャラが際立つこのシリーズでは彼女の出世作
となった.ケイリー・スピーニーは、今後の役者人生でも、
シガニー・ウィーバーを越えられるだろうか?

もう一つこのシリーズで欠かせないのは、アンドロイドの存在と
役割.本作ではレインの弟アンディ:デビッド・ジョンソンがそれ
なのだが、途中でメモリーを書き換えられたりして、姉を守る
使命がウェイランド社の利益最優先になってしまったりして、
その位置付けがあやふやの感有り.

それに比して、ロムルス内にうち捨てられた上半身だけの
破損アンドロイドの容姿が「1」に出てくるアンドロイド:アッシュ
そのもので、その存在感と最期までウェイランド社につくす
役割をまっとうするのが、そら恐ろしいというかおぞましい役で
あった.

もう一つ盛り込まれた新機軸は、比較的最期の方まで生き
延びた妊婦:イザベラ・メルセドがウェイランド社が作り出した
血清を自らに注射してしまい、生み出してしまったエイリアン
もどきのクリーチャーがラスボス化すること.

これが、人間とエイリアンのハイブリッド化された生き物で、
怖くもなければ、ただただ醜い人間態の生き物.これは
いけてなかったなぁ.安易で完全な失敗作の感有り.
クリーチャーとしての魅力も皆無だ.
むろん必死のレインにあって、「1」の様な最期を迎えて
しまうのだけど.この設定は唯一残念な部分であった.

本作は79年公開の「エイリアン」と86年公開の「エイリアン2」の
間をつなぐ作品であるが、フェデ・アルバレス監督らしい部分と、
シリーズの生みの親であるリドリー・スコットらしい部分が上手く
混じり合えた、新たな恐怖が誕生した物語とはなっている.