映画「劇場版 モノノ怪 唐傘」…驚く、唯一無二の映像美. | チャコティの副長日誌

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主役になれない人生を送るおじさんの心の日記.
猫と映画、絵画、写真、音楽、そしてF1をこよなく愛する暇人.
しばし副長の心の彷徨にお付き合いを….



製作年:2024年 製作国:日本  上映時間:89分


先週、今週と、ほんとに観たい映画が無くて、いよいよ余り手を出さない
アニメにまで手を出す(笑).ちょっと観は映像が綺麗そうなので、前情報も
確認せずにMovix柏の葉で本年度累積173本目に観賞したのは邦製アニメ.
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2006年にフジテレビの「ノイタミナ」枠で放送されたオムニバスアニメ
「怪 ayakashi」の一編「化猫」から派生し、07年にテレビアニメシリーズと
して放送され話題を集めた「モノノ怪」の劇場版.
江戸時代をモチーフにした世界を舞台に、主人公の薬売りがさまざまな
怪異に対峙する姿を描く和製ホラーアニメ.

男子禁制の“女の園”であり、重要な官僚機構でもある場所・大奥.
この場所でキャリアアップを図ろうとする新人女中のアサと、同じく新人女中
で大奥に夢を求めるカメは、着任早々、集団に染まるための“儀式”に参加
させられる.

御年寄の歌山は大奥の繁栄と永続を第一に考えて女中たちをまとめあげるが、
無表情な顔の裏に何かを隠している.そんな中、彼女たちを少しずつ“何か”が
覆っていき、ある日決定的な悲劇が起こる.モノノ怪を追って大奥の中心部まで
足を踏み入れた薬売りは、やがて大奥に隠された恐ろしくも切ない真実に
たどり着く.

主人公・薬売りの声を人気声優の神谷浩史が演じるほか、3人の女中役で
黒沢ともよ、悠木碧、小山茉美が声の出演.
シリーズの生みの親である中村健治がテレビ版に続いて監督を務めた.

以上は《映画.COM》から転載.
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オリジナルのTVアニメはまったく未見.惜しいことをしたものだ.
「江戸時代をモチーフにした世界で、人の情念や怨念がアヤカシに憑りつくと
生まれる“モノノ怪”の引き起こす怪異に、主人公の薬売りが対峙する姿を描く.

映画の舞台は、男子禁制の“女の園”であり、重要な官僚機構でもある場所・
大奥.2人の新人女中・アサとカメが入ったばかりの大奥で、数日後にも餅引き
の儀式を控える最中、奇妙な事件が発生.あやかしの仕業とみて薬売りが
退治に動く.
 

 

物語は決して理解しやすいわけではないが、説明過剰にせずに観客を
信頼する作り方.まず圧倒的な映像の世界に目を奪われる.まるで絵巻物の
ような豪華絢爛な美術に、CGと和紙テクスチャを組み合わせた斬新な手法.

地紋に和紙テクスチャが載せてあり、これが全画に和紙に描かれたような
風合いを感じさせる、紙の皺までガッツリ入り、キャラクターの目に皺がかかる
箇所もあるほど.これがかなり印象的だ.紙に描かれた絵が動いているという独特
の感覚を味わわせてくれる.

 

 

膨大なカット数と独自の色遣いにより生み出される唯一無二の映像美は、
本作の一番の見どころ.浮世絵を動かすというコンセプトで、奥行きをなくし
ながらも空間を感じさせるのが見事だ.

これはは映画館での鑑賞しかありえないであろう.ちまちました画面の上では
この快感は1/10も味わえないであろう.

場面転換がとても多く、話の展開がとにかく早い.話の切り替えの時に襖が
「バンッ」と閉まるのがメリハリがついていると感じた.
舞台自体は大奥の館がメインで箱庭的な感じで進んでいく.それでも内部で
雨だったり雲だったり、カラフルさや襖に映るおどろおどろしい色合いだったり、
妄想と現実が入り乱れるような場所の転換だったりと、アニメーションらしい
手法で、縦横無尽に暴れまくっている感じが良い.
 

 

内容的には、大奥での女性の蔑ろにされていた部分というよりかは、女性同士
の立場での嫉妬や蹴落とし合いが強く描かれており、ホラー味はそれ程でも無く、
ファンタジー色が強くて、物語自体はシンプルなのかも知れない.

アイナ・ジ・エンドの歌う主題歌もそれなりの出来で好ましい.
なんと、劇場版は3部作だそう.次作「火鼠」は2025年3月14日公開が
もう既に決まっているそう. これは観るしかないな….