映画「朽ちないサクラ」 …公安の実態怖すぎる. | チャコティの副長日誌

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主役になれない人生を送るおじさんの心の日記.
猫と映画、絵画、写真、音楽、そしてF1をこよなく愛する暇人.
しばし副長の心の彷徨にお付き合いを….



製作年:2024年 製作国:日本 上映時間:119分

 

 

この所好ましい演技をみせる杉咲花主演の作品を観ようと.
TOHO柏で観たのは本年度累積143本目.
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「孤狼の血」シリーズの柚月裕子による警察ミステリー小説を杉咲花の主演
で映画化.杉咲演じる県警の広報職員が、親友の変死事件の謎を独自に
調査する中で、事件の真相と公安警察の存在に迫っていくサスペンスミステリー.

たび重なるストーカー被害を受けていた愛知県平井市在住の女子大生が、
神社の長男に殺害された.女子大生からの被害届の受理を先延ばしにした
警察が、その間に慰安旅行に行っていたことが地元新聞のスクープ記事で
明らかになる.

県警広報広聴課の森口泉は、親友の新聞記者・津村千佳が記事にしたと
疑うが、身の潔白を証明しようとした千佳は一週間後に変死体で発見される.
後悔の念に突き動かされた泉は、捜査する立場にないにもかかわらず、
千佳を殺した犯人を自らの手で捕まえることを誓うが…….

泉役を杉咲が演じるほか、安田顕、萩原利久、豊原功補らが顔をそろえる.
監督は「帰ってきた あぶない刑事」の監督に抜てきされた原廣利.

以上は《映画.COM》から転載.
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先ずは原作がしっかりしていることが頼もしい.親友の死に責任と後悔をもちつつ、
捜査権をもたないただの女性職員が謎解きの主人公となるプロットが面白い.
内容的にも、新聞記者の怪死、ストーカー殺人、そしてカルト宗教団体がかつて
起こした毒ガステロ事件を盛り込んで、物語に現実感を与えてある.

杉咲花が演じる主人公・泉は親友の死に責任と後悔を抱きつつ、元公安刑事の
広報広聴課長・富樫;安田顕や捜査一課長・梶山:豊原功補の協力を得ながら、
事件の大きな闇に隠された真相に迫っていく.泉を手伝う若手刑事・磯川:萩原利久
とのほのかな恋慕の雰囲気も悪くは無い味付けだ.

警察用語では“サクラ”とは公安を指すそう.同じように“S”とはスパイを指すそうで、
そんな専門用語が飛び交うのは多少の違和感がある.
そんな“サクラ”に引っかけたのだろうが、各シーンごとにさくら風景がモチーフで
使われていて、さくら好きとしてはこたえられない感動があった.
 

 

巨悪(カルト宗教団体)を暴く為には小悪は見逃すとか、警察は起きてしまった
殺人事件を捜査するが、公安警察は事件を未然に防ぐのが任務で、その為の
多少の犠牲は許される…という公安関係者の発言が本物語の本質を捉えている.

改めて“公安”の得体の知れ無さとその行動の不透明性には驚かされる.
題名の「朽ちないサクラ」自体が全てを物語っているのだと今さらながら気付く.

杉咲花、安田顕、豊原功補という主要な3人の確かな演技が本作の大きな
魅力であろう.豊原の厳しさと優しさの緩急ある演技は心温まる演技ではある.
が、最後の笑わない演技の安田と杉咲の演技のぶつかり合いが凄い.
 

 

上司:安田顕と部下である泉:杉咲花の妄想(真相?)について語るシーンが
本作のクライマックスであろう.ひとまずの一件落着を見て二人で静かな料亭で
杯を傾け合うシーン.

真相?を問い詰めていく泉と、徐々に目力が変わっていく上司….なんと緊張感
溢れるシーンであろう.まさにこの作品の肝であろう.この部分のために全てが
あったと言っても過言ではない.安田顕、過去最高の演技を魅せてくれた.

“正義”である警察組織がときには「悪行を成す」. しかも、この悪行が巡っていくと、
結果的に“日本を守る”という深いテーマを描いている….
この複雑かつ巧妙なテーマ設定が、これまでの“警察映画”とは大きく異なる
ポイントになっており、本作の持つ魅力であろう.

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