映画「蛇の道」…柴咲コウの新たな魅力発見! | チャコティの副長日誌

チャコティの副長日誌

主役になれない人生を送るおじさんの心の日記.
猫と映画、絵画、写真、音楽、そしてF1をこよなく愛する暇人.
しばし副長の心の彷徨にお付き合いを….



原題:Le chemin du serpent 製作年:2024年 上映時間:113分
製作国:フランス・日本・ベルギー・ルクセンブルグ合作



黒沢清監督は好きな部類の監督.1998年の「蛇の道」は未見なれど、
今回のリメイクはなんと大好きな柴咲コウが主演と言うではないか.
飛びつくように、公開初日にMovixつくばで本年度134本目の鑑賞.
———————————————————

「岸辺の旅」「スパイの妻」の黒沢清監督が柴咲コウを主演に迎え、
1998年に手がけた同名映画をフランスに舞台を移してセルフリメイク
したリベンジサスペンス.
娘を殺された父親と彼に手を貸す精神科医が繰り広げる徹底した復讐の
行方を、全編フランスロケ&フランス語で描き出す.

8歳の愛娘を何者かに惨殺された父親アルベール・バシュレは、偶然
知り合った精神科医・新島小夜子の助けを借りながら、犯人を突き止めて
復讐を果たすべく殺意を燃やしていた.やがて2人はとある財団の関係者
たちを拉致し、次第に真相が明らかになっていくが…….

他人の復讐に協力する謎めいた精神科医という難しい役どころを柴咲が
フランス語で熱演し、2019年のフランス映画「レ・ミゼラブル」で注目を
集めたダミアン・ボナールが復讐に燃える男アルベールを演じた.

以上は《映画.COM》から転載.
—————————————————————


オリジナルの「蛇の道」1998年版はVシネマだそう.ゆえに主演は哀川翔と
香川照之だそう.香川の狂演を観てみたい気もするなぁ.フランス製作側からの
アプローチもあったのだろうけど、フランス映画としてリメイクしてみたい気持ち
はなんとなく判る気がする.

さて、本作主役を女性に変えて柴咲コウに当てたことが全てだと思った.
一度も笑わない演技、蛇のような目つき、そして流暢なフランス語使い.
ちょっと聞きにはフランスで4年暮らした私よりずっとフランス語が上手い.

前語の末子音が直後の母音とくっついてしまうリエゾンが上手く話せている.
カタカナの脚本を覚えたのとは次元の違うフランス語会話が成立していた.
拙い私の仏語力でも、字幕に頼らず彼女のセリフは聞き取ることが出来た.
 

 

8歳の娘を何者かに惨殺されたジャーナリスト・アルベール・バジュレ:
ダミアン・ボナールは病院に通院し、そこで心療内科医・新島小夜子:
柴咲コウに犯人追及への協力を申し出られる.

夫婦で渡仏した小夜子だが、その後夫・宗一郎:青木崇高は日本に帰国し、
今はPCのスカイプで連絡を取り合うだけの関係になっている.
 

 

小夜子がつかんだ手掛かりからとある財団が怪しいと睨んだ2人は、財団の
会計係を務めていたラヴァル:マチュー・アマルリックを拉致して廃工場に監禁.
なぜか小夜子はアルベール以上の冷酷を見せて、ラヴァルにトイレを許さず
糞尿を垂れ流しにさせ、食事もコンクリートの床にぶちまけて拾い食いさせる
という虐待を行う.それに感化されたアルベールも、残酷さを露わにしていく.
 

 

ラヴァルの自供から、財団内の秘密サークルが、児童の人身売買や臓器売買、
さらに生きた児童から臓器を摘出する様子を撮影したスナッフ・ヴィデオの
密売を行なっていた事実が判明.2人はサークルの関係者を芋づる式に拉致・
拷問して、首謀者に迫っていく…といったストーリー展開
 

 

とにかく柴咲コウの暗さ、冷たさ表現最優先の感有り. 途中で差し込まれる
在仏業務に悩む日本人サラリーマン:西島秀俊との診療シーンは意味不明.
投薬を勧めるも、最後には西島は自殺してしまう.小夜子:柴咲コウのサイコ面
を強調したかっただけ??

脚本的にも不全な部分が目立つ.クライマックスでアルベールと小夜子は
サークルのアジトに乗り込むが、そこにあらかじめ小夜子が仕掛けておいた
らしい小道具があるのがとっても不自然.

黒沢清監督がストーリーの厳密さより映像的表現を優先させた結果なのか?
最後の最期に小夜子がこのサークルを追う理由も判るのだが、「ほんとは貴方
が一番嫌い…」と相棒だったアルベールまで鎖で繋ぎ放置してしまう….

だが、もっと怖いのはラストシーンだった.
日本に居る夫:青木宗高とスカイプで会話する中、「邪魔だった娘は居ないし、
もう日本に帰ってくれば」と言う発言を聞いた小夜子が、蛇のような目で瞬き
一つせずに「貴方が娘を売ったのね.」と言う言葉と冷徹な表情に戦慄.

きっとこの後小夜子は日本に帰り、夫も血祭りにあげるのであろう.
そんな後日譚も予想される…目つきだった.
柴咲コウの新たな魅力発見!!!