映画「映画大好きポンポさん」(TV)…画以外は意外と良い. | チャコティの副長日誌

チャコティの副長日誌

主役になれない人生を送るおじさんの心の日記.
猫と映画、絵画、写真、音楽、そしてF1をこよなく愛する暇人.
しばし副長の心の彷徨にお付き合いを….



製作年:2021年 製作国:日本 上映時間:90分


アニメに関しては画の好き嫌いが激しい.本作は上映時ずいぶんと話題には
なったのだが、主人公を始めそのキャラ画が徹底的に嫌いでわざと観落した.
今回なんとNHK教育(Eテレ)で地上波放放送されたので録画観賞してみた.
本年度累積35本目は映画好きにはたまらない日本製アニメ作品.
——————————————————

杉谷庄吾【人間プラモ】の同名コミックを劇場アニメ化.
大物映画プロデューサーの孫で自身もその才能を受け継いだポンポさんの
もとで、製作アシスタントを務める映画通の青年ジーン.映画を撮ることに
憧れながらも自分には無理だと諦めかけていたが、ポンポさんに15秒CM
の制作を任され、映画づくりの楽しさを知る.

ある日、ジーンはポンポさんから新作映画「MEISTER」の脚本を渡される.
伝説の俳優マーティンの復帰作でもあるその映画に監督として指名された
のは、なんとジーンだった.ポンポさんの目にとまった新人女優ナタリーを
ヒロインに迎え、波乱万丈の撮影がスタートするが…….

「渇き。」の清水尋也が主人公ジーン役で声優に初挑戦.新人女優ナタリーを
「犬鳴村」の大谷凜香、ポンポさんをテレビアニメ「スター☆トゥインクル
プリキュア」の声優・小原好美がそれぞれ演じる.
監督・脚本は「魔女っこ姉妹のヨヨとネネ」「劇場版『空の境界』第五章 
矛盾螺旋」の平尾隆之.

以上は《映画.COM》から転載.
—————————————————————


やはり最初にキャラクタ画について、主人公?のポンポさんの画が嫌い.
目が大きすぎて大昔の少女漫画風.これが馴染めない.本当の主人公
ジーンも目が大きく、常に目の下にくまを書いているのが超不自然.

 



他のキャラクターはごく普通のアニメ風で違和感が無いだけに、この
主人公たちのキャラクター画設定の違和感は最期までずっと続く.

ところが、それ以外はとても良いのだ.本編90分というコンパクトな尺に、
アニメならではの表現や映像編集の奥深さ、原作漫画をふくらませた
物作りの真剣なドラマが詰め込まれていて、その脚本の良さが光る.

物語の舞台は、ハリウッドを連想させる映画の街ニャリウッド.
伝説の映画プロデューサーである祖父から映画の才能と強力なコネクション
を受け継いだ若き敏腕プロデューサーのポンポは、製作アシスタントの
ジーンを監督、女優志望のナタリーを主演に大抜てきして新作映画の
製作に乗り出す.

「幸福は創造の敵」と言い放ち、「2時間以上の集中を観客に求めるのは
現代の娯楽としてやさしくないわ」とB級映画をこよなく愛するポンポに
導かれながらジーンは初監督作の撮影にのぞみ、撮影した映像を編集
しながら映画と向き合っていく.

映画の世界だけで生きてきた映画マニアのジーンは撮影前、「映画を
撮るか死ぬか、どっちかしかないんだ」と思いつめる.目には光がなく、
学生時代の友達はゼロ.映画がなかったら社会不適合者間違いなしの彼が、
映画製作をきっかけにスタッフと関係をきずき、自分の思いを押し通す
ためにこれまで逃げてきた現実と対峙する姿が鮮やかに描かれる.

物語の前半は撮影現場のエピソードが描かれ、スタッフたちと協同で
映画を撮っていく姿が描かれる.そんな中でジーンの孤独癖が癒され、
役者やスタッフとの仲間感が育つのを上手く描いている.

映画の後半は編集と金策の話になっていく.映画製作でスポットの
あたることが少ない映像編集の仕事がフィーチャーされているのも
本作の大きな見どころ.

複数のアングルで撮影したショットをどう繋いでいくかで作品のリズムが
決まっていく様子を、作中で実際にカットを切りかえながら見せるなど、
編集のはたす役割の一端が見事に表現されている.
 

 

原題は魅力を感じにくい.アニメーション映画なのでキャラクターは
日本語を話すが、書き文字はすべて英語.「ポンポさん」というのは、
「ジョエル・ダヴィドヴィッチ・ポンポネット」という映画プロデューサーの
あだ名であることが途中で判る.

エッジの効いた映像表現と、名作になるためのテーマを織り交ぜながら
映画作製者の「夢と狂気の世界」を巧みに描き出した作品.