映画「アメリ デジタルリマスター版」…お洒落でポップな恋愛もの. | チャコティの副長日誌

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主役になれない人生を送るおじさんの心の日記.
猫と映画、絵画、写真、音楽、そしてF1をこよなく愛する暇人.
しばし副長の心の彷徨にお付き合いを….



原題:Le fabuleux destin d'Amélie Poulain 製作年:2001年
製作国:フランス 上映時間:121分
 

 


今年は名作を探るシリーズから始めている.本作は都合3回目の観賞.
新年のキネマ旬報シアターは老若男女でいっぱい.近年稀に見る混雑具合.
なんと前列3列目で観たのは本年度2本目のフランス作品.
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パリ・モンマルトルを舞台に空想好きな女性アメリの日常と不器用な恋の行方
をポップな映像とブラックユーモアを交えて描き、フランスのみならず日本でも
大ヒットを記録したロマンティックコメディ.

幼い頃から空想の世界で過ごしてきたアメリは、そのまま大人になり、
モンマルトルの古いアパートに1人で暮らしながらカフェで働いている.

他人とのコミュニケーションは苦手だったが、偶然発見した宝箱を持ち主に
返したことをきっかけに、誰かを少しだけ幸せにすることに喜びを見出すように.
そんなある日、アメリは他人の証明写真を収集する不思議な青年ニノと出会い、
恋心を抱く.

オドレイ・トトゥが主人公アメリを魅力たっぷりに演じ、「クリムゾン・リバー」

など監督としても活躍するマチュー・カソビッツがニノ役で共演.
監督は「デリカテッセン」のジャン=ピエール・ジュネ.
2023年、ジュネ監督監修のデジタルリマスター版でリバイバル公開.

以上は《映画.COM》から転載.
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2001年の公開時は劇場で鑑賞した.日本では随分と話題になった作品.
配給会社が買い付け時には、フレンチ・ポルノだと思って買い付けたそう.
いかにもいいかげんな、観る目のない配給会社が横行している事実が
見え隠れしてくる.

原題は“Le fabuleux destin d'Amélie Poulain”.アメリ・プーランの
素敵な運命、とでも訳そうか.それを「アメリ」とシンプルに割り切り、
独自の字体で表したセンスは誉められて良い.

この作品には、当時のポップで、キッチュなフランスのセンスが凝縮されている.
緑がかった地下鉄.オレンジ味を帯びたアパートメントの一室.世界を旅する小人.
紅茶で染められたレター.カフェの机にこぼれるシュガー.数え切れないほどの
ファンタジーが、「アメリ」の世界には散りばめられている.

ちなみに副長が好きなシーンはアメリが子供の頃、両手10本指の先端に
フランボワーズを突き刺して、1個ずつ食べていくシーン.

 

 

あと大人になってからアメリが好きなこと2つ. 豆袋に手を入れることと、
クリームブリュレのお焦げをスプーンで潰すこと、のシーン.
トップ写真のスプーンを持つアメリの得意げな顔付きが大好きだ.

小さい頃から空想が好きだったアメリ:オドレイ・トトゥ は、パリ・モンマルトルの
カフェで働く22歳の若い女性.まわりの人々を観察しては想像して楽しんで
いたが、あることをきっかけに、他の人を幸せにすることに喜びをみつける.
他人の人生に様々な悪戯を仕掛けて、人知れずお節介を焼いて回る….
 

 

妄想大好きこじらせ女子アメリのちょっと危険な遊びが終始繰り広げられ、
時折毒々しささえ感じてしまうのだけど、オドレイ・トトゥの憎めないキャラクター
も相まって、公開当時は新しい価値観の女性像を表していたと感じた.

今時点の視点で見ても、いわゆる多様性の一つで片付けられるのかもしれない.
“普通”なんてない.誰もが変わってるし誰もがこだわりがある時代だから許される.
どんな人にも、理解者はいて、ちゃんとしあわせになれる…と言う結末も含めてだ.

ちょっと風変わりなアメリの周辺の一癖も二癖もある人物達が愛おしい.
アメリの楽しい悪戯によって彼達の日常も彩り、人生が活き活きと輝く.
一筋縄ではいかないアメリの恋模様も最高にロマンチックなのだ.

激しめのカット割りやカメラワークも全体としてきちんと構成されている.
独特な雰囲気が一貫して取れていたし、すごい勢いで散りばめられている
ユーモアも一つ一つが手が抜かれていないから、テンポの速さに疲れることなく、
情報過多になることもなく、ストーリーにスッと乗っていける.

優れた翻訳による字幕が上手いと感じた.使われているフランス語はいたって
まっとうで、慣用語やスラングは無い.それを少ない言葉で的確に字幕化されて
いた.戸田奈津子見習え!、あぁ、あ奴は英語専門か(笑).

シンプルな話なのに、ひたすら寄り道をして、いつの間にか寄り道が本筋に
なってるみたいなラブストーリー.ストレートに感情を伝えないけど、長い時間
と苦労をかけた分、恋が実った時の果実は大きいという結末は素敵だ.

“私は私”と肯定してくれるような前向きな恋愛映画の名作.