映画「終末の探偵」(DVD観賞)…ださいけど魅力的なキャラクター設定. | チャコティの副長日誌

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主役になれない人生を送るおじさんの心の日記.
猫と映画、絵画、写真、音楽、そしてF1をこよなく愛する暇人.
しばし副長の心の彷徨にお付き合いを….



製作年:2022年 製作国:日本 上映時間:80分


レンタル屋新作棚の隅っこに発見したマイナー作品.なんとあの北村有起哉が
主演という変わった探偵もの.本年度累積304本目の鑑賞.
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北村有起哉が裏社会を駆けずり回る型破りな私立探偵を演じる、
クライムハードボイルド.

とある街の喫茶店を事務所代わりに、しがない探偵業を営む新次郎は、
闇の賭博場でトラブルを起こしてしまったことから、顔なじみのヤクザ
である笠原組幹部の恭一から面倒な仕事を押しつけられてしまう.

それは笠原組が敵対する中国系マフィア・バレットの関与が疑われる
放火事件の調査だった.さらに、新次郎はフィリピン人の両親が強制
送還させられた過去を持つミチコから、謎の失踪を遂げた親友の
クルド人女性の捜索を依頼される.

しかし、2つの事件を追ううちに、裏社会の巨大組織の抗争に
巻き込まれてしまう.

主人公・新次郎役を北村が演じるほか、「燃えよ剣」の松角洋平、
俳優・モデルとして活躍する武イリヤ、「うみべの女の子」の青木柚ら
が顔をそろえる.監督は「東京失格」「キミサラズ」の井川広太郎.

以上は《映画.COM》から転載.
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ちょうど1年前の公開作品、存在も知らなかった.シアター系公開であろう.
どんくささやダサさをもつ映画だと感じた.北村有起哉を主演にもってくる
心意気が潔いのだ.

或る意味では探偵ものというフォーマット、ベタな典型的な雛形に収まって
しまっているのだが、そういうベタさが時代から消えていくようなテーマにも
含んでいてそれなりの存在感を感じさせる.
 

 

ダサくて何が悪い、俺たちはここでギリギリまで踏みとどまるんだよとでも
言いたげな作りての居直りが、さまざまな弱者へのシンパシーを打ち出し
ていて、きちんとした物語が成立している.

北村有起哉が演じてる探偵連城の佇まいが愛おしい.すべてにウンザリしている
ようでいて、なにかを諦めてはいない.そして突発的に、狂気にも似た暴走を
見せるので目が離せない.ダルそうな探偵というジャンルの定番を踏襲
しながらも、奇妙な新味のあるキャラクターを創出していると思う.適役だ.

ピストルもナイフも出てこないやくざ物(笑).せいぜい鉄パイプと一見良い子
そうでボランティアする青年が、実は排他的信者でやくざをボウガンで撃ったり
するくらいだ.

喧嘩のシーンの荒々しさ、喧嘩慣れはしてないが根性でどうにかしている感じ.
中国系マフィア、チェン:古川憲太郎と主人公の友人やくざ阿見:松角洋平の
殴り合いも、オッサンがグタグタになって殴り合ってて、カッコ悪いのに、なんか
カッコ良く見えるから不思議だ(笑).
 

 

惜しむらくは、現代日本における排外主義という闇を描ききってはいないこと.
連城の依頼者のミチコは日本から受け入れてもらえないフィリピン系.
かつては自分の心は日本人だとかつて述べていた日本育ちの少女に日本
なんて大嫌いと言わせてしまう今の日本の現状がここにはある.

連城たちが必死で探し出した囚われのクルド人女性、しかしやっと助け出した
のも束の間、彼女は入管に収容されてしまう.外国人の不法入国・滞在、
難民問題等々、現代日本の抱える闇の部分が少し描かれるだけで本質は
突いていない.

その他にも、社会の裏側としてのヤクザ社会の変貌、中国人の日本の不動産
の買い占め、中国マフィアの台頭、新たな手口の地上げ屋、独居老人ばかりに
なった団地とか、部分的な指摘ばかりでもの足りない気分が大なのだ.

アルコール依存でギャンブルの借金まみれ、ずさんだけど、泥臭くて意外と
人情に厚い部分もある主人公のキャラクター設定とか、探偵:連城とやくざ:
阿見の男の友情的な関係性とかキュンとする部分も含めて魅力的な設定
と思えた.これは続編又はシリーズ化を待望してしてしまう.

なりたくはないし近くにいてほしくはない、魅力的なキャラクターを
演ずる北村有起哉のハマり役だ.