映画「ナポレオン」…2時間38分の英語劇にうんざり. | チャコティの副長日誌

チャコティの副長日誌

主役になれない人生を送るおじさんの心の日記.
猫と映画、絵画、写真、音楽、そしてF1をこよなく愛する暇人.
しばし副長の心の彷徨にお付き合いを….



原題:Napoleon 製作年:2023年
製作国:アメリカ 上映時間:158分



リドリー・スコット監督とホアキン・フェニックスの組合せじゃ、観にいかない
わけにはいかない.公開初日に大きな画面ADMIXで観賞.
近所のシネコンで本年度累積285本目の鑑賞.
————————————————————

「グラディエーター」の巨匠リドリー・スコット監督が「ジョーカー」のホアキン・
フェニックスを主演に迎え、フランスの英雄ナポレオン・ボナパルトの
人物像を新解釈で描いた歴史スペクタクル.

18世紀末、革命の混乱に揺れるフランス.若き軍人ナポレオンは目覚ましい
活躍を見せ、軍の総司令官に任命される.ナポレオンは夫を亡くした女性
ジョゼフィーヌと恋に落ち結婚するが、ナポレオンの溺愛ぶりとは裏腹に
奔放なジョゼフィーヌは他の男とも関係を持ち、いつしか夫婦関係は奇妙に
ねじ曲がっていく.

その一方で英雄としてのナポレオンは快進撃を続け、クーデターを成功
させて第一統領に就任、そしてついにフランス帝国の皇帝にまで上り詰める.
政治家・軍人のトップに立ったナポレオンと、皇后となり優雅な生活を送る
ジョゼフィーヌだったが、2人の心は満たされないままだった.
やがてナポレオンは戦争にのめり込み、凄惨な侵略と征服を繰り返す
ようになる.

妻ジョゼフィーヌ役に「ミッション:インポッシブル」シリーズのバネッサ・カービー.
「ゲティ家の身代金」でもスコット監督と組んだデビッド・スカルパが脚本を
手がけた.

以上は《映画.COM》から転載.
——————————————————————


先ずは英語を話すナポレオンへの違和感が第一印象.登場からセントヘレナで
こときれるまで2時間38分間の英語セリフには全く馴染めなかった.アメリカ映画
ゆえ致し方無いのだが、この違和感は感動とか共感の妨げとなっている.

大作なれど、通してのこの高揚感の無さも驚異的だ.豪華なセットの映像や、
大量のエキストラを使った戦闘シーンに観るべき部分は多いのだけど、
人物描写に問題があるのかもしれない.
 

 

英雄?のナポレオンをホアキン・フェニックスは堂々と演じているし、その愛妻である
ジョセフィーヌをバネッサ・カービーは美しく、妖艶に、そして悪女ぶりを果敢無く
演じ切っていて非は無いように思える.
 

 

やはり脚本と演出だろうか.人物描写が薄い.本作はナポレオンのその生涯や
歴史的事件を狭苦しく詰め込むのではなく、むしろ彼の内面こそを浮き彫りに
しようとするものだと思うのだが、表面の薄っぺらい表現に留まっていて、
真にその姿が描き切れていない気がする.

とりわけ生涯にわたって彼の心に棲み続けた妻ジョゼフィーヌとの関係性.
外では冷静沈着にフランスの大軍を率いて大きな戦果を上げながらも、
内では愛や嫉妬や怒りや焦燥がない混ぜになった狂おしい感情に溺れる
ナポレオンの焦りとか妄想とか、その感情が感じられないのだ.
 

 

転じて、度々登場する歴史的戦いの描き方は序盤のトゥーロンからはじまり、
ナポレオンが敗れるワーテルローに至るまで、絵画的な迫力と構図に秀でて
大迫力であった.金のかけ方がものを言う?

リドリー・スコットがどういった考えでいまナポレオンを取り上げたのか?
妻に心身を委ねても報われず、空虚な表情で兵を率いながらも、
権力闘争に執念を燃やす二面性だけなら、2時間38分は長すぎた.