映画「太陽とボレロ」…西村智実だけは観る価値あり! | チャコティの副長日誌

チャコティの副長日誌

主役になれない人生を送るおじさんの心の日記.
猫と映画、絵画、写真、音楽、そしてF1をこよなく愛する暇人.
しばし副長の心の彷徨にお付き合いを….



製作年:2022年 製作国:日本 上映時間:133分
 

 

邦画を観始めると続いてしまうね.近所のシネコンで観たのはオーケストラもの.
本年度累積131本目の鑑賞.

———————————————————————

「相棒」シリーズでおなじみの俳優・水谷豊が、「TAP THE LAST SHOW」

「轢き逃げ最高の最悪な日」に続いて長編映画のメガホンをとった監督第3作.

水谷が自ら脚本を執筆したオリジナル作品で、オーケストラを題材に、

音楽を愛する普通の人々が織り成す人間模様を描く.

ある地方都市のアマチュア交響楽団「弥生交響楽団」.主宰者である花村理子は
18年間、音楽を愛する個性豊かなメンバーたちとともに活動してきた.
しかし経営は苦しく、理子の必死の努力もむなしく、ついに楽団の歴史に幕を
閉じることに.

楽団最後の解散コンサートが開催されることになるが、個性的なメンバーたちは
一筋縄ではいかず、それぞれの思いで勝手に動き回り、衝突する.
そんな彼らに理子も翻弄されるが…….

「武士の一分」「母べえ」など様々な作品で活躍してきた檀れいが主人公の
花村理子役を務め、映画初主演を飾った.楽団を支える中古車販売センター
社長役に石丸幹二、楽団員役に町田啓太、森マリア、田口浩正、田中要次、
藤吉久美子、六平直政、河相我聞、原田龍二ら実力派のキャストがそろい、
物語のキーパーソンとなる弥生交響楽団の指揮者役で水谷も出演.

世界的指揮者の西本智実が音楽監督を務めた.

以上は《映画.COM》から転載.
———————————————————————


長じた役者は監督をやりたがる? 「相棒」のヒットで恩を売ったテレ朝と東映に
なしを付けたであろう水谷豊が脚本、監督を務める.特に脚本家としても、
監督としても才能を感じさせない作品.冗長でつまらないエピソードも多い.

オーケストラを題材にした映画とあって、音楽シーンの確かさは重要なポイント.
この点に関しては本作は上質な音楽を提供してくれる.冒頭がなぜか世界的な
指揮者として活躍する西本智実の指揮するシーンから始まるのだが、なんと
その後のストーリーでも重要なキーウーマンであった.

西本が主宰する「イルミナートフィルハーモニーオーケストラ」が映画に参加.
 劇中のクラシック楽曲録音を担当し、ベートーヴェンの「交響曲第7番」、
チャイコフスキーの「白鳥の湖」、そしてタイトルにもあるラヴェルの「ボレロ」を
披露している.

オーケストラを題材にした映画は多いが、本作の特徴のひとつが、
プロではなく、メンバーたちが仕事を抱えながら活動するアマチュアの
交響楽団を描いているところであろうか.

プロの音楽家たちがその道を極めるために全てを捧げるのとはまた違った形で、
楽団員たちは生業をしながら、自分の人生を豊かにしてくれる大好きな音楽に
向き合い、寄り添って生きているさまが描かれる.
 

 

 

 

仕事場で片身を狭い想いをしながら残業もせずに演奏の練習に向かう様は、
企業スポーツなどでも良く目にするシーン.
なかなか理解と協賛を得られにくい職場も数多いだろう.

さて、初主演を得た壇れいはたしかに美しいし絵になるカットも多かった.
が、それを強調し過ぎの感もあり、喜びのシーンでくるりと2ターンしてガッツ
ポーズなんて…宝塚出身だからこそなのだろうけどあまりに陳腐だ….

キャステイングで面白いのは理子;壇れいの母親役がなんと壇ふみ.
ベッドで過ごす老いた老女の役柄にビックリ! 彼女もそんな役柄の年齢に
なったのだねぇ.たしか私と同年齢だったはず(笑).

セリフも差し込まれるギャグシーンも昭和的で全体的に古くさい.コミカルなシーンは
全く必要性を感じさせないし、作品全体の品位を落としまくっている.
このセンスは今どきの監督としては失格であろう.
 

 

 

 

それに加えて出演は少ないが、水谷豊の大仰な演技にはへきへきさせられる.
天下の大指揮者西村智実が実は隠し子?だったという脚本はやり過ぎだろう.
後に出演して西村は顔を出すが、一切セリフはしゃべらない不自然さも疑問.

とはいうものの、西本智実の指揮シーンは迫力たっぷり.喋らなくても

指揮する姿は多くを語る….
アマチュア交響楽団弥生交響楽団のお別れコンサートはなんと西村智実の
指揮で行われることに….そこでの「ボレロ」の演奏は圧巻の出来であった.

プロの脚本家、プロの監督に任せればもう少し魅力的な作品になっただろうに、
と思わせる残念な作品.