映画「何食わぬ顔」…濱口監督の初期状態を観る. | チャコティの副長日誌

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主役になれない人生を送るおじさんの心の日記.
猫と映画、絵画、写真、音楽、そしてF1をこよなく愛する暇人.
しばし副長の心の彷徨にお付き合いを….



製作年:2003年 製作国;日本 上映時間:98分

 

 

卒業制作品「PASSION」が芸大だったから、濱口竜介監督は芸大卒かと
思っていたが、東大学部卒、芸大修士卒だったんだね.東大で映研に入って
映画の世界にどっぷり入り込んだそう.その東大での8mm自主製作作品.
キネマ旬報シアターで本年累積79本目に観賞.

濱口竜介監督の東大時代の自主映画.8ミリフィルムで撮影された作品で、
前半は亡き先輩がやり残した映画を完成させるために、残された者たちが
喧々諤々やりながら撮影していく話.

後半はその完成された映画、という二部構成になっている.
濱口監督自身も出演していて、気取った映画青年役を演じている.

以上は〈Filmarks〉から転載.
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こんな未熟な作品まで掘り起こされて上映される気持ちってどうなんだろう?
それなりに自信をもってリリースしているのだから恥じることはないのか.

濱口監督は、「親密さ」という作品でも、前半は演劇作り、後半はその演劇を
そのまま見せるという作品を作っている.「ドライブ・マイ・カー」でも演劇作りの
プロセスを描いているが、作品作りのプロセスとその完成した作品の二重構造
に注目する視点は、すでに自主映画時代にその萌芽が見られる.
 

 

 

 

学生の自主映画だから技術も芝居も粗いが、なにせ機材が低性能で画面が
暗く荒すぎる.最後まで観切れるか耐えられるか心配になったが、観るべき
シーンもいくつか有り、最後まで耐えらえた.

はっとするような魅力的なショットが随所に存在するの事実だ.
冒頭の喪服を脱いで白いYシャツ姿でサッカーをするショットだとか、女の子が
空港の階段を駆け上がるショット、夜の競馬場の光と影、レースの躍動感あふれる
シーンとか印象に残るものがあった.

極めつけは、その後の濱口作品に欠かせない電車内のシーン.劇中劇で女の子が
電車内で淡々と辞書を読み上げるシーンにはちょっと感動した.
言葉の洪水と波紋のように広がるその意味、8mmとは思えないような長回しに、
そのセンスとこだわり?を観客に十二分に伝えるものであった.
 


 

 

この映像センスがそのまま伸びていくのかと期待させるのだが、あにはからんや
会話劇の方向に行ってしまった濱口監督の初期状態を確認した次第.

それ以上でもそれ以下でも無い作品.
濱口ファンでないと観るに耐えない作品かも知れない.