映画「いとみち」 (DVD観賞)…標準語字幕は不可欠だった. | チャコティの副長日誌

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主役になれない人生を送るおじさんの心の日記.
猫と映画、絵画、写真、音楽、そしてF1をこよなく愛する暇人.
しばし副長の心の彷徨にお付き合いを….



製作年:2021年 製作国:日本 上映時間:116分

 

本作劇場公開は超マイナーだった.未だ2番館(キネマ旬報シアター)で上映中.
されどレンタルDVDがリリースされた.本来なら劇場鑑賞が望みなのだが、
有る狙いがあって、DVDで観賞を選んだ.本年度累積23本目の観賞.

青森県・津軽を舞台に、メイドカフェで働く人見知りな津軽弁少女の奮闘と成長
を描いた青春ドラマ.「ウルトラミラクルラブストーリー」の横浜聡子監督が越谷
オサムの同名小説を実写映画化し、「名前」の駒井蓮が主演を務めた.

弘前市の高校に通う16歳の相馬いと.三味線を弾く時に爪にできる溝「糸道
(いとみち)」を名前の由来に持つ彼女は、祖母と亡き母から引き継いだ
津軽三味線が特技だが、強い津軽弁と人見知りのせいで本当の自分を
誰にも見せられずにいた.

そんなある日、思い切って津軽メイド珈琲店でアルバイトを始めたことで、
彼女の日常は大きく変わり始める.いとを心配しながらも見守る父を豊川悦司、
津軽メイド珈琲店の怪しげなオーナーをお笑いタレントの古坂大魔王、
シングルマザーの先輩メイドを「二十六夜待ち」の黒川芽以がそれぞれ演じる.

以上は《映画.COM》から転載.
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親友に青森津軽の出身者が居て、津軽弁の難解さ強烈さはよく理解している.
本作の横浜聡子監督はヒロインが話す津軽弁のニュアンスを大事にしたいという
コメントを読んで、そのまま劇場で観てもおそらく理解出来ないと読んだ.

そこで、DVDを選んだ目論見とは…、もしかしたら字幕が選べるのではと.
案の定、標準語字幕版が選べる設定になっていた♪ 大正解だった(笑).

青森出身の女優駒井蓮が演じる「いと」の津軽弁は強烈な破壊力だ.
耳でそれを楽しみながら標準語字幕でその内容を確認する…不純だけど
作品理解には必須の行為だと正当化しちゃう(笑).

トップ写真に有るように、三味線を抱えた女子高生がメイドカフェでバイトする.
それはキャッチ力十分なビジュアルであるが、本作はそれにも増して、少女の
内面とか成長へのまなざしを持つ視点での表現が魅力だ.

 

 

 

 

冒頭の教室での一場面、自分の思いを言葉にすることが苦手なヒロインが
学校から自宅へ移動を続けるシーンが続く.駅までの徒歩、田舎のJR路線、
駅からまた自転車を使っての帰宅.たったそれだけの動線の中にも、風景や
リンゴ畑とか瑞々しい感性が散りばめられている.

「自分には何も取り柄がない」とはこの年頃なら誰もが持つ悩みだが、
そういった思いに固執せず、環境に刺激を受けてエイッとばかりに飛んでみる.
いとはスマホでメイドカフェのバイトに申し込んでしまう.

それからのいとは徐々に“変化”していく.昨日の自分にさよならと手を振るみたいに、
日々、一歩一歩前に進んでいく成長ぶりがなんとも気持ち良い. 加えて主人公の
素朴な魅力もさることながら、父親役の豊川悦司の飄々とした父親っぷりも
相変わらずながら、安心して観ていられる.
 

 

 

 

 

いとの家族の姿も的確に描かれていて、何と言っても祖母役の西川洋子がとてもいい.
優しさとユーモアを自然体で表現して3人のやりとりに和む.なんとあの津軽三味線の
神とも言える高橋竹山の弟子だったそう.いとと一緒に演奏するシーンもあるのだが、
いとの尖った三味の音に比し次元の違うやさしい音を出していたのが印象的.

監督脚本の横浜聡子は、的確な演出で物語をまとめており、適当なユーモアも含めて
心地よい作品に仕上げていると感じた.
通り一遍のご当地作品とは一線をかす秀作.