映画「ラスト・フル・メジャー」 (DVD観賞)…泣けた一作. | チャコティの副長日誌

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主役になれない人生を送るおじさんの心の日記.
猫と映画、絵画、写真、音楽、そしてF1をこよなく愛する暇人.
しばし副長の心の彷徨にお付き合いを….



原題:The Last Full Measure
制作年:2019年 制作国:アメリカ 上映時間:116分

 

ついこの春に公開されていた作品.興味有ったが上映期間が短く、
見落としてしまった.DVDリリースされたので早速観賞.
本年累積186本目.

「キャプテン・アメリカ」「アベンジャーズ」シリーズのセバスチャン・スタン
が主演を務め、ベトナム戦争で多くの兵士の命を救った実在の米空軍兵
ウィリアム・H・ピッツェンバーガーの知られざる真実を描いた社会派ドラマ.

1999年、アメリカ.空軍省のハフマンは、30年以上も請願されてきた
ある兵士の名誉勲章授与について調査を開始する.

1966年、空軍落下傘救助隊のピッツェンバーガーはベトナムで敵の奇襲を
受けて孤立した陸軍中隊の救助に向かうが、激戦のためヘリが降下できず、
その身ひとつで地上へ降りて救出活動にあたる.

しかし彼自身は銃弾に倒れ、帰らぬ人となる.ハフマンは当時ピッツェン
バーガーに救助された退役軍人たちから証言を集めるうちに、彼の
名誉勲章授与を阻み続けた驚くべき陰謀の存在を知る.

共演にはクリストファー・プラマー、ウィリアム・ハート、サミュエル・

L・ジャクソンら豪華キャストが集結.名優ピーター・フォンダの遺作となった.
監督・脚本は「ファントム 開戦前夜」「ロンリーハート」のトッド・ロビンソン.

以上は《映画.COM》から転載.
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たかが勲章、されど勲章なのだ.米における名誉勲章の位置付けが
日本人には理解しがたい部分はあるのだけど、世界各地でアメリカ
の正義の名の元に戦った人たちを称する勲章の中では最高位らしい.

さて、アメリカがやらかした戦争の中でも一番の問題のベトナム戦争が舞台.
その中でも暴挙ともいえる、無茶な作戦に於いて大量の死傷者を
出してしまった“アビリーン作戦”.その中で多くの人名を救いながらも
戦死してしまったピッツェンバーガー米空軍落下傘救助隊員に対して
名誉勲章を授けようととするのが物語の骨子.

ペンタゴン官僚の主人公ハフマン:セバスチャン・スタンは上司に
命じられたという理由で、ピッツェンバーガーの名誉勲章申請が
30年以上も放置されている件を調査し始める.

ハフマンが“アビリーン作戦”でピッツェンバーガーに命を救われた男たち
に調査をしていく過程で、ベトナム戦争に於ける戦争の悲惨さやそれらに
よるトラウマ、しなかった事への後悔、してもらった事への感謝…が
見事に描かれる.

ウィリアム・ハート、サミュエル・L・ジャクソン、エド・ハリス、ピーター

・フォンダら名優が、これらの心傷ついた元兵士を演ずる.

見事なキャスティングだ.

生まれる前に起きた出来事を調べていく若いハフマンが、当時何があったのか、
何故彼らは32年もの長きに亘り、ピッツェンバーガーへの名誉勲章授与を
求め続ける理由を理解していく過程の描き方が秀逸.
本作は一官僚ハフマンの成長物語でもある.

昇進のチャンスも捨てて、ピッツェンバーガーの名誉勲章受章に血道をあげる
ハフマンを突き進めるものは、未だ終わっていないベトナム戦争の後遺症に
悩む男たちへの想い、そしてピッツェンバーガー自身の行為の素晴らしさに
対する敬意かと.

ピッツェンバーガーはヘリコプター登場の救命兵士.周囲を敵に囲まれた
“アビリーン作戦”の米軍部隊の要請で出動する.最初にヘリに運ばれたのが
救護兵であることに気付いたピッツェンバーガーは単身ヘリを降りて、
救護にあたる.

 

 

 

的確に救護しながら、味方を鼓舞し、次々と重傷者をヘリへつり上げていく.
ヘリに戻れと指示されながらも、それを無視して救護活動を続ける.
これは彼が自信の使命は“人の命を救うこと”と考えての行動で、
幼少からの父:クリストファー・プラナーの教えによるもの.

ついには、彼も銃を取り敵に向かっていくが、額に銃弾を受け絶命してしまう.
その様子を見ていた兵士達、ヘリに残った兵士たちがピッツェンバーガーの
名誉勲章を申請していたのだった.

ハフマンが調査を進める中、ペンタゴンの一部の腐った組織が行っていた事実に
突き当たる.そしてハフマンの調査を妨害しようと”出世に関わるぞ・・”という脅し.
だが、それに屈せずに自らの出世を棒に振ってでも、真実に近づこうとする
ハフマンの姿を見て、それまでのハフマンに対する態度を改めていく元兵士の
老優達の演技にはからずも泣かされてしまった….

ハッピーエンドのラストシーン、32年間渡すことが出来なかったピッツェンバーガー
の恋人だった女性に渡すことが出来た手紙でまた一涙….泣かされる作品だ.

未だ消えないベトナム戦争の惨禍と影響、そして一官僚の成長物語として
上手くまとめた佳作.

本作が遺作となってしまったピーター・フォンダ、クリストファー・プラナーに
弔意を表する.