映画「ホテルビーナス」 | チャコティの副長日誌

チャコティの副長日誌

主役になれない人生を送るおじさんの心の日記.
猫と映画、絵画、写真、音楽、そしてF1をこよなく愛する暇人.
しばし副長の心の彷徨にお付き合いを….

 


制作年:2004年 制作国:日本 上映時間:125分
 

 

キネマ旬報シネマで「Midnight Swan」を上映し始めた繋がりなのだろう、
草彅剛主演の2004年作品を併映してくれた.大勢の草彅ファンに囲まれて
観たのは本年劇場鑑賞累積154本目.

心に傷を負った人々が暮らすホテルを舞台に、心の触れ合いを通し住人たちが
再生していく姿を描出する、日本映画初の全篇韓国語によるドラマ.

監督は、バラエティ番組『チョナン・カン』などの演出を経て、本作で劇場用映画
デビューを飾ったタカハタ秀太.脚本は、CMプランナーとして活躍する麻生哲朗.
撮影を「まぐろのしっぽ/おさむ大作戦」の中村純が担当している.

出演は、「黄泉がえり」の草彅剛、「ポケットモンスター ミュウツーの逆襲」の市村正親、
『ウララ・シスターズ』のコ ドヒ、『TUBE』のパク ジョンウ、「嗤う伊右衛門 Eternal
Love」の香川照之、「壬生義士伝」の中谷美紀、『無分別な妻と波乱万丈万丈な
夫そして太拳少女』のチョ ウンジ、映画初出演のイ ジュンギら.

以上は《映画.COM》から転載.
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市松座席指定のキネ旬、ほぼ満員…久々の密環境の観賞.40〜60代の女性たち、
これが旧SMAPを支えているファン層なのだろう.劇場も賑やかだ.

さて、ハングルの上手い草彅が「チョナン・カン」と称してTVで活躍していた時代に
作られた全編ハングルの変わった作品.役者は日韓合同だ.

とある旧領地系外国に存在する韓国街.うらぶれた喫茶店“カフェ ビーナス”の奥に
ある“ホテル ビーナス”には、心に傷を負った流れ者たちが住んでいる.

1号室には酒浸りの元闇医者“ドクター”香川照之と、ホステスとして働きながら生活
を支える元看護婦の“ワイフ”中谷美紀が、3号室には花屋を開くことを夢見る娘
“ソーダ”チョ・ウンジが暮らす.

4号室には殺し屋を自称する少年“ボウイ”イ・ジュンギが暮らし、屋根裏部屋である
0号室の住人“チョナン”草彅剛は、恋人を亡くし生きる気力を失って3年前にホテル
に来て以来、カフェのウエイター兼ホテルの世話係をしていた.

そして、そんな彼らを温かく見つめるのが、片足の不自由な謎の女主人“ビーナス”
市村正親だ.ある日、新しい住人がやって来た。無口な男“ガイ”パク・ジョンウと
彼の義理の娘“サイ”コ・ドヒである.

ガイは、不治の病に倒れたサイの母親を愛しているが故に殺め、警察に追われる
身の上.しかし、彼の気持ちを理解仕切れないサイは、母親を失ったショックから
心を閉ざしていた.

それぞれ心に傷を持つ人たち、少しの望みを持つ者もいるが、そうでない者も.
傷ついた者同士が慰め合うではなく、じっと見つめるだけの関係は乾燥しきっている.

そんな中、寡黙な少女サイをみんなで温かく囲んでやるうちに、それぞれの自身の
人生を見つめ直すようになっていくホテルの住人たち.
「生きているから色んなことがあるのではなく、色んなことがあるから生きるのだ」 と.

上手いのかどうかは判らぬが、草彅がタップダンスをしょっちゅう披露する.
カフェで珈琲を注文を受ける毎にタップを刻む.死に別れの彼女ともタップが
取りもつ縁であったらしい.死に顔も見せてもらえず、その後墓の在処さえも
知らされていない….

哀しみを背負い、絶望しかない生の営みの苦しさを草彅は上手く演技する.
お笑いよりもこういう哀しみの演技の方が似合う役者だね.

立ち直る為にホテルを立ち去る者もいる.誰かが立ち直れば、他の者が扉を閉じる.
それに触発されてか、他の者がまた立ち直りホテルに戻ってくる….
そんな有り様を淡々と描く.

本作は珍しくフィルム上映.冒頭の画面にフイルムの傷が見えたり懐かしい気分.
画像は全編モノトーン調で、若干色がついている.寂れたホテルの生活の描写には
ピッタリなのだけど.最後に、チョナンが恋人の墓を訪ねる時に、意味なく急に、
フルカラーになる.うーんアイデア倒れの感有り.

その後に、ホテルを訪ねてくる、つんくと香取慎吾はカメオ出演?
全く意味なしの余分なシーンと感じた.

全編韓国語というのも意味不明だったが、日本人役者の奮闘は良く伝わった作品.

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