映画「お名前はアドルフ?」 | チャコティの副長日誌

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主役になれない人生を送るおじさんの心の日記.
猫と映画、絵画、写真、音楽、そしてF1をこよなく愛する暇人.
しばし副長の心の彷徨にお付き合いを….

 


原題:Der Vorname
制作年:2018年 制作国:ドイツ 上映時間:91分
 

 

日曜の午後、柏キネマ旬報シアターで観たのはドイツ製の会話劇.
たまに硬めの作品も面白いかと.本年劇場鑑賞累積98本目.

2010年にフランスで上演された舞台「名前」をドイツで映画化し、ディナーに
集まった5人の男女が、子どもの名づけを巡って繰り広げる舌戦を描いた会話劇.

ライン川のほとりにたたずむ優雅な邸宅.哲学者で文学教授のステファンと妻
エリザベスは、弟トーマスとその恋人、友人の音楽家レネを招いて自宅で
ディナーをすることに.

しかし恋人の出産を間近に控えたトーマスが、生まれてくる子どもの名前を
独裁者ヒトラーと同じ「アドルフ」にすると発表したことから大騒ぎに発展.

友人レネも巻き込んだ大論争の末、話はドイツの歴史やナチスの罪へと展開し、
やがて家族にまつわる最大の秘密まで暴かれてしまう.

ステファンを「帰ってきたヒトラー」のクリストフ・マリア・ヘルプスト、弟トーマスを
「はじめてのおもてなし」のフロリアン・ダービト・フィッツが演じる.
監督は「ベルンの奇蹟」のゼーンケ・ボルトマン.

以上は《映画.COM》から転載.
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思えば閉鎖された空間での会話劇は好きな部類なのかもしれない.
ジョディ・フォスターの「大人のけんか」なんか大好きだった.
ポンポンと繰り広がられる会話からこぼれ出る真相と本音の世界への展開、
それがたまらない魅力だと感じる.

さて、その会話の主(あるじ)達が魅力的だ.知的な文学者シュテファンに
クリストフ・マリア・ヘルプスト.その妻エリザベトにカロリーネ・ペータース.
この人日本の映画コメンテータ;Lilicoにそっくりな顔立ち♪その下品さも…(笑).

学歴は低いのに事業で山を当て資産家の弟トーマスにフロリアン・ダーヒト・
フィッツ.その妻アンナはヤニナ・ウーゼ、舞台役者らしい.この家族の古くからの
友人レネにユストゥス・フォン・ドーナニー、オーケストラのクラリネット奏者だ.

出だしはトーマスがこれから生まれる子の名前を決めたと言いだし、名前当ての
クイズが始まる.ドイツ人の典型的な名から古典的なものまで続出し、みなそれを
楽しむ.じらされた皆の前で披露した名前が「アドルフ」で全員が固まってしまう.

75年前の悪夢の主役アドルフ・ヒットラーの名を付けると聞き、トーマス以外は
皆嫌悪感を明らかにする.極右と思われるぞ、子供がいじめられるぞとの意見に
トーマスはまるで耳を貸さない.アドルフという名の汚名を一掃する子供になると、
信じて疑わない頑固さを示す.

論議は延々続き、やがてお互いのやましい部分への追求合戦へ発展していく.
無学なのに成金だとか、けちくさい性格だとか、挙げ句の果て兄夫婦が名付けた
子供達の凝った名前にまで波及していく.

そんな内、遅れて合流した妊婦アンナも合流して、妊婦の喫煙習慣が矢面に
なったり、事態は収拾しない.そのうち、兄シュテファンの過去の過ちの告白や
皆の友人レネの意外な愛人も判り、暴力沙汰にまで….

最後の怒りは妻:エリザベトの夫への不満が爆発.手をかけた料理の礼を欠くこと
に始まり、普段の生活への感謝が無いこと、そして過去にエリザベトが書いた論文を
夫が盗用したことまで….この妻の怒りは積年の恨みゆえ怖い.夫は戦々恐々に.

極めて気詰まりな別れ方をした皆にアンナ出産の知らせが….
最後に落とし穴が待っていて、笑わされることとなる.

似たようなシチュエーションの映画がイタリア製でもあった気がするが、
あれはイタリアらしく浮気がテーマだったが、ドイツ風に料理すると
こうなると言うことか….



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