映画「ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方」 | チャコティの副長日誌

チャコティの副長日誌

主役になれない人生を送るおじさんの心の日記.
猫と映画、絵画、写真、音楽、そしてF1をこよなく愛する暇人.
しばし副長の心の彷徨にお付き合いを….



原題:The Biggest Little Farm
制作年:2018年 制作国:アメリカ 上映時間:91分
 

 

木曜の夜は副長の週末♪仕事を終えてMovix柏の葉へしけこむ.
溜まったポイントでタダ観したのは、米製自然派ドキュメンタリー.
本年劇場鑑賞累積78本目.

自然を愛する夫婦が究極のオーガニック農場を作り上げるまでの8年間を
追ったドキュメンタリー.

ジョンとモリーの夫婦は、愛犬トッドの鳴き声が原因でロサンゼルスのアパートを
追い出されてしまう.料理家である妻のモリーは、本当に体によい食べ物を
育てるため、夫婦で愛犬トッドを連れて郊外の荒れ果てた農地へと移住する.

都会から郊外へと生活環境がガラリと変わった2人は、自然の厳しさに直面
しながらも、命の誕生と終わりを身をもって学び、動物や植物たちとともに
美しいオーガニック農場を作るために奮闘の日々を送る.

映画製作者、テレビ番組の監督として25年の経歴を持つジョン・チェスターが、
自身と妻、そして愛犬の姿をカメラに収めた.

以上は《映画.COM》から転載.
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ロサンゼルスの郊外の荒れ果てた農地に移り住み、そこから美しい農場を
つくりあげていくまでの夫婦の8年間の奮闘の記録.映像の美しさに息を呑み、
夫婦の繰り広げる試行錯誤、その後の哲学に感心する.

自然は人間がコントロールできるものではなく、人間はあくまで自然のありようを
支えていくことしかできないのだというある種の仏教的思想とも重なるような自然観.

問題が次から次へと起きる.カタツムリが大量発生して果樹園の葉を食べつくし、
コヨーテが侵入して鶏たちを殺す.果物は野鳥についばまれる.

二人が師と仰ぐ伝統農法の専門家、アラン・ヨークは「いつか帳尻が合う日が来る」
と言うけれども、それがいつかはまったくわからない.そしてアランは道半ばにして、
ガンで逝ってしまう.

“師匠”を亡くし迷走するかと思えたが、しかし少しずつ展望は見えてくる.
鴨たちを果樹園に放してみると、9万匹のカタツムリはあっという間に餌になった.
そして鴨たちの糞が肥料となり、果樹に栄養を与える.

牛や羊を養うと大量の糞が出て、ウジが湧くが、しかし鶏たちがそれを餌にする.
コヨーテから鶏を守るため犬を鶏小屋に同居させると、コヨーテは鶏をあきらめ、
農園の地中に住むホリネズミを漁るようになり、ホリネズミが果樹の根を食べる害が
おさまった.桃を食べる野鳥にはタカが現れ、アブラムシにはてんとう虫が現れ….

言葉の使い方は正しくないと思うが、「因果報復」という言葉が頭に浮かんだ.
それぞれの存在が、必ず理由がありそれが結果をもたらす.
農園のエコシステムができあがっていく…それはすなわち、農園が自然の原初
の姿に戻っていっていくということなのだろうか.

このサイクルが出来上がっていく中で、人間の役割とはいったい何なのだろう?
人間が自然環境から過剰に富を収奪しようとすれば、必ずバランスはどこかで
崩れ始める. 成長ばかりを求める登山思想は破綻を来すのだ.五木寛之師匠(笑)
言うところの「下山思想」の重要性をまた再考してしまう.

この自然のバランスを完璧に保とうとするのなら、人間という文明的な存在は
邪魔者でしかない.ゆっくり山を下りながら周囲を眺める余裕の生活こそが
今求まられるのかも.

91分の上映時間はこんな事を考えるにちょうどの時間.
これ以上はちときついかも.