若者の日本語能力低下 | チャコティの副長日誌

チャコティの副長日誌

主役になれない人生を送るおじさんの心の日記.
猫と映画、絵画、写真、音楽、そしてF1をこよなく愛する暇人.
しばし副長の心の彷徨にお付き合いを….

 

 

Webの日経において、河合薫氏の面白い記事があったので、それを元に.

河合氏は社会健康学の博士、W大で講師を務めたり執筆した書籍も多い.
顔はけっこうお馴染みかも知れない.かつてTBSやTV朝日で、お天気お姉さん
をしていた.その前は全日空のCAだったことも….15年ほど前に東大の修士、
博士課程をパスして今の状況になっているという異色の存在.

過労死やいじめに関する記事で副長はかなりのファン.

いつも記事は欠かさず読ませていただいてる.

その河合氏の記述を抜粋して以下に.

 

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先日講演会後の懇親会で、管理職が20代の社員たちの日本語能力に
悩まされているという話で盛り上がった. 「9時スタートの研修会なのに1分前に
ドサドサと入ってきて、5分、10分の遅刻は 当たり前.

なので『9時10分前には集合するように』と言ったら、キョトンとした顔を
されてしまった.ま、まさかと思いつつ『8時50分に来るのよ』と念押ししたんです.
そしたら、『あ、そういうこと』って。もう、わけが分かりません」

こんな“珍事件”に面食らった上司たちの嘆きが、「これでもか!」というくらい飛び出す.
確かに、私自身、店で領収書をもらおうとしたときに、「???」という事態に何度か
出くわしたことがある.

河合「領収書をお願いします」 店員「宛名はどうしますか?」 河合「上、でいいです」
店員「うえで、ですね!」←自信満々感満載 河合「……は、はい」 するとなんと
その店員は宛名の部分に「上出」と書いた.

河合「領収証お願いします」 店員「宛名はどうしたらいいですか?」←必死で丁寧に
振る舞っている 河合「カタカナで、カワイ、でお願いします」 店員「カワイですね」←
自信満々! 河合「(失笑)」

どちらも20代.最初のケースは「上様」を知らず、次のケースは普通は
「カワイ、様ですね」とか「カワイ、様でございますね」となるのに、
いきなりの呼び捨て. 笑ってしまった.

まぁ、これらは日本語の問題というより、常識の問題. つまり、こういう対応が気になる
ようになった私が年を食っただけかもしれない.

若者の国語力が下がっている まずは冒頭の懇親会で聞いた“珍事件”から.

・「部下に『そのタスクは結構、骨が折れるから覚悟しておけよ』って言ったら、  
 『え? 肉体労働なんですか?』って返された.どうやら骨が折れるを骨折と間違えたようだ」

・「社長に褒められた部下に、『現状に胡座(あぐら)をかいてると、後輩に追い越されるぞ!』    
 って活を入れたらキョトンとされた.あぐらをかいて座ることだと思ったみたいです」

・「送られてきたメールが一切改行されてないので『読みづらいから、項目ごとに改行しろ』
 と言ったら、『改行って何ですか?』と言われてあぜんとした」

・「営業先で『お手やわらかにお願いしますよ』と言われ、会社に帰る途中で『あの人、  
 やわらかいんですね.どうしたらやわらかくなるんですか?』と真顔で聞かれた」

・「高齢のお客さんに取扱書の内容を説明するのに読み上げるだけだったので、  
 分かりやすく自分の言葉で説明してあげてと伝えたが全く改善されず.  
 理由を問いただしたら、取扱書の文章を理解できていなかった」

・「分からない語彙があったらその都度辞書で調べるようにと、辞書を渡したら、  
 引き方が分からないみたいで、異常に時間がかかった」

・「英語で書かれた仕様書を翻訳させようとしたら、英和辞典に書かれている日本語の  
 意味が分からないと突き返された」

・「業務報告書を手書きで書かせているのだが、漢字の間違いが多すぎる.  
 混乱を困乱.特にを得に.性格を生格……」

・「消費税が2%上がるという、2%を理解させるのが大変だった」

……ふむ.どれもこれも嘘のようなホントの話. もちろん20代でも、日本語を巧みに使い、
理解度も高く、文章力がある社員もいる. だが、上司たちは「日本語の能力が低下してる」
と日々感じているのだという.

もっとも、漢字が書けないとか間違った漢字を使うとか、慣用句を知らないというのは、
その都度学べばいいだけの話だ. 問題は語彙力の乏しさからもたらされる日本語の
読解力の低下だ.

言語を習得するにはたくさん聞くだけじゃなく、たくさん読むことが必要不可欠で、
言葉の運用力を高めるには語彙力が影響する.実際、 読書経験を重ねることで、
語彙力が高まり、それが文章理解力の向上につながることは、国内外の調査から
一貫して報告されている.

米国人大学生を対象にした様々な調査では、小さい頃から本をたくさん読んでいる
学生ほど、 スペルの間違いが少なく文章を理解する力が高いとされているし、
日本人大学生を対象した調査では、新聞や雑誌ではなく小説の読書量が強く
影響することもわかっている (「大学生の読書経験と文章理解力の関係」澤崎宏一).

小説でつづられる母語の名文を繰り返し読んだ経験が、日常生活で身につく経験や
情報と結びつくことで、文章を理解する力が高まっていくのである.

デジタル世代の若者たちは、日々携帯メールやラインの送受信を繰り返しているので、
日常的な会話量は半端なく多い.だが、おしゃべりは所詮おしゃべりでしかない上に、
親密になればなるほどメールでの言葉は省略され、絵文字だけでもやりとりが可能になる.
いわばメール版「あうんの呼吸」だ.

フェースtoフェースなら、相手に伝わるまで言葉を脳内から振り絞ったりすることがあるが、
デジタルの世界ではその必要もない.要するに、若い世代は圧倒的に語彙を増やす
機会に乏しい社会に生きている.

しかも、本を読む子供たちが激減しているという悲しい現実もある.平成28年度委託
調査「子供の読書活動の推進等に関する調査研究」(文部科学省) によると、
不読率(1カ月で読んだ本の冊数が「0冊」と回答した生徒の割合)は、 小学生が1割未満、
中学生が約1~2割、高校生が約3~4割で、 読書時間・読書冊数ともに、学年が
上がるにつれて増加傾向にあることが分かった.

また、「第54回学生生活実態調査の概要報告(2018年)」(全国大学生活協同
組合連合会)では1日の読書時間が「0」と答えた学生は48.0%. 17年の53.1%より
減少したものの、半数近くの学生に読書習慣が全くない.

小学生で本を読まないとそのまま大人になる. 「学校の成績は国語力が9割」とも
いわれるように、日本語の読解力、記述力は 国語だけでなくすべての教科で
必要な基礎となる能力だ. 日本語の読解・記述力が不十分だと、数学の文章問題は
理解できない. 理論構成が支離滅裂な解答しかできない. 思考力も想像力も、
母語の運用能力に支えられている.

そもそも言語は、単なるコミュニケーションのツールではない. 言語と思考とは互いに
結びついており、特に母語の役割は果てしなく大きい. 母語により私たちは目に
見えないものを概念として把握し知覚する. 精神的な世界は言葉がないと成立しない.

また、目の前に何か見えたとしても、 その何かを示す言葉がないと、それを理解できない.
語彙の豊かさが思考力や豊かな感情を育む. 例えば、日々暮らす場所であるという意味を
「家」という語彙で概念化することで、 形や色が違っても「家」と知覚することができる.

性的ないやがらせをする行為を 「セクハラ」という語彙で概念化することで、そういった
行為が明確に意識され、 「ああ、そういったことはやってはいけないんだ」と規範を学んでいく.

つまるところ、言語で表せる範囲がその人の認識世界. 語彙が豊富であればあるほど
知識は広がり、感情の機微も、複雑な人間関係も 理解でき、世界が広がり、創造力も
高まっていくのである.

さて、ではどうしたら若者の日本語能力を改善できるのだろうか?
日本語力の低い人でも、「誰が(主語)、何を(目的語)」をきちんと文章に
加えた完全文にすると理解しやすくなるとされている.

会話では主語が省略されがちなので、そのあたりを気をつけるだけでも少しは
変わるはず. と同時に、部下が主語や目的語を省略している場合も、
「誰か?何を?」と尋ねるだけ でもすれ違いは防げる.
めんどくさいかもしれないけど、試してみる価値はあると思う.

そして、もし素直で殊勝な心を持ち合わせている部下なら、興味あることの本を読め!
と勧める.読書量が語彙力の向上に確実につながるのだから….

ということで、若者じゃないけど、

副長も少し読書の時間を増やそうと思った次第です(笑).


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